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風を待つ月 《詩》

「風を待つ月」

いつか遠からず其の日はやって来る

長い沈黙の後にそう彼奴は言った

僕は記憶の寿命を延命する様に 

其の断片を永遠に刻み込む様に

時折 
彼奴の言葉を心の中に落とし込む


ジムビームとメンソールと小説と

あの夜 
高速の高架下から見上げた月

僕は意識の中にある

彼奴の扉をノックした

彼奴の愛した最後の女 
そして弟

桜の花びらが結晶化する

永遠を形造るもうひとつの世界

僕も其処に向かい歩いて行く途中だ

死の前触れに似た
薄暗い黄昏を見据える

その手間で僕等は

精神の密約を交わした


揺らぎない意志と
曇り無い明確な輝きを見た

風を待つ月 星の影

いつか遠からず…
僕は彼奴に話しかける

微笑みを浮かべうなずく様に

彼奴の星が瞬く 

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