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【ニッポンの世界史】#36 世界史が語る国際政治や文明の衰亡:高坂正堯と塩野七生

世界史化する時事論壇  1980年代以降、論壇誌や政府関係の刊行物、ビジネス系の雑誌に引っ張りだことなった女性がいます。  小説家・塩野七生(1937〜)です。  たとえば1989年に安田信託銀行調査部の発行した刊行物に塩野のインタビューが載っています。    もちろん塩野は国際政治の専門家ではありませんし、歴史学を修めたわけでもありません(先行は池田理代子とおなじく哲学)。本人がアイデンティティとするように、彼女は西洋をモチーフとする物語を編む作家です。  少し前の時代

東洋と西洋の狭間で――#6 ルイーズ・アードリック『赤いオープンカー』(1)

僕が「人文系ワナビー」だったころ  今ここではない世界に強く憧れていた。高校生のころ、浅田彰の『構造と力』(中公文庫)を読んでニューアカデミズムにはまり、その源流ということで、文化人類学者である山口昌男の『本の神話学』(中公文庫)や『歴史・祝祭・神話』(中公文庫)などを読んだ僕は、世の中にこんなに面白い学問があるのか、と思って圧倒されてしまった。とにかく80年代の山口昌男はものすごく輝いていた。世界中の有名な知識人と対談し、ありとあらゆる本を読み、様々なテーマを論じ、歴史学

フェデリコ・フェリーニ監督作『道』 特別解説:YouTube初無料公開記念

『道』     山下泰司   『道』(原題:La Strada)は、今からちょうど70年前、1954年の9月にヴェネツィア映画祭でお披露目された、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ(1920 – 1993)が監督した映画です。そのヴェネツィア映画祭では銀獅子賞を、1957年の3月には米国アカデミー賞の最優秀外国語映画賞に輝いた、彼の出世作です。  1954年というのは今でも「名作」と呼ばれる映画が世界中で数多く公開された年です。日本では黒澤明の『七人の侍』が4月、木下恵介

MDGsは、SDGsと本当はどういう関係にあるのか? 【SDGsとは一体、何だったのか?】第3回・中編

貧困撲滅のための「ビッグプッシュ」  さて前回は、第二次世界大戦後の国際開発規範の変遷が、1980年代に市場メカニズムを重視した構造調整プログラムが貧困を拡大させたことへの反省から、1990年代に「人間開発」の重視に舵が切られ、2000年代初めのMDGsに至って次の3点の要素を持つに至った、ということを確認した。  途上国の貧困撲滅を掲げ、MDGsの旗振り役を担ったのは、世界銀行のエコノミスト、ジェフリー・サックス(1954〜)という人物だ。  彼は次のように論じる。

MDGsは、SDGsと本当はどういう関係にあるのか? 【SDGsとは一体、何だったのか?】第3回・前編

 前回は「持続可能な開発」概念がどのような経緯で生まれたのかという問いに対して、その背景に途上国と先進国の対立や、その後の新興国の台頭といった国際社会の激変が関わっていたことを確認した。  今回は2つ目の問いである「MDGsは、SDGsと本当はどのような関係にあるのか?」について、考えていきたい。 MDGsとは何か  MDGs(エムディージーズ)とは「ミレニアム開発目標」の略称で、ミレニアム総会で採択されたミレニアム宣言と 1990 年代に連続して開催された会議での国際的

『源氏物語』の物の怪は「愛の亡霊」なのか?

『源氏物語論』吉本隆明 『源氏物語』の解説本というよりも吉本隆明が『源氏物語』を通して文学をどう読むのかという本であり、あとがきに古典の学者に細かいところを突かれていた。それは吉本が、原典主義者でもなく、また登場人物のモデル探しもしないというように、あくまでも『源氏物語』は文学として読むのであり、『源氏物語』を語りながら彼は文学を語っているのだ。 例えば『源氏物語』を勧めるのなら手に入り安い与謝野源氏が誤訳もあるがいいという。それは与謝野源氏が彼女の『源氏物語』を構築出来

大事にしたい場所について取材して、地元紙に投稿した

2024年2月15日から19日まで。秋田県の能代市山本郡地域の話題を中心にあつかう「北羽新報」に、私の書いた投稿記事が掲載された。 地元の能代市二ツ井町で、天然秋田杉が使われている木造校舎、旧仁鮒小の解体計画が進んでいると知って、いろんな思いが湧いて取材を行ったもの。 ちなみに「天然秋田杉」とは、というのは下記のように説明されている。 年輪幅がそろい、木目が細かいため強度に優れて狂いが少ないという特徴から、古くから住宅の建築材として利用され、美しい柾目は東京でも高級な料

