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マグカップ #描写遊び

なぜだか、このマグカップが好きだ。

もう10年以上の付き合いになる。


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心が華やぐような絵柄があるわけでもなく、決して滑らかでも艷やかでもない。見た目は、強いて言うなら素朴。そして朴訥とした佇まい。

形だって、完全に正円ではなく、ほんの少し歪んでいる。

第一印象は、「なんとなく木肌に似ているな」だった。

このカップと出会ったのは第一子を身ごもった里帰り中。幼馴染が「せいこを連れて行きたい!」と案内してくれたカフェの陳列棚だった。

6歳からの付き合いの友人と話すうちに、大人という殻がガラガラと崩れ、私の直感的な部分がニョキッと顔をだしたのかもしれない。陳列棚に置かれたそのマグカップに、心がビビビッと反応した。

まるで、大地からとり出した土をそのままに、練り上げたようなその風格。じっと見ているうちに、どうしても触れてみたいような気持ちになった。

そっと手のひらでカップを包み込んでみる。不思議と殆ど重みを感じない。手触りは第一印象そのままに少しカサカサと、そしてひんやりとした触り心地はまるで木肌のようだ。

このマグカップを、ずっとそばに置きたいと思った。


日々の雑多なことに疲れて少しホッとしたいとき。わたしはこのマグカップにその日の気分で特別な飲み物を注ぐ。

口をそっとつけると、その感触は、これまで使ったことのあるどのマグカップとも違った。不思議な飲み心地が全身に伝わっていく。その時間が好きだ

こんなふうに、直感的にものと出会い、一緒に過ごす時間は幸せだなと思う。


そのマグカップは、今日も仕事机の前の窓辺にそっと置かれている。私と同じ風景をこのマグカップも一緒に見ているかもしれない。


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こちらは、Emikoさんの#描写遊びの企画に参加してみました♡

私にしては珍しく、だいたい500字の短め。楽しいです!


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