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共犯者 春を呼べ 《詩》

共犯者 春を呼べ 《詩》

深い混乱の中に
均等なふたつの光の存在を探した

失われて行く時間の感覚 

ある種の衝動が

頭上からずれ堕ちて来る

僕は夢と想像の中に言葉を探す

其れは誰か特定の人に
向けられた言葉では無い

其処に見える憂鬱な風に包まれた

名前を持たない
消えかかった田園風景

其の僕の中にある

無名の場所を埋める為の言葉だ

疵痕も残さず切り裂いた刃 

大量の現実の血が
流されたはずだった

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黄色い月 《詩》

黄色い月 《詩》

「黄色い月」

春が終わりに近づいた夜 

空気は漠然とした湿り気を帯び

薄靄に包まれた
黄色い月がふたりを見ていた

僕の隣りで不規則に美しく揺れる
君のスカートの裾 

僕は自分を失ってしまうほど

激しく君を求めていた

はぐらかす様に微笑む君の唇に

静かに指先で触れた

少しの間の沈黙 

其れは彼女の同意を意味している

全てが再び現実の位相に服すまで

彼女の長い睫毛が

僕の心の

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車椅子のロージー 《詩》

車椅子のロージー 《詩》

「車椅子のロージー」

少しの乱れも無く調和した共同体 

そんな夢の中にだけ花は咲く

誰かが誇らしい気にそう言った

無音の雷鳴と目に見えぬ雷光 

其れが脳裏に焼き付いている

僕と言う固有のただひとつの人格が

名前を持たぬ混沌 

未明の暗闇の中で
かろうじて息をしている

抽象的な命題を空に描き 

頭は現実とは別の場所にある

恵まれてるとか 恵まれて無いとか 

魅力的な微笑みを浮

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ケセラセラ 《詩》

ケセラセラ 《詩》

「ケセラセラ」

昔日の繁栄の面影は

歴史の中に埋没する

祭りの花火の様に

強固に脈打つ現生的な栄光は

時間と共に

次第に色褪せ失われて行く

栄華と挫折を
一度に曝け出す過去を映す鏡

僕等は強い共同意識を持ち

外部との混在を否定し続けていた

ゆっくりと揺蕩うごとく流れる幻想

確固たる世界観の中に共存する夢

丘の上にある大きな鐘を鳴らす

不明確な旋律が
切れ目なく流れている

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銀河鉄道を待つ夜 《詩》

銀河鉄道を待つ夜 《詩》

「銀河鉄道を待つ夜」

雲が低く流れ

山肌を静かに湿らせている

細かな緊張をはらんだ空気が

其処に渦巻く

星降る夜に 
ひとりの少女が夢を見た

矛盾と悲しみに満ちた夢を見た

其の悲しみの中に美しさと静けさを
読み取る事が出来るのは 

きっと

少女と同じ境遇を持つ人に限られる

長期的に服用している薬が

時間が経てば経つほど  

だんだんと効かなくなって来る

乱雑な
現実的要素

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水平線 《詩》

水平線 《詩》

「水平線」

果てしない偶然性が積み重なり
今が形成される

理論や整合的な説明は出来ない

全ては其の偶然性に支配されている

其れを必然と呼ぶのかもしれない

其処には
言葉に出来る何かは存在しない

言葉に出来ないものの中に
潜む自己規定

幾つかの街が通り過ぎ 

鏡の中にお前を見る

深い夜と静けさが永遠に続き

時を刻み命と死が交差する

誰にも
解き明かせない唯一が此処にある

俺と

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小さな炎 《詩》

小さな炎 《詩》

「小さな炎」

僕の足元に

寡黙な陽だまりを作り出す太陽

時間は更に緩やかに流れる

君は猫の様に

暗い穴を覗き込んでいる

其の先にあるものは

君の瞳にしか映らない

その暗い穴には

深い暗示が隠されていた

「今日死んでしまえば 明日は死なずにすむ」

君はそう言葉にして囁く

其処はいつまでも

君が居る場所じゃない

何度も君にそう呼び掛ける

僕等はきっと

何処かに行く事が出

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楽園へ続く道 《詩》

楽園へ続く道 《詩》

「楽園へ続く道」

終末を生き延びる為に

極端な仮説を立ち上げ

至福の王国への導きを説く教団

神の洗練を受け入れた人々

悪魔の手に堕ちた人々

楽園に続く道は此処にあり

天国と地獄の境目は
薄いベニヤ板で仕切られていた

僕の足音が聞こえますか?

貴方は神様ですか  

それとも悪魔ですか

其の場所には愛や
ロマンチックな幻想はありますか

青い海と白い砂浜 

穏やかな風に揺れる花

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邪悪な光 《詩》

邪悪な光 《詩》

「邪悪な光」

悲観的な色あいを帯びた幻想と

攻撃的な響きを持つ光が仄かに漂う

表に現れているのは 

ただの見せかけに過ぎない 

徹底された秘密主義 

歪んだ鏡が映し出す

恐ろしく執拗な性質を持つ陽の光

何かの始まりを意味するもの

もう全ての時が動き始めている

その光に恐怖し逃げ出した人々

次第に力を増す
その邪悪な光に眼を背けた

そして誰ひとりとして居なくなった

僕ひとり

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天国の鐘 《詩》

天国の鐘 《詩》

「天国の鐘」

真っ黒なマスカラを付けた夜

空に浮かんだ ふたつの月

人工的なアルミニウムで出来た星

メタリックなネオンの輝き

僕等の意識は
古い記憶の中を彷徨っていた

遠くで天国の鐘が鳴っている

ひとりでもいい 

心から誰かを愛する事が出来るなら

その人生には救いがある

全てが終わり 全てが始まる

待ちきれない夜がやって来る

不動の月 《詩》

不動の月 《詩》

「不動の月」

花一輪 

在りし日の君 

香る春

静かに添えた手のひら

暗黒の雲に覆われた夜空にさえ

音も無く浮かぶ不動の月

あやかしの時は遠去かり

あの日 夢見たふたりの旅

其処に咲いていた小さな花は

眠る事無く咲き続ける

夜更けに恋をし
君の名を呼ぶ

いつからか 

君の言葉の中に愛を探してる

月下の詩人と盲目の犬 《詩》

月下の詩人と盲目の犬 《詩》

「月下の詩人と盲目の犬」

大きな美質と

大きな欠陥が背中合わせに存在する

其処には見え透いた理論は無い

疑問を背負ったまま

僕等は今を歩き続けている

一匹の盲目の犬

何かに損なわれる事が無い様に

僕は其の犬を抱きしめていた

その失われた瞳を通して
彼はこの世界に現れる

そして彼の言葉が

僕の意識の領域に着地する

時間の歩みすら止まる気がした

ソメイヨシノが香る時

嘘しか

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春の風 《詩》

春の風 《詩》

「春の風」

行き場を失くした

憧憬と忘れられない約束

夢の中に見た言葉にならない気持ち

時間は記憶の中で絡まり合う

僕等の心に刻印された時は

決して消える事は無い

泣きたいのに無理して微笑む君の顔

愛とか希望とかそんな言葉より 
君に逢いたい

心の空にある虹の欠片に触れた

春の風 

君の匂いがした

愛の言葉 《詩》

愛の言葉 《詩》

「愛の言葉」

何処まで行っても現実は付いてくる

自分の影と同じ様に

風が闇を斬る音

其の風は

僕の知らない所からやって来て

僕の知らない所に向かい
吹き過ぎてゆく

忘れかけた愛の言葉 

海の様に広いベッド

其処には用途を失った

言葉が雑然と散らばる