This is my partner

前回ブルージャイアントを紹介しましたが、 映画映画の続編にあるブルージャイアントシュプリーム。ドイツに渡った主人公 宮本大がほぼ唯一と言ってもいいほどの大きな荷物を指差していう言葉です。 主人公のお兄さんがなけなしのお金でプレゼントしたサックスを主人公の大はずっと河川敷で引き続け、ジャズミュージシャンとしてビッグになって行くお話。 自分も映画を機に漫画読んでいるのですが、今回スプリームで刺さった言葉が、 This is my partnerという言葉でした。漫画の中では

ちょっと覚えればかなりの作業効率化に!自分がよく使うキーボードショートカットまとめ【#18】

デスクワーカーにとってキーボードは、仕事を進める上でマストアイテムです。普通はマウスやトラックパッドで操作する必要があることでも、キーボードショートカットを覚えていれば一発で解決できるものが意外と多いのです。 キーボードに手を置いたままでできる操作が増えると、マウスへの移動にかかっていた時間が節約でき、他のことに使える時間が増えます。同じ時間でもできることが増えるというわけです。 今回は、デスクワーカーなら知っておくとスピードが上がるショートカットをまとめて紹介します。G

【国内 "世界史" 観光500選】 記録的円安なんて吹き飛ばし、ニッポンの「世界史」を歩こう!

 コロナ禍も明け、海外に出かけようとせっかく思い立ったところにふりかかる記録的円安…。これから夏にかけてどのように推移するかは不透明ではありますが、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。  では、日本国内で海外を味わうことはできないのでしょうか?  いえ、そんなことはありません!  「世界史」をキーワードに掲げて視点を変えてみれば、日本全国津々浦々、さまざまなところに海外の人や出来事とのつながりは潜んでいます     いや、「世界史」と「海外」は別物じゃないか

2023年の活動記録、その1

2023年の活動報告です。学校教育とか、表に出ない企業仕事は紹介せず、みなさんがアクセスできる範囲でまとめます。 こうやって書かないと、自分の仕事量を把握できないのでよい機会かなと思って毎年まとめているんです。これは、その1です。 1月:まだゆっくりした日々 ①【8-9日】東洋経済オンラインに『スマホ時代の哲学』の転載記事 ②【23日】毎日新聞に『スマホ時代の哲学』がとりあげられる 武田徹さんに毎日新聞のオピニオン欄(メディアの風景)でとりあげていただく。1月辺りか

【SDGsとは一体、何だったのか?】第2回「持続可能な開発」概念のルーツはどこにある?

*** 【連載第2回】「持続可能な開発」概念のルーツはどこにある? 1SDGsから何を連想する?  みなさんは「SDGs」と聞いて、どんなことを思い浮かべるだろうか?  ある人はSDGsとは「エコ」のことだと考えるかもしれない。レジ袋削減や気候変動対策が、生活と大きな関わりがあることも大きいだろう。  またある人は差別をはじめとする社会問題の解決や「多様性」のことを、またある人は、まちづくりや地域おこしのことがSDGsなのだとイメージするかもしれない。世界の貧しい人を

酩酊のタイポグラフィ

春の野は百花繚乱、宴に伴する盃の装いも古今東西色々。釉の色肌のみならず幾何学紋様に花鳥風月、そして「文字」もまた装飾として器に配されます。 呑み喰いのための道具に「文字」が記されるその意味は?盃中の詩歌は酒で揺らぎ、猪口の銘柄を見つめてはその味に浸る。呑んで詠んで呑まれて読んで・・・読みすすめば酒もすすむ、ふざけた小さな「酔む」酒器たちで、春の一笑をどうぞ。

“欲望“がデザインする、あたらしい漁業と食文化のかたち ── 仲買人・長谷川大樹

魚の仲買人という職業は江戸時代に始まったといわれ、魚の鮮度を見分ける目利きとしての役割を担っています。大まかな仕事は、魚市場に持ち込まれた魚介類に値段をつけ、競りや入札を経て漁師たちから買い取り、飲食店や小売店に卸すこと。漁業という第一次産業と、飲食店・小売店という第三次産業を取り次ぎ、落札額にマージンを乗せて取引することで利益を得るのが一般的です。 神奈川県横須賀市にある長井漁港で、週の大半を過ごす仲買人の長谷川大樹さんの活動は、いわゆる仲買人の枠だけにはとどまりません。