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美容部員を辞めた話

こんにちは、川口ちゃんです。

突然ですが皆様、美容部員という仕事はご存知ですか?ざっくり説明すると、百貨店やドラッグストアの化粧品コーナーに立っている、黒っぽい服を着た店員さんのことです。

もう何年も前のことですが、私は大学卒業後、新卒採用で某化粧品メーカーに就職し、美容部員として働いていました。

もともと化粧品オタクではありましたが、就活当初は全く違う業界を目指していたので、美容部員になるつもりは1ミリもありませんでした。ところが第一志望の業界での就活は難航し、順調に進んだのは一社のみでした。そんな頼みの綱であった会社も最終選考で落ちました。説明会、エントリーシート、面接、お祈りメール…就活が振り出しに戻った私は、これらをもう一度頑張らないといけないことに絶望しました。自力で再スタートする気力はなかったので、とりあえず大学の就活サポートセンターに行きました。

その際、掲示板に貼り出されていた美容部員の求人が目に入り、「説明会だけでも行ってみるか、メイク好きだし!」と軽い気持ちで会社説明会に参加したところ、ビビッと来てしまいました。就活中はいろんな業種の企業説明会に参加したものの、どの仕事もなんだかしっくり来なかったのですが、この仕事だけは自分が働く姿がリアルに想像できたのです。ありがたいことにスムーズに内定が決まり、とても嬉しかったのを覚えています。

でもあっという間につらくなり、2年半で辞めました。


その理由を話す前に、大切なことなので予め断っておきますが、この記事はあまちゃんであった私の超主観的思い出話であって、美容部員の仕事を批判するために書いたわけではありません。なんなら、今再就職したらもっと売り上げとってやるぞ、くらいに思っています。まあ、絶対嫌なんですけどね!!

そしてこの文章における美容部員とは、あくまでも私が勤めていた会社の、さらにその当時の美容部員のことを指しますので、ここに書いたものが地球上全人類すべての美容部員に共通だとは思わないでほしいです。同じ美容部員という仕事でも、会社が違えば仕事内容は異なりますし、同じ会社でもリーダーが変われば方針がガラッと変わることもありますので。その辺り、どうぞよろしくお願いします。


カウンセリングがしたかった


さてさて、辞めた原因ですが、制服がダサいとか(10代〜60代が同じデザインを着るので若い人ほど似合わない)、サービス業なので休みが不規則で辛いとか、チーフの説教が理不尽すぎるとか初任給がめちゃくちゃ低いとか(これは本当にどうにかしてほしいです)、こまか~く不満を挙げはじめたらキリがありませんが、断トツ1位は志望理由でもあった仕事内容です。先ほど、自分が働く姿が想像できたからこの仕事に決めたと書きましたが、その仕事の認識自体がそもそも間違っていたのでした。

実際に就職するまで、私は美容部員の仕事をお客様の悩みを聞いて、その人に合った商品を提案して、美しくなるお手伝いをすることだと思っていました。正しいといえば正しいのですが、実際は微妙にニュアンスが違いました。当時この仕事について受けた説明で、わかりやすくて印象的だったものがこちらです。


「売るべきものはもう決まっている。
必要かどうかはお客様が決める。
私たちはただ商品の良さをお伝えするだけ。」 by当時の上司


つまり、お客様に合った商品を提案するのではなく、売ると決められた商品を、お客様に「自分に合っている」と感じさせるのが実際の仕事内容だったのです。

肩書きはビューティアドバイザーやビューティカウンセラー、ビューティコンサルタント等いろいろある世界ですが、やるべきことはばりばりの営業なんです。

カウンセラーとして、お客様の悩みをよく聞いて原因を探り、一緒に解決方法を探して、ぴったりの商品を提案をするぞ!と意気込んで入社したものの、実際すべきことは、それとなーく、さりげなーく、売りたい商品の紹介に繋がるキーワード(例えば保湿クリームを売りたい場合は、乾燥が気になるのよね〜等)を引き出す誘導尋問みたいなカウンセリング型営業トークでした。…なんか思ってたんとちがう!!

