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結婚相談所は反革命だ


誤解しないで

誤解しないでいただきたいが、私は「結婚相談所を使ってはいけません」と主張するつもりなどありません。あなたが結婚相談所で見つけた「お相手」にイチャモンをつけるつもりもありません。むしろあなたが喜んでいるのならば、祝福したい。

ただこの記事では、結婚相談所が流行している社会とは、どのような社会なのか、論じてみたい。ただそれだけです。
問題としたいのは、結婚相談所の利用者個人ではありません。「男運」「女運」がなく涙ばかり流してきたひと、人生に疲れた〈かよわき子羊ちゃん〉にとって、結婚相談所は大切な避難所なのでしょう。それはそれで理解できます。

まずは結論から


結論から言えば、
結婚相談所が繁盛する社会では、革命が起きることはない」。
結婚相談所とは反革命である。

それゆえ2024年の日本で、結婚相談所が流行しているのは当然のことなのです。
結婚相談所とその利用者は、社会の転覆を未然に防いでいる点で、警察から表彰されてもよいくらいです。

孤独と絶望と不安


第1に、結婚相談所は「自助(言い換えれば、孤独と絶望と不安)」の思想を社会から奪います。

孤独と絶望と不安は、革命を創造するための力の源泉です。
ひとりぼっちで戦う極限状態を通過することで獲得できるパースペクティブこそが、新しい時代を生む原動力になるのだし、自分自身を成長させるのだという確信、それを結婚相談所は奪います。

なぜなら結婚相談所は孤独なひとに救いの手をさしのべるから。そしてひとはまるで薬物に助けを求めるように、結婚相談所に頼るのでありましょう。

そもそも結婚相談所は「成長」ではなく、「成功」を重んじて「失敗」を否定します。
しかし、もしも「失敗」だけが人間を「成長」させるとしたら、どうでしょう。
成功を重視する思考様式は、未来に自分の視点を置いて、未来から現在を見て、未来の成功のために何をすればよいかを計算する思考様式です。

しかし革命家は今現在しなければならないと思うことをする。ただそれだけです。
今現在を見つめ、考え、行動を起こすとき、革命家は孤独です。ひとりでさまよい、悩み、決断するのです。たとえその後、同志が集まってくるとしても。

奇跡


第2に、結婚相談所は「奇跡は起こる」という信仰を社会から奪って、社会に諦観を普及します。
ここで私が言いたい「奇跡」とは、代わりのきかない、単独の、固有の出来事のことです。
自分にしかおくれない人生、オリジナリティある人生を生きることが、奇跡です。

そのような奇跡を、結婚相談所は否定します。
なぜなら結婚相談所は計算と比較の世界だから。
それはデーターベースの世界です。
テーブルのうえに複数の選択肢を並べることが可能な世界です。
つまり「Aさんでなければ、Bさん」という可能性を担保している世界なのです。
「あのひとしかいない、あのひとしか見えない」という世界とは違うのです。

結婚相談所と聞いて、前近代のナコウドを想起する人もいらっしゃるかもしれませんが、どうでしょうか。むしろ私はAIが各個人の人生を支配管理する近未来SF(例えばアニメ『サイコパス』)を想起します。
だから結婚相談所は、前近代的というだけでなく、ポストモダン的だという意味においても、反近代であり、それがゆえに反革命なのです。

奇跡を信じないとは、「暗闇に向かっての跳躍」に憧れないことです。
だから、やっぱり反革命なのです。

蛇足


僕は結婚相談所に登録したことがない。
それゆえ、もしも僕のような男性を見つけたければ、結婚相談所では見つからない。(ちなみにチェ・ゲバラも、結婚相談所に登録したことがない。たしかフランツ・ファノンも、登録したことがないはずだ。)

これまで僕をモノにできた女性たちは、少なくとも僕のハートをゲットした時点においては、失敗を恐れず、諦めを知らず、勇敢だった。
だから僕だって「落ちた」のだ。

もちろん僕のような男だけは配偶者にしたくないというならば、結婚相談所の利用は大いに検討に値するだろう。

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