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なぜそのデザインは「分かりやすい」と思うのか?

「分かりやすくしてほしい」。それはいついかなる時もウェブデザイナーに与えられた最上のミッションであるといえるでしょう。ごちゃごちゃしてるから「分かりやすく」「見やすく」。その「分かりやすさ」の「仕組み」って、どうなっているのか、今日は深掘りしてみたいと思います。

あるデザインを見たとき、私たちがそれを「分かりやすい」判断する理由・根拠は大きく分けて3つあると思います。

1.人間が先天的に備わってる本能・直感・習性に従っているから。
そのデザインについて、過去に使ったり学んだりした経験もないし学習した経験もないが、何故か自然にスムーズに使ったり理解することができる。

2.人間が後天的に習得した知識・経験・慣習を適用できるから。
そのデザインもしくはそれに類似したデザインについて、過去に使ったり学んだりした経験があって、そこで培った知識や慣習を適用することで、スムーズに使ったり理解することができる。

3.1と2の融合

詳しく見ていきます。

1.人間が先天的に備わってる本能・直感・習性に従っているから。

揺れているものに注意が向く。大きいものは視界に入る。文章は左上から読み始める。こういった行動・現象は赤ちゃんでも、もっと言えば犬や猫といった動物でも身についている (赤ちゃんや動物は文字は読めませんが)、生まれついての習性や本能といえます。アニメーションで対象を点滅させたり、見出しの文字を大きくして目立たせたりというデザインは、こうした人間の本能・直感・習性を利用したものと言えます。

2.人間が後天的に習得した知識・経験・慣習を適用できるから。

わたしたちの「分かりやすさ」の根本となっているのはこれが一番大きいのではないでしょうか。これ前に見たことがある。いつも使うやつに似てる。やり方を教わったことがある。だから慣れている、妥当な判断が下せる、推測できる。
ここを掘り下げていくと、よく言われる「直感的に分かりやすいデザイン」というものが実はほとんど何の根拠もないものである、ということが分かると思います。虫眼鏡アイコンをクリックすると検索できる。女性向けサイトだからピンクを使う。何か一つを選択するときはラジオボタンを配置する。これらのデザインが採用された理由は、乱暴な言い方をすれば「多く場合のそうなっているから」「慣れてるから」というだけです。虫眼鏡と検索を紐づけられるのはGoogleやYahoo!を使い慣れているからであり、ピンクは女性のイメージであるという印象は文化的背景に起因しますし、ラジオボタンの機能やインタラクションについての知識はもはや広く普及されているものです。
ここで重要なのは、それが本当に使いやすいかどうかはもはや別にどうでもよい、ということです。スマートフォンのナビゲーションとしてハンバーガーボタンがふさわしいかどうか、極論を言えばもはやどうでもよいことです。多くのユーザがその使い方を学習し、経験しているという事実に、分かりやすさの根拠があります。

3.1と2の融合。

それがなぜ分かりやすいのか、先天的な本能・直感によるのか、後天的に学習・経験したからなのか、もはや厳密な区別がつかないパターンです。例えばデザイン4つの基本原則の1つ、「整列」ですが、対象を揃えると読みやすく分かりやすくなる、というのは先天的な要因に起因するのか後天的な要因に起因するのか、区別をつけるのはもはや困難でしょう。先天的な人間の認知学的な視線の流れから分析すれば、整列線に沿って並べられたものは視点が揺れることがないため視認・読解にストレスがない、とも言えますし、また一方で後天的な学習・慣習の観点から考慮すると、整理整頓されているものは美しいという社会的な通念・教育を我々が受けてきたからかもしれません。
このように「先天的後天的どちらともいえないけどどちらでもある」ケースも案外多く、どちらの観点からも検証が必要です。

「分かりやすい」の根拠って、実は後天的な経験・学習か、先天的な本能・直感か、大きく別れるよね、という、言語化してみれば当たり前のことなんですが、意外に語られないシンプルかつ奥の深いお話でした。

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