毎月行われる研修会では「どういう人にはどんな商品が合うか」よりも「今月この商品をあらゆるお客様に(必要としていないお客様にも)売るにはなんと言えば良いか」を中心に学びました。

会社が売ってほしいのは、新商品や季節商品だけではありません。高級クリームなどの単価の高い商品は、一年を通して意識的に販売をするように指示されていました。1日でも早く底見えしてもらうように、季節に合わせた様々な使い方の提案もあらかじめ用意されていました。

ですが、肌質は人それぞれですし、季節や年齢によっても変動しますから、接客した全員に同じ商品を紹介するなんて無理があると私は感じていました。

でも会社としては、ひとつでも多く売ってほしいわけですから、そんな意見を許してはくれません。美容部員は全人類に商品の魅力を伝えて自社の顧客にすることが使命であるとされ、とにかく紹介!全員に紹介!!と指示されます。たとえお客様が特別悩みがない天性の美肌の持ち主でも、美容液なんてまだいらないピチピチお肌の10代でも、エビでもカニでもおすすめします(冗談です、いくらピチピチでも魚介類には紹介しません)。私は、やりたかったことと真逆の【全てのお客様に同じ商品を売り、それをしないことは仕事放棄とみなされる職業】に就いてしまったのでした。

とはいえ、こういった仕事内容が悪いわけではなく、むしろ販売員として組織に勤める限り当然のことです。よく考えればわかることなのですが、学生の頃の私はその辺りの感覚が大変ふわふわしていました。世間知らずのお子様というやつです。企業に入ってサラリーマンとして働くということの意味が根本的にわかっておらず、理想と現実のギャップに苦しみました。

そもそも企業説明会の時点で、そういう仕事内容だとして説明してくれたら、私みたいな人は応募しませんし、逆に営業トークが得意な人が入社して、売り上げもどんどん上がるのでは?!なんて思いますが、そんなこと言わなくてもわかっているのが前提なのか、もしくは未来のお客さんでもある大学生達にそんな手の内みたいなものは言えないのかもしれません。


脅したくない


全員に紹介するという方針だけでなく、その際の接客にも納得できないものがありました。それはお客様を脅すような接客です。
例えば、研修会で春夏の主力商品である日焼け止めについての接客事例を共有していたときのことです。ある先輩は「毎日ゴミ出しや洗濯干しのとき、顔と首に加えて手の甲だけでも塗って下さい。でないと数年後シミができます。手の甲のシミは目立ちますから、会話中など、口元に手を持って行った時、相手の視線が気になるようになりますよ。」と伝えるとよく売れると言っていました。

私は、美容はポジティブな行為であるべきだと考えています。確かに肌を老化させないためには日焼け止めは欠かせませんが、購入に繋がるからといって、こんな風に恐怖心を煽って買う気にさせるやり方は嫌だなと感じました。シミを気にしている人がもしこんなことを耳にしたら落ち込みますよね。というかそもそもシミだらけとか、たるたるシワシワになった手の甲のどこがいけないのでしょうか。そういう人を見て、「やだ!この人ちゃんとケアしてないんだ。老けて見える。私はちゃんと日焼け止めを塗っているからこうはならないぞ、うふふ。」なんて思う人が果たして美しいのでしょうか。シミは体質もあるので、どんなに気をつけていてもできる人はできます。加齢でも出来ます。老いていくことを避けられる人は一人もいません。生きていればみんなご老人になるんです。そういう部分に恐怖心を与える接客は良くないと思います。

情けないことに、私は新人でしたし特別良い成績を残しているわけではなかったので、その場では黙って聞いていることしかできませんでしたが、実際店頭で自分が接客する時は前向きな伝え方をするように意識していました。


