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【横田一】総理待望論が高まる泉前明石市長|政界ウォッチ28

 総理待望論が高まりつつある泉房穂・前明石市長が岸田文雄首相との応援演説対決を制した「参院徳島高知補選」(昨年10月22日投開票)は、日本の政治の転換点となる可能性がある。本誌11月号で紹介した通り、泉前市長と岸田首相が同じ日に徳島入りをして共にマイクを握ったが、結果は泉前市長が支援した広田一候補が自公系候補に勝利した。「増税メガネ」のヤジが飛んだ不人気な岸田首相と、人気抜群の泉前市長の勢いの差がそのまま投票結果に表れたようにみえたのだ。

 3期12年の間に子供予算を倍増以上にして10年連続人口増を達成した泉前市長が、政権交代の牽引役として注目されている。昨年4月に市長を退任した後、岩手県知事選や埼玉県所沢市長選などで支援候補が連戦連勝。昨年11月26日の東京新聞のインタビューで「救民内閣」を提唱、次期総選挙での政権交代は可能と指摘したのだ。

 泉前市長の基本戦略は「横展開」と「縦展開」の二方面作戦。明石市政での成功事例を他の地方自治体に広げるのが横展開で、兵庫県三田市を皮切りに東京都立川市や埼玉県所沢市で実践、支援候補の勝利に貢献。所沢市長選では、元衆院議員の小野塚勝俊候補(現市長)の出馬会見にも同席し、告示前後も何度も現地入りするほど全力を投入したのだ。

 もう一つの縦展開は明石モデルを国政に反映させることだが、その第一歩が参院補選であった。

 泉前市長が繰り返し主張しているのは「市民(有権者)が動けば、政治は変えられる」というメッセージだ。小選挙区制中心の選挙制度であることから「一気に政治は変わる」とも強調、次期総選挙での政権交代が可能であるとの見立ても披露していた。「1回の衆院選で政権は取れる」(昨年11月26日付東京新聞)というのは、泉前市長の持論なのだ。

 そして岸田政権の支持率が過去最低を更新していく中、「救民内閣」構想の実現可能性は高まりつつある。注目点は、泉前市長が先の東京新聞のインタビューで「既存政党とは別の新党を立ち上げるというよりも、全ての既存政党を壊すイメージ」と述べつつ、「国民の負担増を許さない勢力を一つにまとめるのか、連合軍で戦って勝つのかは、いずれでも良い」とも語っていること。イメージとしては既成政党を壊すとしつつも「連合軍」、つまり野党との連携を否定していないことだ。

 二つの選択肢がある。泉前市長が政権交代のシナリオを描く総監督役に専念する場合と監督兼選手の一人二役をこなす場合だ。前者なら、救民内閣に賛同する現職議員や新人候補を応援、自公連立政権を下野させる。後者なら政権交代実現のシナリオ作りをすると同時に、次期衆院選で明石市を含む兵庫9区(西村康利・前経産大臣が現職)などの小選挙区や比例区から出馬する。この場合は、「泉房穂総理をトップとする救民内閣を誕生させよう」と呼びかけることが可能だ。

 その気運も高まりつつある。泉前市長は3月20日に岡山市内で講演、主催者の「武蔵野政治塾」の橘民義事務局長から総理待望論が飛び出した。基調講演と質疑応答後の挨拶で、熱いエールを送ったのだ。

 「今日、『明石市長として出来ることには限界がある』『総理になれば、(政治は)やっぱり変わる』と仰った。私は是非、泉さんには総理になっていただきたい。(大きな拍手)今日(講演を)聞いて『日本の次の総理は泉房穂だ』と確信しました」

 講演後、泉前市長に総理待望論の受け止め(衆院選出馬の可能性)について聞いてみたが、シナリオ作りの総監督役に徹したいと答えた。

 現時点では総理待望論に慎重な姿勢の泉前市長。今後、次期総選挙に向けて「救民内閣」構想をどう具体化するのか注目される。


よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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