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意外とプアな名作「Matrix」

 「ラムシル」のアップデートができていなくてすみません。言い訳するつもりはありません。ただ迷ったり他の事をしながらなので遅いだけです。(本当に終わる気あるの?←答えはあります!) 今日は書く方とは無関係ですが、思い出したように昔の映画を観て考えた事を書いておきたいと思います。

 タイトルに書いたのでどの映画作品の事かはおわかりと思います。1990年代の終わりに世に衝撃を与えつつ公開された「Matrix」3部作についてです。もう20年以上前になりますので月日の経つのは早いものだと感じます。Matrix公開時に生まれた人が既に20歳を超えているのですから。

 さて、本題に入ります。本題ですが、私は読まれている皆さんがMatrixをご存知のつもりで書きますのでご了承ください。

 Matrixの1作目が衝撃的だった意味は大きく分けて2つあります。1つは、それまでアニメ、つまり手描きの画像のパラパラ漫画でしか実現できなかった効果を高速高画質でコマ撮りできるスチルカメラで撮影して実現できた事です。2つ目は、今やどんな映像作品でもこの一言で言い表わすことのできてしまうマジックワード「世界観」の実写化でした。それも、一般人からすればかなり深いところにあるコンピュータ・オタクのそれをありありと見せる、魅せる事に成功したという事でした。

 その世界観の方は、1作目を初めて観て「うーん、どういう事?」とわからない謎解き的面白さになっています。大成功だったと思われます。ただ、2作目のリローデッドに入りますと既に謎解きはほぼ済んでしまっていますのでその部分の面白さは無くなってしまいます。そして新たな謎解きは提供されませんのでちょっと残念な感じがしてきます。そうなりますと、ドラマとしてどうかという鑑賞が気持ちの中で始まるわけですが、その点がとてもプアなのです。

 どうプアかといいますと、登場人物どうしの絡みがほとんど無いのです。その意味で見せ場が無いのです。例えばリローデッドで予言者と自由になったスミスが一緒に出てくる場面は1ヶ所で、しかもニアミスです。実質的には会っていません。スミスが予言者にとって安全な場所に入って来られた理由の説明がありませんのでそこから始まるのはネオとのただの戦いです。果たして予言者はシステムの門番という目的から自由になったスミスを招き入れたのでしょうか? (3作目を観るとそうでない事はわかります) キーメイカーを捕らえていたメロビンジアンはなぜそうしていたのでしょうか? よくわかりません。メロビンジアンは手下を従えて強い力を持っているのですが、それは例の世界観の中でどんな位置付けなのでしょうか? これも難しい問題です。映像の上ではそのパワーは自分より小物への支配と享楽に使われているだけです。スミスのように徐々に強大になりシステムの脅威になるようでもありません。

 脅威といえばスミスですが、予言者によってスミスの力が強大になりもはやコントロールできないと告げられますが、実際の被害や影響力については説明されませんし、なぜ強大な力を身に付けられるのかもよくわかりません。ましてや他の登場人物(プログラムたち)との関係も希薄です。そしてネオは救世主ですから脅威的なスキルをどんどん開眼していくのは良い(仕方ない) ですが、1作目でモーフィアスが与えたようなきっかけは他にほんの少しだけです。(スプーンとか) いくら救世主だからと言っても、向上するには向上するなりの原理のようなものがある方が良いはずです。その向上はシステム内で起きている事ですし、システムの設定を自ら歪められる方法は必要だと思うのです。その方が空を飛べるようになった事と、モーフィアスたちが飛べないままである事に納得感が出ます。

 同じようなドラマは人間側にも不足しています。トリニティとネオが互いに惹かれ合うようになる経緯に共感できるものが無く、最初からそれがわかっていたようにして進んで最後まで行ってしまいますし、他の人物たちの個人的人間ドラマもありきたりで安っぽい。評議員たちの決断、つまりモーフィアスに賭けてみようとするまでににどのような葛藤や相剋があったかが、とても重大な決断であるにも関わらず描かれていません。

 こうしたことにより、謎解きと「自分が信じている世界は本当の世界であるのか?」という問題提起で始まったMatrixは、2作目、3作目ではドタバタ劇をもって最終章に導かれます。一つの救いは、1作目の問題提起の部分がさらに一歩先に進められて「選択と運命または管理」にまで行き着く事です。それがわかると確かにMatrixは3作分必要だったのだなと理解できるのですが、そこへ行くまでの見せ方以外の味気無さはとても残念です。4作目が作られたそうですが、何年かしたら007やスパイダーマンのようにリメイク作品ができる事を望みます。

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