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WHO 医療における情報操作 2 ー 情報を隠したまま採択へ ー

コロナパンデミックからの教訓

2019年末にはじまったコロナパンデミックは、IHR(2500)に定められた「自国内で発生した国際的な緊急事態となりうる感染症を 、リスクと判断後24 時間以内に、 WHO に通報」しなかったという中国のIHR違反のために始まり、そのため、IHRを遵守していた先進国でもパンデミックを避けることができませんでした。
しかし、WHOは、パンデミックの抑え込みに失敗したのは、欧米の初期対応各国の囲い込みの不備にあったと考えました。そして、今後、地球温暖化森林伐採国際紛争飢餓都市化、高度化多様化した人の移動交易が、新興感染症やパンデミックを発生させ、人口増加、都市部への人口集中移民・移住、高所得国の高齢化社会貧富の格差拡大、第四次産業革命新勢力の台頭などがパンデミックの流れを決めるとして、今後、パンデミックによりよく備え、対応するためには、これらのリスクをすべて洗い出し対策を立て準備するのが最大、緊急のタスクであり、そのために「IHRの改正(実は改悪)」による「WHOの権限強化」が必要とWHOは結論づけました。パンデミックは必ず起こるゆえに、これは最大かつ緊急のタスクだととらえてもいます。

WHO 権限強化への動き

厚生労働省 gijisidai_8.pdf (cas.go.jp)

2021年12月 パンデミック条約の交渉開始

2021年12月 WHO総会(SS2)において、WGPRの報告に基づき、新たな法的文書、「パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書WHO CA+ 、パンデミック条約)」作成に向けた交渉開始を決定しました。
厚生労働省 第74回WHO総会結果(概要)|厚生労働省
外務省 第74回WHO総会結果(概要)|外務省 (mofa.go.jp)
The World Together: Establishment of an intergovernmental negotiating body to strengthen pandemic prevention, preparedness and response (who.int)

2022年1月 IHR(2005)改正(実は改悪)の交渉開始

2022年1月 The Executive Board常務会において、IHR(2005年)改正の交渉開始を決定しました。
EB150/2022/REC/1 (who.int)
Working Group on Amendments to the International Health Regulations (2005) (who.int)
2022年11月 Conceptual zero draft for the consideration of the Intergovernmental Negotiating Body at its third meeting (who.int) :The conceptual zero draft is presented as a bridge between the working draft and the future zero draft of the WHO CA+. It is not a draft of the WHO CA+.

2023年10月 パンデミック合意 暫定草案 (第7回INBたたき台)
Proposal for negotiating text of the WHO Pandemic Agreement

外務省 パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書 (いわゆる「パンデミック条約」)の交渉|外務省 (mofa.go.jp)

情報を隠したまま 条約締結を勧める暴挙

国民主権の無視 1 日本の提案文書が国民に非公開

2024年2月2-5日、WHO作業部会の第7回会合が行われました。出席者は、「WHOの権限強化」に対し各国内で反対している根拠を「誤情報、偽情報」であると批判しました。一方で、彼らの発言には、WHOに対する反対が無視できないほどに強いことへの焦りもあるようでした。
他方、日本に固有の問題は、会議への日本提案文書を「交渉に支障をきたす」として厚生労働省が非公開にしている点です(他国は各提案文書を国民に公開)。そのため、日本国民は、どのような内容で交渉が進んでいるかを全く知ることができず、他国で公開されている情報から内容を探ろうとすると「誤情報、偽情報」と指弾されるのです。
日本の担当者は、自国の提案文書を国民に非公開としている一方で、作業部会の事務局文書を公開するよう会議の場で提案しました。矛盾に満ちた情けない姿勢だと思います。
【生配信】国民の議論を”誤情報・偽情報”とWHOで発言する厚労省に直接質問しました (youtube.com)

ニュージーランドのアシュリー博士の発言
ニュージーランドには、この作業部会で進めているIHR改正手続きを妨害し、WHOの活動を弱体化しようとする綿密な計画があります。恐らく、各国で同様の動きがあり、皆さんも戦っていると思います。しかし、この作業部会は加盟国の政府主導で行われる政府間交渉会議であり、各国の主権を脅かすものではありません。むしろ、作業部会の活動によって、各国の国家主権が強化されると自信をもつべきなのです。こういったことを広報し、われわれ作業部会を標的にした誤情報、偽情報に対処するよう、先月執行委員会に提案しました。多くの問題がありますが、一生懸命事に当たりましょう。(要約)