このように、美容部員の仕事は想像していたものとはかなり違いましたが、ある程度割り切って、研修後半年くらいは前向きに取り組んでいました。それは、営業トークをしつつも、根底に自分はお客様の美しさのために正しいことをしているという気持ちがあったからです。

しかし、自分の肌を綺麗にするため奮闘する過程で、その気持ちが徐々に揺らいでいきます。


美肌を手に入れて、愛社精神を失う


特にこの仕事に拒否反応が出るようになったのは、肌について会社から教わるのとは別に自分で勉強を始めてからです。

私は14歳からニキビに悩まされていました。皮膚科に通っても変化なし、思春期が過ぎて大人になっても全く治らず、入社当時もなぜ受かったのか不思議なくらいニキビだらけでした。
私自身は毎日のことで見慣れてしまい、気にしていなかったのですが、研修中はすっぴんになる機会が多く、また肌トラブルについても勉強するので、自然と自分の肌荒れの重傷具合を自覚させられました。

「肌が荒れている人がスキンケアを紹介しても説得力に欠けるんだからお手入れしっかりやってね」という上司の言葉がプレッシャーでした。ニキビについて専門的な知識も教わったので、これを機に本格的に肌荒れを治そうと思いました。

新入社員研修中は、店頭でお客様に使用感を具体的に説明できるようにするため自社製品を借りることができたので、日を分けて何種類も持ち帰り、ニキビができにくい商品を探しました。ニキビを克服して、同じ悩みを持つお客様と出会ったときにおすすめできるようにしたい、それを自分の接客の強みにしたいと考えて頑張りました。

ここまでは意欲的な新入社員という感じで良かったのですが、習った通りにスキンケアを変えても、どうも良い変化がなく、おかしいなと思い始めました。

ちゃんとやっているのに、どうして治らないのだろう。先輩のアドバイス通りに、少ないお給料で高い美容液を買って朝晩使っているのに。こんなに頑張っているのに、ニキビがあるだけでどうしてお手入れをサボっていると判断されるのだろう。どうして長年美容部員をやっている先輩でも明確な答えがわからないんだろう…。

スキンケアにかける気持ちやお金と改善具合が全く比例せず、頑張れば頑張るほど私の心はどんよりし、高機能だと研修で教わった自社製品への期待や信頼は薄れていきました。

どうしても美肌になりたかった私は、このまま自社製品を使い続けるのでは事態は変わらないと判断し、メーカーの垣根を超えて商品を試すようになりました。また、独学で美容成分や肌の仕組みなどを勉強するようにもなりました。美容に関する本を片っ端からチェックして、良さそうなものは買って内容を実践したり、相反する意見のものがあったら両方読んで主張を比較したりしました。コルギなどのマッサージ系もやりましたし、ゴリゴリ保湿系や反対の肌断食も試しました。

当時はさまざまな美容法に手を出していたので、お客様には自社製品をオススメするものの自分自身は全然違うスキンケアをしているという状態でした。先輩との会話の中で自社製品を使っていないことがバレると怒られましたが、それに従ったからといって美肌になれなかった私は、口では謝りましたがその実験をやめませんでした。

会社には秘密でトライアンドエラーを繰り返して約一年半、具体的な話は長くなるので省きますが、自分にベストな方法が見つかり、荒れまくっていた私の肌は劇的に美しくなりました。ニキビ跡まで消えたわけではありませんでしたが、新たなニキビができなくなり、10年ぶりくらいに顔にニキビがひとつもないという日が到来しました。調子が良い時の肌はまるで綾瀬はるかさんのような透明感がありました。自分の顔からニキビというノイズが消えるとこんなにも心晴れやかになるのかと鏡を見る度に感動していました。ビフォーアフターの写真が入っていたスマホがご臨終してしまい、残念ながら見せられる証拠がないのですが温かい心で信じてほしいです。上司にも随分肌が綺麗になったと褒められました。ちなみに表向きには自社の美容液のおかげということにしていました。

