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アンドロイド転生886

2118年9月20日 夜
都内某所:イタリアンレストラン

トウマもヒマリも次々とメニューを選び、あっという間にテーブルが一杯になった。山盛りの肉にシオンは目を丸くした。
「こ、こんなに食べるんですか…」
 
ヒマリはニッコリとする。
「その分、ちゃんと運動するよ!この後スカッシュに行くの。シオン君も行こう!」
「スカッシュって…」

「室内でするテニスみたいなもの!ハードだけどスッキリするよ!」
シオンは呆気に取られる。向日葵のような女性は本当にエネルギーに満ち溢れている。


都内某所:スポーツジム

「上手いじゃんか!シオン!」
「ホントに!初めてなんて思えない!」
3人はスカッシュをしていた。2人組で行うスポーツを交代してプレイした。

初めてのスカッシュで最初は戸惑ったシオンだが、実は運動神経が良いのだ。ホームの人間は頭脳にも身体能力にも恵まれている。直ぐにコツを掴んで球を正確に打ち、走った。

元来活動的ではないシオン。だが彼の身体は柔軟性があった。ごく自然に筋肉や関節を上手く使って肉体を器用に動かす事が出来るのだ。トウマ達はその躍動感に惚れ惚れとした。

2時間後。スカッシュを終えてシャワーを浴びる。シオンは隣のブースが気になって仕方がない。トウマがいるのだ。今、扉を開けたら…彼はどうするだろう…。変態だって怒るかな。

服を着ると3人はラウンジで会ってスポーツドリンクを飲んだ。ヒマリは微笑んだ。
「シオン君。楽しかった!また会いたいね」
「はい…」

そう応えたものの、また会いたい?いや。どうかなと思う。ヒマリは目をくるりとさせる。
「私にはね?姉と妹がいるの。でもず〜っと弟が欲しいって思ってたの」

「はぁ…そうですか」
「シオン君みたいだったら嬉しかったなあ!カッコよくてスポーツが出来て絵になるんだもん」
「はぁ…」

「今度一緒にどっか行こうよ!」
ヒマリは一方的に商業施設や美術館などあらゆるスポットを提案し始めた。いつまでも話が止まらない。喋りながら1人で笑っている。

シオンは気付かれないように溜息をつく。なんてよく喋る人なんだろ。元気にも程がある。トウマはこんなに煩い人が好きなのかな?そうかなぁ…。そんなイメージじゃないけどなぁ…。

「あ〜。ごめんごめん。またマシンガンになっちゃった〜。私、話し出すと止まらないの。シオン君、呆れないでね?」
いや。既に呆れている。

義姉になったマイカも元気だが、煩いとは感じなかった…と比較してしまう。実はこれは嫉妬から来る不満の現れなのだ。トウマの恋人というヒマリの存在が疎ましいのだ。

トウマが立ち上がった。
「よし。じゃあ。帰るか」
「私はここで帰るね。トウマ。送ってくれなくていいよ。じゃ、シオン君。バイバイ」

ヒマリも立ち上がると風のように去って行った。シオンは漸くホッとする。だがいきなり静寂に包まれて、実感した。初めて2人きりなのだと。嬉しい…恥ずかしい…どうしよう…。

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