見出し画像

部下の人々がすごい良い製品を作っていたので、もう少し旅を続けることにした



 前回までの北東北の旅の目的は、木材を活用している過程を自分の目で確認しておこうということだった。しかし、旅の終わりの頃には、この製品の本質はそこではなく、木材と金属が融合していることだと確信した。今頃気づいたのか。

 北東北で伐採、製材された木材は確かに素晴らしいが、それだけではオフィス用の家具にはなり得ない。造作家具的なものはたくさんあるだろうが、家庭用の家具と違い、不特定多数の人が道具として使うオフィス家具においては、木の柔らかさは弱点になってしまう。何でもかんでも最強強度を目指すオフィス家具の品質追求もどうかとは思うが、ここ10年くらいで木製品が増えたとはいえ、強度、剛性、硬度などの性能はスチールやプラスティックに勝ろうはずがない。木材だけでは如何にテクスチュアに優れていても特定の顧客へのスペシャルな場合を除いては売り物になりにくいのだ。

 そんな木製家具の弱点を補う設計が今回の製品では施されている。天板の厚みの中に強度部材としてのアルミのハニカムコアと枠組みを組み込むんでいるのである。これによって強力な芯材が形成され、かつ分割して組み立てるときの引っ張りに耐える強度を備えた。しかも最表面に貼った厚突単板と一緒にNCで削ったり穴を開けたりのマシニングを行うので接合面の精度がすこぶる高い。ピタッとくっついてまるで一枚の無垢材に見える。

 北東北から帰ると、アルミハニカムの工場へのアポイントをお願いした。木材と金属が融合する、これこそがこの製品の本質だと遅ればせながら気づいたからだ。木材を使ってますよアピールで終わらせるととんでもなくアンバランスな情報発信になってしまう。

 日程を無理やり空けてもらい、下呂温泉まで旅立つことにした。私の記憶が間違ってなければ、かなり行きにくい地域だ。時間の余裕を持って動かないと日帰りで行けなくなってしまう。しかも、展示会用にオーダーしている当該製品の納期は逼迫しており、下手に時間調整をお願いすると納品が間に合わなくなってしまう。本末転倒だ。移動時間を綿密に調べ電車を特定していった。

 と、準備が整ったところで家族が発熱した。結果的に陰性で合ったが、自分の検査結果が出るまで自宅待機になった。そして旅に出る日はちょうどその日に当たった。

 これがコロナの世界の現実だ。

 代打の人が撮影に行ってくれることになった。脚本、撮影、演出、編集を一人で行うからこそ成り立つテキトーな動画制作は、この瞬間一人歩きを始めた。果たして編集だけで制作できるのか?

 充分な撮影素材を持って帰ってきてもらい、レクチュアを受けて時間はかかったが、なんとかアップできた。それほど違和感ないのではないか。そして、マシニングの迫力を見る限り、やはりこの回はこの製品の本質を語るキーになっていると確信した。きっと何年か後に、自分で行かなかったことをすっかり忘れて、見てきたかのように話していることだろう。


 明後日から、この製品が展示される展示会が始まる。始まるまでにもう何本か動画を公開できていればカッコよかったが、追いつかなかった。片手間仕事のダメなところだが、無理はしない。



木とアルミ、異なる物質が出合いヒトと機械によって一体化していく。長く使われる道具になるため強靭で美しい姿に磨き上げられる。緻密な計算、細心の注意、素材の尊重。機能を埋め込んでいきながらも精度を追求することで驚きの美が露わになる。誰も見たことのない中身!

00:00 これまでの「源流の旅」は
00:24 下呂温泉についた
01:13 枠組み 誰も見たことのない中身
02:24 トリミング・穴あけ
04:00 ピターっと隙間なし
04:35 旅行記

#silta
#シルタ
#国産材活用
#東北森林
#アルミ
#下呂温泉
#アルミ
#テーブル
#イトーキ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?