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WHO 医療における情報操作 1 ー IHR違反の隠蔽 異論をインフォデミックとして排除ー

世界保健機関(WHO)がしてきたこと

1969年 国際保健規則(IHR)制定

1969年、WHOは、伝染病が国際的に広がらないよう、伝染病の届出に関する各国政府の義務として、国際保健規則(IHR Internatioanl Health Regulation)を定めました。International health regulations (who.int)
その後、IHRは改訂を繰り返して現在に至ります。

2005年 国際保健規則:IHR(2005)制定

現在有効なのが、2005年に制定されたIHR(2500)です。
IHRは、世界に拡散する恐れのある感染症などの公衆衛生上の出来事、緊急事態、これに対処する際の各国の権利と義務を定義する包括的な法的枠組み(国際法の文書)で、WHO加盟国194カ国を含む196カ国を法的に拘束し、IHRが各国に求めるのは「国境での日常的衛生管理及び緊急事態発生時の対応」で、以下のような内容です。
International Health Regulations (2005) – Third edition (who.int)

1)WHO に通報すべき事象 :自国領域内で発生した公衆衛生上の出来事とそれに対する対応のうち、国際的な緊急事態となりうる恐れのあるもの。 2)WHO への伝達経路: IHR(2005)で定めた IHR 国家連絡窓口を通じて、利用できる最も効率的な伝達手段 を使用する。
 3)WHO への通報期限: 公衆衛生リスクと判断後、 24 時間以内

ちなみに、厚生労働省は、IHRに対応する体制「緊急事態発生時の情報収集及び情報伝達の体制」を以下のように構築していますが、分散的であり、緊急事態を直轄する仕組みになっていません。緊急時に効率的迅速に機能するのは難しい印象をうけます。なお、WHO総会へ出席するなど、WHO対応の窓口のなるのは大臣官房厚生科学課です。

1)情報の収集 :健康危機管理担当部局が中心となり、「厚生労働省健康危機管理基本指針」に基づいて行う。既存の法令で規定されている事項(感染症、食中毒等)以外の事態については、都道府県等に「国内でのテロ事件発生に係る対応について(平成 15 年 12 月 15 日 科発第 1215002 号等連名通知)」等に則り、重症患者等の把握に 関する情報提供を依頼する。
 2)情報の評価:健康危機管理担当部局において、速やかに情報を評価する。さらに、健康危機管理調整会議(省内及び厚生労働省所管の試験研究機関等の担当者・専門家で構成)等において、情報分析、対応の検討を行う。必要に応じ、厚生科学審議会健康危機管理部会を招集し、専門的な評価・検討を行い、これらによって、WHOへの通報の要否を判断する。
3)WHO への通報:大臣官房厚生科学課(IHR 国家連絡窓口)を通じて、速やかに情報提供を行う。 また、IHR 国家連絡窓口に対し WHO 等から重要な情報の提供があった場合は、「厚生労働省 健康危機管理基本指針」に基づき、地方支分局、都道府県、保健所、地方衛生研究所、独立 行政法人国立病院機構等に対し情報を伝達するとともに、原因物質に応じて、関係省庁等に 迅速に情報提供を行う
国際保健規則 日本語(仮訳)|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 

IHR(2005)第3版 International Health Regulations (2005) – Third edition (who.int)
2017年8月時点での、IHR改正経過を記した文書 International health regulations (who.int)
2017年8月 IHR実施過程の報告 Microsoft Word - RC64 IHR progress report final Rev1 28.8.17 E.docx (who.int)

2019年12月 中国武漢で新型コロナ発生

2019年12月、中国武漢の研究所から漏出した新型コロナウイルスによって、武漢で感染者、死者が激増したにもかかわらず、中国はこれを隠蔽し、感染は世界に広がりました。
2020年3月11日、中国に忖度、あるいは協力的なWHOのテドロス事務局長がようやく、パンデミックを宣言しました。これにより、遅れていた感染対応が本格的になりました。
翌年、2021年1月5日、コロナ感染の発生源の調査のためのWHOチームが中国に向いましたが、中国は入国を拒み、チームが入国したのは1月14日でした。入国後も十分な調査ができず、なにより、発生から1年以上経過しているため(証拠隠蔽など)、明らかな結果をえることはできませんでした。そして、2021年3月30日に公表された調査結果は、以下のようなもので、中国による情報操作の前に、WHOは屈したのです。WHO-convened global study of origins of SARS-CoV-2: China Part

