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『NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業 (ジーナ・キーティング)』【読書ログ#21】

なぜNETFLIXがネット動画配信の覇者になったのか。今やGAFAを凌ぐテック企業となったNetflixは、徹底的な社内競争、徹底的なテクノロジー活用、ビッグデータ活用で有名だが。そんなNetflixがDVDのオンラインレンタルサービスとして創業したときから2011年までの軌跡を、丹念な取材と調査で解き明かした。といえば説明としては十分。

そして、いかにしてブロックバスターが転落していったのかの物語でもある。

ビジネス本で、企業が成功するまでの冒険譚にアドレナリンが出る人にはおすすめしたい。なにせ、今や泣く子も黙るNetflixの成功譚だから面白くないわけがない。副腎髄質からアドレナリンがドバドバ出てくると思う。

この手の話にアドレナリンは出ないが、コンテンツ業界に身を置く方にもおすすめしたい。ひとまず、冒頭の「日本語版特別寄稿」を読んでみて、ここでピリピリしたなら読んでみると良いと思う。立ち読みでサラッとでもいいから。現状の整理にもなっていて読む価値はある。

そして、もっともおすすめしたいのは、失敗から学ぶのが好きな方。ビジョナリー・カンパニーなら3が好きな人だとか、ベン・ホロウィッツの『HARD THINGS』が好きな人なら興味深く読めると思う。

VHSビデオレンタルの大手ブロックバスターが、Netflixを追い詰め(え、マジで?)良いところまでいったのに、経営者が変わった途端に坂道どころか直角の崖を転がり落ちるように競争から転落していく様に震えてほしい。全盛期9000店舗あったにもかかわらず、2019年の現在、フランチャイズの1店舗のみとなってしまった。

にしても古い内容ではある。2011年までの内容だ。しかし、これは読んでみるとわかるが、日本の現状が周回遅れすぎていて、アメリカの2011年にすらおいついていないことがわかる。

そりゃ(中略)だ。

読んでみて様々な感想を持つ良い本だが、なぜ、日本でNetflixが出てこないのかと考えてしまう。いろいろと事情はありそうだが、読了して思ったのは、コンテンツに『投資』出来ないのが原因じゃないかな。

Netflixは徹底的にユーザーを調べている。DVDレンタルのときは、アマゾンに次ぐレコメンドエンジンと話題になっていた。ストリーミングサービスとなった今でも、どこで視聴をやめたか、どこを繰り返し見たか、このコンテンツの次に何を見たか、前には何を見ていたか、取れる記録はすべて取っている。そして、それをコンテンツ制作者に還元している。

製作者はカンと経験に頼らず徹底的にデータに基づいたコンテンツ作りが出来るし、ヒットが見込める作品にはハリウッドもびっくりな予算をあてがわれる。そのうちいくつかはヒットを飛ばす。ヒットが出れば加入者は増える。加入者が増えると、コンテンツの予算も増えるし、視聴者が増えればデータも増える。勝ちのスパイラルに乗り勢いを増し続けている。これだけの資本とデータと技術を持ち、さらに成長を続けようとしている。

アニメ一本作るのにも利権構造を作り上げる日本にチャンスはあるのか。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。