しかし、めでたしめでたしとはいきませんでした。自分の肌が美しくなる方法がわかるということは、同時に、使っても効果がない商品もハッキリするということです。あくまでも私にとってなのですが、日々お客様に紹介するべき自社製品たちも、効果なしの商品に該当しました。

そもそも、基本的に市販のスキンケア程度では私レベルのニキビを治すことはできないですし、それは自分でも経験上わかってはいたのですが、研修中に「肌悩みは全て自社製品で対応できます!」くらいの勢いで教育されていた私は、期待した分、余計に裏切られた気持ちになりました。そしてこの頃には、自社製品だけでなく基礎化粧品というカテゴリ自体への信頼がほぼゼロになっていました。


被害者意識で過激派になる


それからというもの、綺麗になってゆく肌とは裏腹に精神はどんどん荒れていきました。美容の情報収集は続けていたのですが、基礎化粧品否定派の意見ばかりが目に入ってきてはそれに共感して…ということを繰り返して私の美容における思考は偏り、過激になっていきました。

お恥ずかしい話ですが、当時はちょっと独学で勉強したくらいなのに、肌の仕組みや化粧品の成分のことを大体理解した気になっていて、基礎化粧品なんて無力で、わざわざ買って塗る意味なんて無いと思っていました。それどころか基礎化粧品は、そしてこの会社は、肌荒れに悩む消費者を騙す悪なのだとさえ思っていました。

新商品の広告を見れば、価値のなさを覆い隠すための過剰なプロモーションだと感じましたし、研修で「この効果はパンフレットなどに文字として載せるのは法律的にはアウトだけど、口頭ならセーフだからそう言って紹介して」と指導する上司のことは、売り上げのためなら詐欺じみたことを言わせる酷い人だと思っていました。

実際は全ての基礎化粧品が効果ないとか、広告以下の実力というわけではありません。一部そういう商品もあるのが現実ですが。ただ私が勤めていた会社は怪しいところではありませんから、大変能力の高い方々が研究、企画、マーケティング、デザイン等々それぞれ真剣に取り組んで、そうしてやっと商品を世に出しているはずです。それらに価値が無いなんてことはまずありません。また、日本は化粧品の安全性には厳しいので、実際は効果があるのに法律上表示できないという化粧品は多いようです。上司の発言も、嘘を付けと言っていたのではなく、薬機法の複雑な事情があってのことだったと思います、多分。そうだと思いたい。今は美容部員を辞めて心に余裕があるため冷静にこう思えるようになりました。商品開発のため日々奮闘されている皆様、当時はぼろくそ言ってすみませんでした。


自分の価値観を切り離せない


たとえ私の肌には何の効果もない商品でも、愛用者はたくさんいるわけで、売れと言われたものを無心で売っていればよかったのですが、私は性格上、自分の価値観とお客様の価値観を切り離して考えることが苦手でした。相手が良ければそれでいいができなかったのです。

ただでさえカウンセリングとは名ばかりの仕事内容に共感できないのに、使いたいと思えない商品を、本心を殺して、自分の顔と名前を使って笑顔で紹介しなければいけない毎日がつらかったです。

私の主義には合わないけれど基礎化粧品だけで肌の治安を保てているお客様ならまだしも、私みたいにそれらではトラブルを解決できないと思われる方たちにも、自社商品を紹介しなければならないということが特に苦痛でした。悩みをなんとかしたくてわざわざ相談に来て下さる方たちに対して嘘をついている気持ちになったからです。私の言葉を信じて購入してくれる方や、私がいる日に買い物に来てくださる方がいること。本来ならば喜ぶべきことなのですが、本当につらかったです。

