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流れる水と小さな星 《詩》

「流れる水と小さな星」

僕の目の前にある時間は

静かな足取りで通り過ぎて行った

其処には僕の意思とは関わりなく

其れ自身の原理に従い

流れる水の様に静かに


彼女は僕の知らない場所で
眠っていた

其処は時間と空間によって 

行動の自由を制限される事の
無い場所


夢の無い深い眠りの中で

僕達には行かなくてはならない所が

やらなくてはならない事がある 

その事をはっきりと知る


月の満ち欠けに関する神秘だとか

ギターのヘッドに 

装飾された狼のインレイだとか

僕の目に映り
心を惹かれて手を伸ばした

全てのものは綺麗な光に満ちていた


何度も君が僕の耳元で囁いていた

妖精の話 

其処には何の考察も無く 

君の中の
憧れや夢の物語だけがあった


僕は ひと言だけ  

好きだよ そう君に告げた

そして手を繋ぎ

致死的な領域を超えた

僕達の頭上には星が輝いている

手で覆うと隠れてしまうくらいの

小さな星だけど


僕等はそれぞれに明かす事の無い

秘密を抱えて生きている

この世界で

ふたりだけが共有した秘密が

その小さな星に姿を変え
僕等を守ってくれる

漆黒の夜空は沈黙の中に

其の僕等の秘密を静かに呑み込む


何故だか僕には
微笑みに似た瞬きの様に思えた

何処にも存在しない

永続する形を心に刻んだ

危険な何かを

引き寄せる程の力を有した

文章は失われなくてはならない


僕等は綴った文章を持ち寄り

火を付けて燃やした

そして ふたりは瞳を閉じる

出来る事なら どうか近くに

瞬く星の意味を少しだけ 

まだ見ぬ全てが流れ始める 

水の様に静かに

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