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アンドロイド転生902

(回想)
2118年10月25日
カガミソウタの邸宅
コンピュータルームにて

ソウタはリツにコールした。直ぐにリツの立体画像が宙に浮いた。
「ソウタさん。元気そうですね?」
「アリスのメシが旨いからなぁ…」

そうは言うもののソウタはスミレを失ってから食欲が落ちてしまって益々細くなった。3度の食事を何とか口に運んでいるのだ。それでも退院したての頃よりは顔色も良く肌に色艶があった。

ソウタは頭を下げた。
「アリスのこと…有難う。凄く助かってる」
アリスがソウタの世話をするために彼の屋敷に滞在してもう直ぐ2ヶ月だ。

リツはニッコリとした。
「アリスも楽しいみたいですよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ。今は出掛けてる。スミレの為に花を買ってくるってさ」

ソウタは笑うと一転して真面目な顔をした。
「リツ。全部探したぞ。スオウの顧客」
リツも顔を引き締めた。
「やりましたね」

スオウ組とドラッグの取引をした客。時効前の10年間分だ。日本全国、海外に逃亡した者、外国籍の者、偽名、匿名、代理人。その数は膨大だった。だがソウタは全てを調べ上げたのだ。

ソウタはニヤリとする。
「1人残らずだ。全部消去しちまえば警察だってスオウをドラッグ取引では逮捕できない」
リツは力強く頷いた。

そうなのだ。証拠がなければ警察は動けないのだ。警察は躍起になって顧客を調べている。だがそれを撹乱しているのがイヴだ。そのお陰でソウタは力を発揮出来た。やり遂げたのだ。

ソウタはスオウにまず飴を提示する。顧客データを消去すると言うつもりだ。スオウにとってそれはかなり魅力ある話だと言えよう。だがきっと何が望みだと問うだろう。

ソウタはゲンの契約者の権利を譲って欲しいと打診するのだ。だがスオウは断るかもしれない。そうすれば鞭だ。全てを警察に暴露するのだ。冷静に考えればスオウは提案に乗る筈だ。

たかが1体のマシンを譲れば警察の手から逃れられる。こんなに美味しい話はない。馬鹿でない限りスオウは取引に応じるだろう。ソウタは何としてもゲンの契約者になりたいのだ。

ソウタはゲンの居場所は把握している。彼のGPSを手中に収めているのだ。スオウが権利を譲ったら直ぐにゲンの元へ行く。そして漸く復讐が始められるのだ。期待に胸が膨らむ。

「リツ。明日スオウ組にアクセスするぞ」
「分かりました。そっちに行きます」
「イイよ。俺1人でも」
「見届けたいんです」

ソウタは頷いた。そうだ。ゲンに恨みがあるのは俺だけではない。リツだって家族のミオとルークを失ったのだ。ゲンの悪意と暴力で。
「分かった。待ってる」

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