悪夢と心模様/少し明晰夢の話
夢は不思議なものです。
記憶整理の副産物に過ぎないとか、無意識の顕在化だとか、集合的無意識に繋がっているとか、はたまた異世界の一端を垣間見ているのだとか。
起きたときに何も憶えていないこともあることと思いますが、脳の活動を電気信号として分析すると、すべての人が夢をみているはずだとする主張もあります。憶えていないだけで、夢の世界はそこに存在しています。
目覚めると消えてしまう世界、夢。
色はあるでしょうか。
音はあるでしょうか。
他の感覚はどうでしょう。
現実との区別はつきますか。
夢から醒めると「アレは現実にはあり得ない」と夢を自覚しますが、夢の中にあっては中々気づくことは難しいものです。
夢の中で「夢だ」と自覚する夢を明晰夢と定義します。感覚が鋭敏になるとか夢を自分で操作できるとか、そういったことは副次的な現象であって、最も肝心な始まりは夢であることの自覚です。
証拠のない持論ですが、おそらく明晰夢をみているとき、脳はより覚醒に近い状態なのだろうと推測します。理性的な、例えば前頭前野の働きがなければ「夢だ」と冷静に分析し自覚することは不可能であろうからです。
私はしばしば明晰夢をみます。
みますが、夢と自覚しながら現実と夢と判断に悩むこともあります。それは体性感覚が現実通り全て揃っている場合があるからです。
訓練の結果ではありません。幼少期から自然とみる夢の多くが明晰夢で、その殆どが悪夢でした。
最近になって、息子の夜泣きが再燃しています。頻度は少なく、それほど激しいものではありませんが、朝泣きながら起きることもあります。寝言から夢をみているのだろうと想像がつきましたから、先日ふと訊ねてみました。夢をみるのかい、と。
息子は少し驚いたように目をぱちくりさせて、
「こわい夢をみるんだ」と応えました。
悪夢。
パパも小さい頃に怖い夢をたくさんみたけど、今は殆どみることはないよ。強くなったからね。
もし怖い夢をみたらパパが助けに行くから、呼んでくれよな!悪い奴が出てきたら「破ぁ!」ってやっつけてやんよ。
そんなことを応えながら、これは責任重大だと身の引き締まる思いを抱きました。
幼少期の夢。
もし夢が記憶整理の副産物なら、悪夢になるような主観的経験があるということになります。
もし夢が無意識の顕在化なら、無意識に沈めなければならないような記憶があったということになります。
もし夢が集合的無意識へのアクセスなら、私も潜水して彼を助けに行く必要があります。
もし夢が異世界なら、異世界転生渡邊おじさんが始まります。
夢は不思議なものです。
いつか外来に「悪夢」を主訴にいらっしゃった方を「治療」したことを思い出しながら、安心したように顔を緩めて私の胸に飛び込んできた息子を抱き締めました。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の夢が楽しいものでありますように。
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