見出し画像

anarchism - 十字架 - 《小説》

「anarchism」 - 十字架 -

僕はあの夜に全てを知った 

あの海辺で

玲子さんの辛い過去と 

それを誤魔化し
罪を上塗りして来た事実 

その全ての事柄


それは玲子さん自身が自分の心が

精神が壊れない為の精一杯の

抵抗だったのだと認識した


僕は失望もしなかった 

ただ玲子さんを

強く抱きしめたい そう感じていた


美幸さんもまた 
それら全てを受け入れ

寄り添い涙を流した

ビー玉海岸の名前の由来は 

ビー玉の様に
透き通る綺麗な海だから 

そんな話を聞いた事がある 


きっと 玲子さんや美幸さん 

深い傷を持つ者

消えない十字架を背負った
人達の涙の色が

より蒼く哀しげに
輝かせているのだと思った


玲子さんは遠く離れた場所にいる

精神療養施設に居ると聞かされた

住んでいた家も売却され 

その施設のある
土地にご両親も引っ越されたのだと


美幸さんは その場所を
僕には教えてくれなかった

少し待ってあげなよ 誠 

何故 玲子が
何も言わなかったのか 

その意味を考えなよ

そう僕に言った 僕は小さく頷いた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?