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沿線民の京急ダイヤ改正評

「沿線民の京急ダイヤ改正評が読みたい」と言われたので、書くことにしたのだが、ダイヤ改正というのはお客さんが慣れてこないと効果が見えないため、現時点では発表された時刻表を見ながらの分析に留まる事をお断りしておく。また特記がない限り「日中パターン」の話である。

なお公式発表に対する解説はタビリスで大体書かれているため、そっちを見たほうが早い。



要するに減便

公式からの説明が回りくどいが、今回の京急ダイヤ改正は「減便」「削減」である。

特に

・金沢文庫~京急蒲田のエアポート急行が半減(10分に1本→20分に1本へ)

これが大きく、減らす分の辻褄合わせをするため、他の部分が大きく弄られた格好になっている。

エアポート急行は上大岡で待避しないで、という派閥(上大岡駅)

混んでない電車に乗るのは難しくなる

これは本数が減らされたので、どうしようもない。
今までのエアポート急行は6両どころか8両繋いでる事も多く、快特より明らかに空いていた。ので今回削減されてしまった。
改正後のダイヤでは、エアポート急行の位置付けが「停車駅数の差で間隔が開く、特急と快特の補完」に変わっており、以前のように空いた状態が続くのかは、人の流れを見ないと分からない。
まぁ「普通」の本数は変わってないので、いくら時間かかってもいいなら「普通」に乗ればいいのだが・・・

逗子線に6両ないし8両を次々送り込まれても、乗る人はそこまでいない(逗子・葉山駅)

有効本数で見ればダメージは最小

「目の前に来る電車が、全て使えるとは限らない」と言われてピンと来る人は少ないのかもしれない。
例示した方が早そうだ

上大岡~井土ヶ谷~横浜近辺の路線図

例えば「井土ヶ谷駅の上り電車」の「パターン」は、今回のダイヤ改正でこう変わっている。

【従来】
●時02分発 エアポート急行/羽田空港
●時06分発 普通/品川(南太田でエアポート急行通過待ち)
●時12分発 エアポート急行/羽田空港
●時16分発 普通/品川(南太田でエアポート急行通過待ち)
※以降繰り返し

【改正後】
●時01分発 エアポート急行/羽田空港
●時03分発 普通/品川
●時12分発 普通/品川
※以降繰り返し 

見ての通り、本数が減らされている。
しかし従来のダイヤでは「普通」に乗っても南太田で通過待ちをするため、あとに来る「エアポート急行」より遅くなり使い物にならなかった。

改正後のダイヤでは、「普通」が南太田で「エアポート急行」を待たないようになり、どの電車を使っても、横浜へ出るのに使える。

つまり「有効本数が毎時6本から毎時9本に増えた」という事になる。
とはいえ「普通」は南太田で特急等の通過待ちをするので、時間が余計にかかるのであった。

※「パターン」の話なので例外は幾らでもあります

快特とエアポート急行の「急急接続」(上大岡駅)


エアポート急行の2分後に普通が来るようなダイヤ(日ノ出町駅/上り)

今までのダイヤで歪んでいた点

これは「空港線各駅に、逗子行きしか来ない」事だろう。
羽田空港から発車する都心方面の電車が「パターン」の中では全て快特で、天空橋~糀谷の各駅には停まらなかった。
停まるのは横浜・逗子方面へ向かうエアポート急行のみ。
都内なのに逗子線と化していたのである。今回はこれも一定程度解消された。

天空橋駅の近くには最近、商業施設が誕生しており、この集客を睨んだ設定もあるかもしれない。

知らぬ間にリニューアルしてた天空橋駅の改札

これからのダイヤで歪んている点

羽田空港からの「快特」が「特急」になったものの、平和島駅等の時刻表を見れば分かるように
「特急が5分後に来たと思ったら、15分後まで来ない」ような変な間隔である。
「10分おきに来てよ!」は率直な感想である。