日本の中村早希氏(厚生労働省 大臣官房国際課 課長補佐)の発言
アシュリー博士が提示したIHR改正手続きに関する偽情報misinformation、誤情報disinformationについての懸念は日本でも同様です。5月の世界保健総会で改正が決議されたとしても、その後、日本国内では改正IHRの実行が妨げられる可能性があります。よって、日本は、事務局及びWGIHRの分科会に対し、2022年9月からの話し合いの進捗を公開する意味でBureau's Text(事務局文書)を発行し手続きの進捗状況の透明性を高めることを提案します。分科会は参加国主導で進められており、事務局文書は合意に至る前の文書であると記した上でです。(要約)

2024年2月2-5日 Seventh meeting of the Working Group on Amendments to the International Health Regulations (2005) (who.int)

国民主権の無視 2 国会審議を経ない

2024年5月の第77回WHO総会で、IHR改正(改悪)およびパンデミック条約の採決が行われる予定ですが、国会で審議されたことはなく、審議の予定もありません。条約を締結すれば必ず守らなけれがならず、非常に重要な内容を含む規約の変更であるため、国会審議を通さないことは憲法違反だと考えられています。しかし、2024年2月27日の国会で、上川陽子法務大臣は、すべて問題はなく不要と応えています。

海外発信用 IHR amendment does not require the Diet to approve says JP Minister of Foreign Affairs #StopTheWho (youtube.com)

日本国憲法 第73条
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。
一、法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二、外交関係を処理すること。
三、条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四、・・・

日本国憲法 第98条
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部はその効力を有しない。
二、日本国が締結した条約及び確率された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

大平三原則(国会承認条約)
1974 年、国際約束のうち国会承認条約となるものの基準について、大平正芳外務大臣が 政府側の考えとして整理、説明した3つのカテゴリー
1.法律事項を含む
   ・新たな立法措置、あるいは、既存の法律の維持が必要な場合
   ・領土、施政権の移転のように立法権を含む国の主権全体に直接影響を及ぼす国際的約束
(憲法第41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。)

2.財政事項を含む
   ・予算または法律で財政措置が認められている以上に財政支出義務が発生する場合
(憲法第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする)

3.法律、財政事項を含まなくても、日本と相手国の間、あるいは、国家間一般の基本的関係を法的に規定する意味で政治的に重要な国際規約で、それゆえに発行のために批准が要件とされるもの
(批准は国家の意思表示の最も重い形式であり、政治的に重要な条約は一般的に批准を発効要件としている)

国民主権の無視 3 棚ざらしにされる国民からの質問

2024年2月27日、WCH議連第4回勉強会 
2024年2月5日のWHO作業部会の第7回会合ののち、27日に超党派のWCH議員連盟の第4回勉強会が、厚生労働省、外務省の担当者出席のもとで行われました。国会議員、我那覇真子氏からの質問に対し、これまでと同様、「担当者不在」「知らぬ」「存ぜぬ」「調べます」、あるいは、「最重要視しているのは、改正のプロセスの透明性の確保。重要なのは、パンデミックにとにかく早く対応すること」と回答して逃げるなど、明確な答えをせず、その不誠実さに怒りを覚えます。

日本の提案文書(改正案)を、「交渉に影響を与える」からと非公開にしていることに対する回答は(公開していないのは日本のみ)、「透明性確保のために全体の改正案(IHRの改正案)を表に出すようにとWHOの全加盟国に働きかけたが、一部の加盟国の反対があり、最新の改正案の公表は見送られた。」「厚生労働省は外務省とも相談しながら、IHR改正交渉の透明性が高まるよう、他の加盟国に働きかけている」と応えました。
さらに、「国民からの質問に対しては、厚生労働省のホームページ、国会、取材できちんと対応していきたい」と続けました。しかし、我那覇氏は「説明するとおっしゃったが、厚生労働省のホームページがどれほど充実しているか再確認しようと今朝見たら(2024年2月27日)、最終更新は2023年11月28日だった。そのあとミーティングが何回も行われているのに。」と指摘しました。厚生労働省のホームページは、2月29日に更新されました。 

厚生労働省ホームページ 国際保健規則(IHR)(2005年)の改正の検討状況について   |厚生労働省 (mhlw.go.jp)


今後

2024年5月 第77回WHO総会 (予定)

WHOCA+(パンデミック条約)と IHR改正 の採択 を予定
これら2つの文書による枠組みが相互に補完し合うことで、世界の公衆衛生のより良い協調が実現されることを期待しているとのこと。

IHR改正(改悪)、パンデミック条約の内容については、「WHO 医療における情報操作 3 ー IHR改悪、パンデミック条約の真実 ー 」にまとめる予定です。


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