司法試験の勉強方法 その7 

前回までのあらすじ

前回は「答案で伝える力と、それを高める難しさ」について、でした。
今回は「答案で伝える力とは何か、その力をどの程度まで高めればいいのか、そのためには予備校をどのように使えばいいのか」について考えてみます。


「答案で伝える力」

論文を書いてはいけない

受験生がまず最初に気をつけるべきことであり、合格するまで一度たりとも忘れてはいけないことがあります。

それは、「論文式試験で論文を書いてはいけない」ということです。

司法試験の勉強を始めると、どこかで必ず一度は耳にする言葉です。
司法試験は「論文」を書く試験ではありません。

落ち着いて、司法試験の試験形式を良くみてみましょう。
論文「式」試験と書いてあるはずです。
「論文試験」ではありません

司法試験では、論文という形式で解答することが求められているだけです。
論文式試験で論文を書くと落ちます

法律文書を書こう

では、論文式試験の答案では何を書けばいいのでしょうか。

法曹は、法律文書を扱うプロです。
そして、司法試験は、法曹になるための試験です。
ですから、司法試験では、法律文書を扱えるかどうかが試されます。

つまり、司法試験の答案は「法律文書」という形式で書く必要があります。

法律文書には、かなり厳格な型、作法ともいうべき書き方があります。
その作法を踏んでいない限りは、法律文書とは評価されません。

ここでいう作法とは「法的三段論法」のことです。

「答案で伝える力」とは、結局のところ「法的三段論法を用いて自分の思考過程を伝える力」ということになります。


*法律文書は多様ですから、実際には、種類に応じた様々な作法があります。しかし、司法試験の答案との関係では、「法的三段論法」だけ押さえておけば必要にして十分です。また「法的三段論法」の中身については、多くの予備校本・専門書などで解説されていますので、こんなnoteで書くことはありません。


「答案で伝える力」をどこまで高めればいいのか

「答案で伝える力」を高めるとして、その力は、果たしてどの程度まで高めれば良いのでしょうか。
その答えは、当然「司法試験合格者と同程度まで」ということになります。

合格者と不合格者の違い

司法試験界隈には、「なんでこの実力で合格できないの?」と感じる人が、そこぞかしこに転がっています。
合格者となんら遜色のない知識、理解を有しており、しかも使用する能力も十分にある不合格者は、少しも珍しくありません。

もちろん、私は合格者の中では底辺ですから、私と遜色ないのは当然です。
ですが、上位合格者と比べてみても、大きな差はありません。

大体が、上位合格者といったって、山より高い知識と海より深い理解を有しており、それを巧みに使いこなすことができるというわけでは、別にないんですね。
だって、司法試験に合格しただけの人ですよ。
法曹としての実力は卵です。
自分が底辺だからといって、上位合格者を貶めているわけではありません悔しいけど
これは、当たり前のことなのです。

合格者だけが持っている力

合格者と不合格者との間に、それほど大した差はありません。
ただし、合格者であればほぼ例外なく持っている力があります。
それが「答案で伝える力」、つまり「法的三段論法で書く力」です。

合格者は「法律文書」の作法を心得ています。
特に、上位合格者になると、どのような書き方ならば「法律文書」と判断されるのか、また、どのように書くと「法律文書」とは判断されなくなるのか、その辺りの感覚が非常に鋭敏です。
そのため、作法を崩さずに、かといって形式的にもなり過ぎずに、最小限の文量で法律文書を書き上げることができます。

なぜか合格できない人

一方で、知識等は十分あるのになぜか合格できない人は沢山います。
そして、このような人全員に共通していることがあります。
それは、法的三段論法が身に付いていないことです。

要は、答案が法律文書になっていないわけですね。
これだと、法律文書を扱えないと採点者に判断されます。
それゆえ、当然良い点数は望めません。
したがって、内容面が神でない限りは落ちます。
そして、ほぼ全ての受験生は神ではないため、落ちます。

結局のところ、「合格者と同じくらい法的三段論法を使いこなせるようになる」ということが「合格者と同程度まで答案で伝える力を高める」ということになります。


*法律文書としての作法と、いわゆる日本語としての「文章力」はほとんど関係ありません。合格答案を作成するために、高い「文章力」は不要です。


予備校の使い方

司法試験に合格するには、法的三段論法を扱えるようにならないといけません。
そのトレーニングの場として、予備校は非常に優秀です。
具体的には、論証パターンの記憶と、論証パターンの崩しです。
紙幅の都合上、今回は論証パターンの記憶についてだけ触れます。

論証パターンの記憶

論証パターン、いわゆる「論パ」の記憶です。

論パとは、予備校などがまとめた、特定の論点に対する理解や判断基準を示すために用いられる論述の流れをまとめたものです。
こんな便利なもの、使わない手はありません

重要な論点については、論パを馬鹿みたいに記憶し、答練で、模試で、法科大学院の試験で、阿呆みたいに貼り付けられるようになってください。

論パの内容を十分に理解している必要はありません
貼り付けさえできれば、少なくとも法的三段論法という作法は踏めている、と判断されます
それが論パです。

たまにお叱りを受けるかも知れませんが、絶対気にしてはいけませんマジで
機械みたいに貼り付けられるようになって下さい。

最初は記憶から

「結局記憶かよ!」という人もいるかも知れません。
そうです、まずは「記憶」です。

最初に記憶が必要なのは当たり前です。
記憶の要らない国家試験など聞いたことありません。

重要論点の論パすら記憶できないなら司法試験は諦めて下さい。
一応は難関試験です。
いくらなんでも、そこまで甘い試験ではありません。


*論証集自体は市販していますから、予備校の使い方として書くのが正しいのか迷いました。ですが、予備校の論証集は、予備校の講義とセットになっているというイメージが強いものですから、予備校の使い方に含めて書くことにしました。また、予備校以外の論証集を目にしたことがない、ということも理由の一つです。特定ローのゼミ内でだけ利用されているものがあるとか、そんな噂も聞いたことありますが、真偽の程は不明です。


論パの自作について

ところで、「他人の文章を記憶するなんて嫌だ!自分の頭で考えた論述をするんだ!」という愚かかつ無謀な人もいるかも知れません(私がそうでした)。
いわゆる、論パの自作ですね。

自信を持って言いますが、記憶すること自体に相当な障害があるのでなければ、できればやめた方がいいです。
とてつもなく時間が掛かりますし、間違えたものを作成し、誤った理解のまま記憶してしまうリスクも高いです。
極めて非効率であるため、非推奨です。


*私には論パ自作の方法が合っていたようで、結果として合格できました。また、単純に記憶する、という方法では、私の場合は合格できなかった可能性が高いです。しかし、万人には勧められません。どうしても他人の論パの記憶が嫌だという人で、知識自体は十分あるという人であれば(予備試験・司法試験の短答はゼロ勉強で合格できる程度)、試してみてもいいかも知れません。


今回はここまで

分量や時間の関係で、今回はここまでにします。
ちょっと尻切れ感があってモヤモヤします。
次回は予備校の使い方について、もう少し色々書きたいところです。

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