見出し画像

アンドロイド転生892

2119年10月8日 夜
東京都台東区上野:ミシマユウサク邸 
家族用リビング

ホームの暮らしを伝えるチアキ。それを喜んで聞く少年サクヤ。彼は山に憧れた。自然や動物が好きな子供でうさぎ係なのだ。育て方をチアキに指導する。幼くても先輩なのだ。

ナニーアンドロイドのユキが立ち上がった。
「サクヤ様。そろそろお休みの時間ですよ。うがいをなさって下さい」
現代は歯磨きは必要ない。うがい薬で充分だ。

サクヤは口を尖らした。
「えー。まだ眠くない!」
ユキとは11年の付き合いで母親よりも親密なのだ。それだけ甘えもあり言いやすいようだ。

サクヤは先月末に11歳になった。ユキとはあと約1年間である。ナニーは12歳までなのだ。
「いけません。子供は睡眠が大事です。成長ホルモンが出るんですよ。背が高くなりますよ」

チアキもうんうんと頷いた。
「サクヤ先輩。背が高くなったら益々カッコ良くなりますよ」 
そう。彼はきっと素敵な大人になる。

サクヤは瞳をぐるりとさせて天を仰いだ。口元が緩んでいる。カッコ良くなると言われて嬉しさを隠せない様子が窺える。
「分かった。じゃ、寝る」

サクヤはソファから立ち上がった。
「お休み〜」
「はい。お休みなさい」
彼はユキと共にリビングから出て行った。

サクヤを見送った後、父親のユウサクがチアキを見た。打診するような顔をする。
「ところで…月末のハロウィンだが平家カフェでイベントするだろう?君は帰るだろう?」

チアキは頷いた。チアキはここで暮らしているが、あくまでも契約者は平家カフェという事になっている。ユウサク達にはラボから逃亡したとは明かしていない。その必要はない。

上野で暮らして約2ヶ月。まだ一度も里帰りしていなかった。カフェの家族に会いたかった
「はい。イベントがあるそうです。是非お手伝いに行きたいです。宜しいですか?」

ユウサクも妻のトモミも大きく頷いた。
「もし良かったら…そのイベントにサクヤも参加して良いかな…?」
「はい。もちろ…」

「行く!絶対に行く!」
チアキ達は声に驚いて振り向いた。サクヤが立っていた。瞳が期待に大きく見開かれていた。部屋に飛び込んで来ると何度もジャンプした。

母親のトモミが苦笑する。
「なによ。寝たんじゃなかったの?」
「おい。坊主。地獄耳だな」
「サクヤ先輩も仮装しましょう」

サクヤは万歳をする。大喜びだ。すると同じように万歳しながらユイが部屋に飛び込んで来た。友人と出掛けて帰宅したところだった。
「私も行く!仮装する!」

ユウサクは姪を見て目を丸くした。
「おい。ユイまで地獄耳じゃないか!」
チアキは笑った。何だか楽しいイベントになりそうだ。さて…私はどんな仮装をしようか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?