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『旅情』

旅情とテレビの相性は悪い。
少なくとも、私にとっては。まず、旅先でテレビを観ることがない。新聞も読まない。だから、私は5日間世の中に置いていかれる。昔は天気予報もテレビが頼りだった。いまは、色々ある。できるだけ、旅情を削がれないような、ツーリングにしたい。

家ではテレビを観る。あのドイツ人建築家が建てた『竹所』集落にも脚を延ばせたらと思う。松之山温泉から、それほど離れていないはずだ。地図は開いてない。ああ、地図も開かなくなった。2021年版の『ツーリングマップル』は持参してきている。けれど、もう、スマホのナビ頼りだ。バイクから電源も引いている。迷うこともない。

それにしても、福島から新潟の峠越えは寒かった。
寒いだろうから、峠越えの前に、此処で掛け蕎麦でも食べようと、もくろんでいた店が定休日だった。峠越えは、霧雨だった。バイクとすれ違ったのは数回だけだった。この『田子倉ダム湖』は、紅葉の名所でもあり、私はこのルートを年に2回はツーリングする。冬は冬季閉鎖になる。

一月程前に、親戚と連絡をとったところ。まだ、雪が1メートルあると言われた。さすがに、もうないだろう。あったとしても、道端にチラホラある程度だと思いたい。『見玉不動尊』とは、まあ、日本有数の豪雪地帯なのだ。長野との県境の秘境の入口。秋山郷もあまりバイクでは走りたくない。一歩間違えれば峠に真っ逆さまだ。
私の祖母(会ったことはない)は秋山郷の生まれだと聞いた事がある。

両親は余り故郷の話をしないので、その辺りの知識が不足している。
本当は、小説のネタの為に父親の故郷(こちらは新潟の北方、福島との境にある)にも行きたい。勝手にはいけない。こちらも、秘境みたいなもので、私がゆくと絶対バレるのだ。なぜ、バレてはいけないのか私にはわからないが。墓参りはともかく。(またしても不敬だ、だから腰を痛めたのだ)
『芹田のイボ地蔵』という、なんの変哲もない地蔵が集落にある。雨ざらしの地蔵でもなく、小さな御堂に鎮座している。それが観たい。『見玉不動尊』と違って、有名でもないのでネットにも情報が上がっていない。

しかも、いくと絶対バレる。素通り出来るのか。このご時世に。観光客のフリして、誰も知らない『イボ地蔵』に。しかも、田舎の集落を狙った強盗事件があったばかりだ。ふきのとうを一年分くらい送って頂いているのに。お礼もできていない。「いい、いい、墓参りなんていいから、しっかり養生しろ」、そんな具合なのだ。私は元気なのだが。『腹下り』も治った。

せっかく生まれてきたのだから、小説の一本も書きたい。義務教育を修了した義務だと思っている。そんな欲求がある。『麒麟山』も観たいのだ。バイクと私のセットは案外目立つのだ。さーといって、写真を十枚も撮ればいいか。「ほっちゃ、なにか食ってけ」と言われても『がんかわいがり』中なので食べ物に私が制限をかけている。断りづらい。難しいところだ。

父の故郷ではだいたい「ほっちゃ」と呼ばれていた。いまはどうだろう「ほうじゅんくん」か。「ほうじゅん」か。
ちなみに私の本名は「せいのほうじゅん」と言う。風変わりな、名前だ。ちょっと長いので、ペンネームは「せいのほう」としている。

追記。
おう、ネットを調べたら『芹田のイボ地蔵』の情報が上がっていた。すごい時代だ。ありがたい。


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