  • 中間宿主動物を経てヒトに感染したとする仮説は「可能性が高い~非常に高い」。

  • 最初の宿主動物からヒトに直接感染したとする仮説は「可能性がある~可能性が高い」。

  • 冷凍食品から感染が広がったとする仮説は「可能性がある」。

  • 研究所から漏れ出て広がったとする仮説は「極めて可能性は低い」。

2020年 コロナパンデミックの責任は「中国のIHR違反」にある、にもかかわらず…

中国は、武漢でのコロナ感染症の発症を、把握後24時間以内にWHOに報告するという義務を果たさず、その事実を隠蔽しました。さらに、WHOのテドロス事務局長の協力を得て、パンデミックの加害者という立場をワクチンやマスクを供給する優れた協力者という立ち位置に乗り換え、WHOにおける隠然とした影響力を維持しました。そして、WHOはパンデミックの真の原因究明を無視したまま、次のパンデミックへの備えるための議論を、WHOの3委員会にゆだねました。

・パンデミックへの備えと対応に関する独立パネル(IPPPR
・IHR検証委員会
・独立監視諮問委員会(IOAC

コロナパンデミックは、IHR(2500)に定められた「自国内で発生した国際的な緊急事態となりうる感染症を 、リスクと判断後24 時間以内に、 WHO に通報」しなかったという中国のIHR違反のために始まり、そのため、IHRを遵守していた先進国でもパンデミックを避けることはできませんでした。しかし、前者を認めなければ、パンデミックは後者、すなわち、IHRが十分に機能しなかったことに原因があり、今後、パンデミックによりよく備え、対応するためには「IHRの改正(実は改悪)」による「WHOの権限強化」が必要とWHOは結論づけました。しかし、違反者である中国の非を問わなかったWHOは、公正な組織と言えるでしょうか。その権限強化の意図がたとえ正当であったとしても、強いものに巻かれて違反を見逃す姿勢がある限り、効果は上がらず、強化の程度が強ければ強いほど、従う国だけを極めて不当に扱うことになります。

WHOが語るコロナパンデミック ー権限強化の発想ー

以下は、進藤奈邦子氏(WHO感染症危機管理シニアアドバイザー)の「みんなで乗り越えよう新型コロナパンデミック:わたしはこう考える 2021年4月9日」の要約です。進藤氏は、氏の仲間を感染症の「地球防衛軍」であると言います。氏が語るパンデミックが、わたしたちが聞き経験した状況と異なることに驚かされます。WHOによるパンデミックの原因分析が、IHR改正(改悪)とパンデミック条約につながる経緯が示されています。
ノーベル賞を受賞したワクチンに大きな問題があったように、WHOといった世界の権威による判断がいつも正しいとは限りません。だからこそ、情報を共有し、広く議論することが大切なのです。他方、確かに『偽情報』『誤情報』は存在するため、その排除は必要です。しかし、WHOは自らの分析、判断、決断だけが正しいと信じて疑わず、それ以外を十把一絡げに『インフォデミック』として排除する必要があると考え、「情報操作」という権限強化に向うのです。
「みんなで乗り越えよう、新型コロナパンデミック:私はこう考える」(29) 進藤奈邦子さん - 国連広報センター ブログ (unic.or.jp)

アジアはよく対処した

「アジア、とくに中国南東部は科学的根拠に基づき最もパンデミックの起源となる可能性が高く、中国およびその周辺諸国は真剣にパンデミック準備策に取り組んできたし、世界銀行をはじめ多くのドナーエージェンシーが資金提供した。その結果、アジアはほかの地域に比べ、COVID-19に強固な体制で立ち向かうことができたが、米州や欧州は対岸の火事と思ってはいなかったか

2020年1月末の国際緊急事態宣言に各国は対応すべきだった

「WHOは国連の健康に関する専門機関で、世界保健総会は194の加盟国代表で構成される最高の意思決定機関で、満場一致でIHR(2500)を採択した。IHRに基づいてWHOが宣言できる最高レベルの警報はPHEIC(Public Health Emergency of International Concern, 公衆衛生上の国際緊急事態宣言)で2020年1月末に発令された。この時点ですべての国で緊急対応が取られるべきだった。

パンデミックは各国が真剣に取り組めば避けられたはず

テドロス事務局長は2020年3月、COVID-19の状況を「パンデミック」と表現した。この表明は、欧州での、それにイランでの感染爆発により、パンデミック封じ込めがほぼ失敗に終わったとの最初の敗北宣言だった」「WHOは、COVID-19は対応次第ではパンデミックにならなくて済んだのではないかと、今でも真剣に考えている。この時点でも各国の真剣な科学に基づいた囲い込みがうまく行けば流行拡大を抑え込めるかもしれないと考えていた。もう覆水盆に返らずの状況になったのはインド亜大陸や米州にも感染爆発が起きた夏ごろからだった。」

