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組織の「関係の質」を高める


ゴーイングメリー号との別れ

 ワンピースの名場面の1つに、長く一緒に航海をしてきたゴーイングメリー号との別れの話があります。

 修復不能なゴーイングメリー号と別れ、旅を続けるというルフィに対し、苦楽を共にしてきた仲間を簡単に切り捨てるようなことはできないと反発するウソップ。そして麦わらの一味の中でも戦力として劣ると感じていた自身の姿を見捨てられる船に重ねているような言動が続く。

 主張を変えないウソップに対し、だったら出ていけと言いかけるルフィを、サンジが滅多なことを言うなと制する。そして、ゾロは一度下した決断をぶらすな、とルフィのリーダーシップを後押しする。

 ウソップの気持ちに寄り添いきれず、稚拙な論争に発展し、リーダーシップを発揮しきれない、まだまだ駆け出しの船長・ルフィの姿が印象的な場面です。

 ウソップはゴーイングメリー号が修復できず、これ以上一緒に航海を続けることが難しいということを頭ではわかっているのでしょう。ただ、一緒に旅をしてきた船を捨てて、新たな船に乗り換えるという事態を心が受け入れられない、気持ちがついていかない。いつの日か、自分が麦わらの一味のお荷物になってしまう日が来て、同じように見捨てられるのかもしれない、そんな思いが巡ってしまうんだと思います。そして彼は一味を離れていくことを決断してしまいました。


関係の質

 さて、ウソップの離脱という結果を回避するためにルフィには何ができたのでしょうか?

 麦わらの一味を離れるという結果・行動の背景には、いつか自分も見捨てられるのかもしれないというネガティブな思考があります。そして、そうした思考を生み出すに至った人間関係への配慮の不足があったように感じます。

ダニエル・キムの成功循環モデル

 ダニエル・キムの成功循環モデルというものがあります。良い「関係」は、ポジティブな「思考」を支え、積極的な「行動」に繋がり、確率論的に良い「結果」を生んでいくというものです。そして良い「結果」は良好な「関係」を醸成し、グッドサイクルがまわっていきます。

 逆に、「結果」にギクシャクすると、「関係」が悪化し、疑心暗鬼になるような「思考」を生み、保身的な「行動」が、「結果」につながっていかないというバッドサイクルに陥ってしまいます。

 仕事の場では、日々、目標を追って「行動」を続け、その「結果」として目標を達成したり、できなかったりという状況に至ります。そして、その「結果」を受けて振り返りを行い、また「行動」を続けていきます。良い結果が続き、組織が活性化しているときは行動量も担保されがちですが、結果がでない組織は、達成率の低い個人にフォーカスを当てるような犯人探し的な原因究明が行われたり、他責思考が増えたりと重苦しい空気になりがちです。

 前述のグッドサイクルのように「行動」「結果」を良好にするためには、「関係」「思考」をポジティブにしていくことから始めるのが大事です。マネジメントが意識しなければ、組織は結果をもとに議論が始まりがちです。だからこそ、マネージャーは意識的に組織の「関係の質」を高めることから始めることが大事なのです!それは、マネージャーとして、とても重要な役割になります。


 ウソップが、自身のことを麦わらの一味として欠かせない重要な存在であると認識できていれば、きっと、いつか見捨てられるかもしれない、というような思考をすることなく、仲間から離れるようなこともなかったのでしょう。ルフィが船をどうするか以前に一味の関係の質を高めることにもっと時間を割いていたなら、結果がどうであったとしても、みんなで旅を続けることができたように思います。

 

後輩 竜野が思うこと

 ワンピース35巻を読み直しながら、ルフィが船長として成長しようとする生々しい描写に自分を重ねました。リーダーらしく振舞おうとするがあまり、本音を言えなくなったメンバーはいなかったか。そしてそれを見て見ぬふりしていなかったか。と、思わず過去の自分を振り返りました。

 会社組織に属する以上、結果は大事です。でもメンバーがいないと行動も起こせません。チーム内でネガティブな文脈の読み合いが発生することほど、もったいないことはないと思います。

 とはいえ、自分自身も感情の生き物ですから、未経験の事態を前にたじろぐのは仕方のないこと。これはちょっと救いです。だからこそ、反射的にそういう反応をしてしまう自分がいることもひっくるめて自分だと理解して、感情を適切に加工してアウトプットできるようにしなければと思いました。

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