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『六人の嘘つきな大学生』(浅野秋成)/読書ログ466

知名度も初任給もべらぼうに高い有力IT企業の最終選考に望む六人の就活生が、一枠しかない内定を巡り心理戦を繰り広げる。というエンタメ小説。

約350ページ。文章は平坦で理路整然としていて読みやすい。内容の面白さもあって一気に読めてしまった。

本作、帯や書店のポップなどで「どんでん返しにびっくり!」だとか「伏線がすごい!」など散々煽られてから手に取っているので、読みながら「こいつが実は犯人なんだろ?」とか「ここミスリードさそってるよね?」なんて思いながら読み進めたのだが、結果的にそれが一番楽しめる読み方だった。

どんでん返しだの、伏線回収だのというよりも、実際は、事実が少しずつ明らかになり、そのたびに驚く、ということを繰り返す読書になる。

物語はテンポ良く進むし、六人の大学生達に対する印象操作の巧みさや、ちりばめられるヒントがよく練られていて面白い。

特に、六人の大学生達への印象の持たせ方が上手いのよね。記憶にほんのり残る塩梅で入れ込んでくる。これって作者の未熟さによるものかな? それって偏見入ってない? いくら何でもキャラ付けが強引すぎない? なんて思わせるところがあって、それが、実はあえての記述で、物語の重要な要素になってくるあたり、上手いなぁ、一本やられたよ、という感じで楽しい。

浅野秋成の作品は初めてだけど、他の作品も読んでみよう。


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