「パンデミックは、ある病原体が引き起こす感染症が世界的に拡散し、健康被害を起こす状況を言い、パンデミック宣言で、PIPF(パンデミックインフルエンザ枠組み条約)で約束されたパンデミックワクチンの製造にスイッチが入り、治療薬やワクチンの無償/割引供与が始まる・・・たとえばHIV(エイズ)は潜在的にパンデミックになった感染症の一例」「WHOがパンデミック宣言をしなければならない感染症は、当時も今もインフルエンザだけ。」

新興感染症、パンデミックの原因は、地球温暖化、森林伐採、紛争、飢餓、都市化、移動/交易にある 

地球温暖化森林伐採国際紛争飢餓都市化、高度に発達し多様化した人の移動交易。すべてが新興感染症の発生を促し爆発が起こりやすい土壌を作っている。WHOの統計によると、一年間に170余りの「パンデミックの芽」が発生し、およそ5年に一度は感染症による顕著な社会的現象が観察されている。COVID-19はそのうちの一つであって、パンデミックはこの先起こるかどうか、ではなく、いつ起こるかが問題。」

封じ込めの基本は、正確な接触者把握 と クラスター追跡 AIに任せられる段階ではない

「21世紀は何事も劇的に指数関数的に変化する世紀。まだAIにすべてを任せられるところまでは来ていません。COVID感染拡大阻止対策の基本は正確な接触者把握であり、クラスターをしっかりと追うことが封じ込めの基本。そのために労を惜しんではならない。携帯アプリなど、先端テクノロジーを使うことで接触者把握ができると高を括って、きめ細やかな調査を放棄した国はその後制御不可能な感染蔓延の状態に陥り、ロックダウンを余儀なくされた。

パンデミックの対応を困難にしたインフォデミック

「今回の緊急事態で特筆すべきなのは、ウイルスの感染拡大による実際の感染症による『パンデミック』と、大量の情報が氾濫するなかで不正確な情報や誤った情報が急速に拡散して社会に悪影響を与える『インフォデミック』が並行して起こったこと。ソーシャルメディアなどで流布された誤情報や風評が流布して人々は混乱し(インフォデミック)、正しい情報が伝わりにくくなり、パンデミック対応が困難になった。
政治的決断も世論に影響を受け、科学的に推奨される対応もすぐ政策に反映されなかった。そのほかのパワフルな『グローバル・トレンド人口増加、都市部への人口集中移民・移住、高所得国の高齢化社会貧富の格差拡大、第四次産業革命新勢力の台頭など。)』で、パンデミックの運命が決まっていった。未来を考え、すべての重大なリスクを洗い出し、あらかじめ対策に向けて準備していく。それが私の今の最大かつ緊急のタスクです。」

WHOの権限の強化を決意

2021年5月 第74回WHO総会 WHO権限強化を決定

2021年5月 第74回WHO総会において、健康危機に対するの備えと対応能力強化に関するWHO作業部会(WGPR)がつくられ、2022年5月 WGPRは「第75回世界保健総会への回答 健康危機への備えと対応に関するWHOの権限強化 草案」を出して終了しました。
WPGR: Working group on strengthening WHO preparedness and response to health emergencies
WHO | WGPR
Zero draft report of the Working (who.int)

2021年12月 パンデミック条約/合意の交渉開始

2021年12月 WHO総会(SS2)において、WGPRの報告に基づき、新たな法的文書、「パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書WHO CA+ 、パンデミック条約/合意)」作成に向けた交渉開始を決定しました。
厚生労働省 第74回WHO総会結果(概要)|厚生労働省
外務省 第74回WHO総会結果(概要)|外務省 (mofa.go.jp)
The World Together: Establishment of an intergovernmental negotiating body to strengthen pandemic prevention, preparedness and response (who.int)
INB(政府間交渉機関)ホームページ INB process (who.int) には進行状況、作成された文書が掲載されています。

2022年1月 IHR(2005)改正(実は改悪)の交渉開始

2022年1月 The Executive Board常務会において、IHR(2005年)改正の交渉開始を決定しました。
EB150/2022/REC/1 (who.int)
Working Group on Amendments to the International Health Regulations (2005) (who.int)
2022年11月 Conceptual zero draft for the consideration of the Intergovernmental Negotiating Body at its third meeting (who.int) :The conceptual zero draft is presented as a bridge between the working draft and the future zero draft of the WHO CA+. It is not a draft of the WHO CA+.

外務省 パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書 (いわゆる「パンデミック条約」)の交渉|外務省 (mofa.go.jp)2021年12月 WHO総会(SS2) 新たな法的文書の作成を決定 

「WHO 医療における情報操作2 ー情報を隠したまま採択へー」 につづく


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