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万能人と異才人

 天才と呼ばれる人たちがいます。

 彼らは常人には不可能なことを実現する能力があって、しばしば憧れや畏怖の対象となってきました。大脳の処理速度の高低のみでは天才か否かを判ずることは出来ず、高い知能指数I.Q.に加えて「ひらめき」のセンスを持つことが天才の必要条件であると私は考えます。

 脳神経学者の古川哲雄博士は著書『天才の病態生理』の中で、その「ひらめき」の性質を「類似性の発見」と考察しました。そしてそれは病的な性質と表裏一体であって、天才と称される人々には少なからず、脳神経細胞の異常発火とも表現すべき疾患の併存があることを指摘します。片頭痛と癲癇がこれに該当し、通常とは異なる神経回路の構築が天才を天才たらしめる、と結びます。

 歴史を紐解くと、天才には2種類あることが分かります。

 万能人異才人です。

 前者はダ・ヴィンチやゲーテに代表されるように、多彩な学問分野に才能を発揮して人類史を推し進める存在です。

 後者はアインシュタインやノイマン、ラマヌジャンに代表されるような特定の領域に神懸かりの才覚を発揮する存在です。

 人物を列記していくと、時代が古いほど万能人が多く、現代に近づくほど異才人が多いことに気付きます。おそらく学問が細分化されながら発展するうちに、仮令天才と雖も一人の人間が一生という刹那に全てを修めるのは困難になってきたのでしょう。

 今後、人類が何らかの手段によって脳のスペックを劇的に向上させたり、意識と記憶を継承する術を得て長くとも100年程度という時間的制約が無くなれば、あるいは再び万能人の興隆をみられるかもしれませんが、それは遠い遠い未来のことです。


 天才、憧れます。

 憧れている時点で天才とは程遠いところに居るのだろうと思いながら、しかし一縷の望みくらい残しておいても罰は当たらないでしょう。一通りの土台作りは済みましたから、ここから先は自分の好きなことに没頭してみようと思います。

 貴方は新たな歴史の目撃者になるかもしれませんし、天才に憧れて散っていく凡人の人生を垣間見るのかもしれません。

 どちらも面白そうですね。面白いと思います。


 次号、渡邊は天才になれるのか。乞うご期待。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の人生にひと匙のエンターテイメントをお届けできますように。



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