しかし「横須賀からの特急」「横須賀からの快特」をできる限り10分間隔に近づけた上で「羽田からの特急」「羽田からの快特(エアポート快特)」を入れれば、どう組み合わせても歪んでしまうのである。
今まで全部快特で無視されていた問題が表面化した格好と言える。

これに関しては「2方面からの要求に欲張って答える」限りは解決しないだろう。
むずかしい問題である。

快特12本に普通6本って、冷静に考えると偏りがすごかった(品川駅)


青物横丁の時刻表とかこんな状態だったんですよ(青物横丁駅)

完璧な先祖還りではない

「23年ぶりの大幅ダイヤ改正」とは、23年前の運行パターンに戻ると捉えられても不思議はない。
実際の所、昼間にバンバン「特急」が走るようになったので、それは正解である。

しかし相違点も多い。
そもそも昔あった「急行」と今の「エアポート急行」は停車駅もぜんぜん違うし、昔の「急行」は逗子方面~羽田空港を結ぶものではなかった。
さらに「普通」のダイヤの組み方も大きく変わっており、昔はラッシュ時以外あまり使ってなかった南太田の通過待ちなど、今回のダイヤでは頻繁に使っている。

語るとキリがないので「見かけは先祖返りだけど、細かい所は昔と違う」ことだけ覚えておいて欲しい。

いうほど変わってない?

「大幅ダイヤ改正」と言っても、よく見ると以前と大して変わってない所がある。イメージにすると以下の通り。

大雑把な改正イメージ

今まで通り「横須賀方面は快特だらけ」の時間帯が所々に残っている。
電車の運用や乗務員繰りなど、一回で全て作り変えるのは無理という事だろう。
ので、今後のダイヤ改正でこうした「残った箇所」が少しずつ修正される可能性は大いにある。

そして「変わった箇所」と「変わらない箇所」の繋ぎ目にかなり苦慮の後が垣間見える。

パッと見で面白いのは「逗子からのエアポート急行神奈川新町行き」ができてる所である。全くおかしな列車である。

そもそも人の流れは?

東急・小田急・京王・西武・東武など、在京の大手私鉄が「都心へ向けてどんどん人が乗ってくる」状況なのに対して、京急は「横浜を境に利用状況が変化」する事が知られている。
要は、三浦半島から見た時、都心まで出なくても用事が済んでしまうのである。あるいは山手線沿いでの目的地も渋谷や新宿であれば、横浜から東横線へ流れてしまう動きもある。

(品川は昭和の終わりまで線路だらけの地で、オフィス街や新幹線駅が出来たのは最近の話。目的地としては新宿等に比べて相変わらず弱いと言わざるを得ない)
※なお京成も、船橋を境に利用状況が変化する事が知られている。

ので、ネットで言われてるように「品川までの所要時間がもっと増える!」と言われても「品川まで乗らんしな・・・」となってしまう。前提として、朝のラッシュは昔から京浜東北線とバトルするような遅さである。

おわりに

最後に、京急のダイヤで永らく変わっていないものを2点上げる。
これらに変更が加えられる時こそ、とんでもないダイヤ改正という事になろう。

・「特急」の停車駅
都営浅草線に直通が始まった際「青物横丁」が停車駅に追加されている。
1967年の話なので、55年間変化がない事となる。

・「普通」10分ヘッド
本線(品川~浦賀)の各駅に、最低でも1時間に6本「普通」が来るようなダイヤという事である。
1948年に大東急から分離した時点で既に「10分ヘッド」の文字が見えるため[注]、最低でも75年間変化がない事となる。
(これ以前は不明なので、実際の所、いつからこの状態なのかは・・・)

[注]京急ダイヤの歴史(高野)22p 年表



一「蒲田ダッシュ」と呼ばれた京急蒲田~品川の区間普通も消えて久しい(京急蒲田駅)


(追記)2000円くらいなら出すので京急電車時刻表、紙版で売ってくれませんかね?

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