それに、過激派思考を抜きにしても、歴代の先輩方がお客様に「スキンケアはフルラインで使うのがベスト」だと伝え続けた結果誕生した、ケア方法にツッコミどころの多い常連さんの接客は以前から苦痛でした。例えば摩擦で肌理が消えているのに毎月拭き取り化粧水を買っていく方や、軽いベースメイクなのにオイルクレンジングと洗顔料、時にはスクラブまでして、当然乾燥するので最後にこってりクリームを塗る方など。「もう何も拭き取らないでください。」「それミルククレンジングに変えたら他はいらないと思います。」こう言いたい気持ちをぐっと堪えていました。

さすがに欲しいと言われた商品を否定することはしません。そんなことをしてしまったら当然クレームが来ますし、売り上げも下がります。それだけではなく、お客様に粘り強く商品を紹介し続け、購入に繋げた先輩方の努力が水の泡になります。先輩とお客様の間で、長い年月をかけて築きあげられたスキンケアルーティンにたかだか入社2年目くらいの新入社員が意見するというのは、両者の信頼関係を壊すことであり、とてもできませんでした。先輩はきっちり仕事をしているだけで、お客様は納得したものを買っているだけです。何も問題無いのに、私は何かにがんじがらめにされたような窮屈さを感じていました。いっそポイントメイクだけ売ってくれればいいのに!といつも思っていました。


自分を見つめなおした結果、退社を決意


モヤモヤぐるぐる渦巻いていた気持ちは、先輩方の仕事を否定することになるので会社の人には相談できませんでしたが、一方で関係のない親や友人の前では常に仕事の不満ばかり言っていました。その時の私は研修中に上司から「負のオーラが出ている」といわれたほど暗くなっていました。積極的に商品紹介ができないので売り上げも伸び悩み、当然それを指摘されるので余計に辛くなりました。かつての、やる気に満ち溢れたフレッシュな新入社員の私は見る影もありませんでした。

自分なりの正義を貫いていると思っていた私ですが、客観的に見ると、言われた仕事をちゃんとできない、それに加えて会社を批判して愚痴りまくる、そのくせ辞めることはせずにお給料はしっかりもらっているという、いわば厄介なお給料泥棒でした。そのことに気がつけたのは、ある日母から以前より声が大きくなり、口調もきつくなったと言われたからでした。毎日愚痴を言いすぎたのでしょうか。自覚が全く無かったので、いつのまにか日頃からこうはなりたくないと思っていた、周りを不快にするネガティブな人に変わっていたことにショックを受け、自分を見つめ直しました。

それに体も限界でした。ぺたんこ靴やローヒールは規則で履けなかったので、毎日かかとの高いパンプスで立ち仕事をしていました。それなりの品質のものを履いていましたが、巻き爪になり親指は常に少し腫れていて、触れるたびに痛みました。足の裏は皮膚が破れてズタズタで、イベントなどで立ちっぱなしだった日の帰り道は、通勤用に持ってきたフラットシューズに履き替えてもなお、焼けるような痛みで長く歩けず、お腹がすいて早く帰りたいのに駅のベンチでずっと座っていたこともありました。

疲れているため帰宅後しばらくすると眠気で意識が飛んでしまい、深夜1時頃にハッと目が覚め、お風呂を済ませて3時頃に寝るという不規則な生活をしていました。そのため朝は眠くて、支度を済ませて3分でも時間が余れば横になって眠っていました。仕事中も眠気は収まらず、メイクを隠してしまうマスクは禁止だったため、しょっちゅうカウンターの下にしゃがんであくびをしながら、とりあえず30分間を乗り切ることを退勤時間まで何度も繰り返しました。研修のテキストに載っている、いつも笑顔で姿勢正しくシャンとしている美容部員のイラストとは程遠い勤務態度でした。

入社当初は転職なんてするつもりは全くありませんでしたが、今の暗い自分のまま定年まで40年近くここで働き続けたら、私はきっと後悔するだろうと思い退社を決めました。

そもそも次の就職先を探していませんでしたし(そんな気力は残っていなかった)、時間をかけて教育して頂いたのにも関わらず、わずか2年半で退職するという意思をお世話になった上司に伝える時も、引き留めて下さる方々を振り切る時も、とても勇気がいりましたが、一刻も早くこの環境から脱するべきだと思い、頑張りました。新たな一歩を踏み出そうとする私を励ましてくれた当時の先輩方にはとても感謝しています。



おまけ:美容部員は飛び込み営業?


