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小説のほう

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連載小説です。カワサキw650で空を走ります。みなさんの写真とイラストをお借りしています。
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記事一覧

『小説。空生講徒然雲35』

 感傷はいらない。そんなタイプの二人と二匹の空生講徒然雲が、はじまった。シマさんも、タナ…

9

『小説。空生講徒然雲34』

 蛍の残照が私の頭をいっぱいにしていた。季節は秋だ。けれど、受け容れよう。此処はそういう…

8

『小説。空生講徒然雲33』

「ばるんばるん」という轟音がした。はずだった。  それは、一気に緊張がほぐれるような龍の…

5

『小説空生講徒然雲32』

 仁王門の中からぬいっと窮屈そうな龍の首が出ている。  後方には階段があり左斜め上の御堂…

せいのほう
10日前
1

『小説空生講徒然雲31』

 龍ヶ窪の水のなかをぐいぐい進み、見玉尊の見玉を潜り抜けたら巨大生物が現れた。ゴジラか。…

せいのほう
2週間前
4

『小説空生講徒然雲30

龍ヶ窪の池の底が見える。私に恐ろしさはない。もとい、我々一行に恐れはないだろう。奇縁で結…

せいのほう
2週間前
8

『小説•空生講徒然雲29』

うずうずとむずむずが止まらない。 龍ヶ窪の池に飛び込みたい。こんな感覚ははじめてだった。もの生む空の世界の非常識の常識に従順だった私が能動的な欲望の捌け口を、龍ヶ窪の池に飛ぶ込むことで代替しようとしていた。千日間の従順だった私は何処へいったというのだ。口凸口凹ハの三段階目にきて、私の内心が変様しているのだろうか。3口目に入ったという事が終わりの始まりなのかも知れない。口凸口凹ハの5段階を過ごす内に、行者はもの思う種の世界からどんどん離れていくものだ。もの思う事と決別しなければ

『小説空生講徒然雲28』

ひかりの帽子を被ったような苗場山の向こうに我々一行が向かう土地がある。どう行ったっていい…

せいのほう
5か月前
9

『空生講徒然雲27』

空生講徒然雲は利根川を越えた。此処は、もの思う種の世界で私が暮らしていた故郷なのだろう。…

せいのほう
6か月前
16

小説『空生講徒然雲26』

北上する奇妙な軍団が埼玉をぬけてゆく。 電線上を走る爽快さに優るものを私は知らない。なに…

せいのほう
6か月前
9

小説『空生講徒然雲25』

ふらふらしている。鬱々不安骸骨のタナカタさんのことだ。ヤマハSR400に跨がりシマさんの腰を…

せいのほう
6か月前
17

小説『空生講徒然雲24』

鉄塔の下のおじ様の嗚咽は終わったようだ。 「カタカナカタ、カタカナカタ」 歯鳴りがはじまっ…

せいのほう
6か月前
11

小説『空生講徒然雲23』

「まだ、先のことですが、狐の嫁入りの縄張りに入ったら、私が拾ってきた面を被ってもらいます…

せいのほう
6か月前
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小説『空生講徒然雲22』

夏と秋の間の終電の終わった東京の空を、地方へ下ってゆくあらゆる路線の架線上をつなぎ合わせるように私たちは走っている。「慣れるまで酔う者もいます」と、シマさんには伝えた。サイドミラーから見える笑顔からするとその心配はないようだった。酔う酔わないは体質の問題ではない。跨がるオートバイとの相性が大きい。心を許しあったヤマハSR400とシマさんには関係のないことだ。それは、私とカワサキW650にとっても同じことだった。「なぁ」とタンクを撫でると「ドッドッタリドタリ」とうれしそうに煙を