これは私がいた会社だけかもしれませんし、辞めた理由の本筋とはズレるのですが、相当なストレスだったのは間違いないので書いておきます。

美容部員は営業である!と書きましたが、こんなの実質飛び込み営業でしょ!ってこともやらなければなりませんでした。

私は就活の時に意識的に避けていた仕事がありました。それが飛び込み営業です。ノルマや押し売りのイメージが強くて嫌でしたし、セールスお断りをど~んと玄関に貼っている家で育ったので、人から煙たがられるこの仕事だけは絶対にやりたくありませんでした。

美容部員という職業にもノルマがすごいというイメージを持っていた私は面接の時に質問しました。はっきりとは覚えていませんが、無茶なノルマや厳しいペナルティは無く、全体の目標はあるがこれもお客様ひとりひとりにしっかりカウンセリングしていけば達成できるくらいの無理のないものである、というニュアンスの返答が返ってきたと思います。

私はこれを聞いて、じゃあ大丈夫か〜!なんて安易に納得してしまいました。ちなみにその「カウンセリング」のニュアンスが…先ほど触れたように、私はきちんとお客様に合った商品を提案していけば売り上げが積み重なって目標達成!と受け取ったのですが、会社が言っていたのは、売ると決まった商品をしっかり全員に紹介していけば目標に到達するということだったわけです。

理屈ではそうなのかもしれませんし、実際に重視される目標は売上金額でなくて接客人数でしたが、問題はお客様自体が来なかったことでした。

化粧品カウンターは店舗によっては本当にお客様が来ません。私が一時期配属されていたお店なんて、天気が悪い日は待てど暮らせど誰も来ませんでした。雨天で建物自体にお客様が少ないのです。そういう時は、自分でお客様を捕まえに行かねばなりませんでした。飛び込み営業個人バージョンです。

この活動で会社から褒められていたのは、野菜売り場まで行ってお客様を捕まえてくる社員でした。その話を聞いた私は正直引きました。もし自分が買い物していて、右脳で累計金額を計算、左脳で1番新鮮なきゅうりを選んでいるときに美容部員に声をかけられたら本当に嫌です。ここでも当然、自分は自分、他人は他人ができませんから、声をかけた相手にきっと迷惑がられているんだろうなと思って気が引けてしまい、捗りませんでした。

毎年クリスマスにはコンビニ各社がチキンやケーキを売るために大声で呼び込みをしていますが、あれですら基本的に店の前でやっています。化粧品コーナーにいない人にまで話しかけるのは、私は迷惑だと思います。こっちが出向かなくても、お客さんが買いに来てくれるような商品を開発してくださいよ~と思っていました。

美容部員経験なくして今の幸せはない


完全★ノープランで退職しましたが、転職活動をはじめてわりとすぐに良いご縁があって、今は全く異なる業界、業種で働いています。美容部員時代に不満だった条件を全て解消してくれる仕事に出会えたので、現在心身共に健康です。今でも自分がしていたような接客方法に否定的なのは変わりませんが、もう無関係なのでどうでもいいです。業界の改善なんて願ってはおりません。ただただ無関心。

友人の間では私=美容部員というイメージが強いのか、辞めた今でもたまにスキンケアについて相談してくれることがあるのですが、言いたいことが言えるのって最高だな~と思います。

こうして今が幸せと思えるのも美容部員を経験したからだと、綺麗事ではなく心から思います。当時は本当にしんどかったですが、働くうえで自分にとって譲れないものは何かを知ることができ、より自分に合った環境に移ることができました。なくてはならない経験だったと感じます。


長々と書いてしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。それではまた〜。


信じないことが信条🍤