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チェイサーゲームW…Wishful thinking


以前、Xに投稿した… カフェを舞台にした私の妄想視点での小説をこちらにまとめてみましたφ(.. )

✳︎少しだけ加筆修正しました。


「店長、クローズ作業 終わりました!」

「ありがとう、いつも最後まで助かるよ!あっ、樹ちゃん、これ…冬雨ちゃんと食べて〜」

「えっ…良いんですか?いつも、ありがとうございます!」

「ほら、冬雨ちゃんが…待ちくたびれてるよ?笑」

「、、えっ?あっ…」

カウンターから樹ちゃんとフロアに目線を向けると、さっきまで仕事の資料と睨めっこをしていた冬雨ちゃんがうとうとし始めていた。

「ふゆ、、冬雨…?」

「…あっ、樹、、終わったの?」

「うん、帰ろ?」

「うん」

冬雨ちゃんに優しく声をかけた樹ちゃんは、さっき手渡したケーキを嬉しそうに冬雨ちゃんに見せている。

二人のやり取りをカウンターから眺めていると、立ち上がった冬雨ちゃんがこちらに顔を向けた。

「店長、これ…ありがとうございました」

「冬雨ちゃんを待たせたお詫びだよ!笑」

「樹を待つのは…苦になりませんから」

「、、、笑」

樹ちゃんと冬雨ちゃんの相思相愛っぷりを見せ付けられるのはいつもの事で…笑

「それじゃ店長、お先に失礼します」

「二人とも、お疲れ様〜!」

店の扉に向かって歩きながら自然と肩を寄せ合い並んで歩く背中が幸せそうで、こちらまでポカポカと暖かい気持ちが広がる。

思い返せば、二人が初めてこの店に来店してから…随分と長い年月が過ぎた。

最初に来店してくれた時は、樹ちゃんがまだ大学生の頃だったかな。

初めは何度か1人で来店してくれる姿を見かける様になって、いつも1人静かに読書に集中している姿がとても印象的だった。

高身長の美人さんで、優しいオーラを纏う樹ちゃんは店内でも結構目立つ存在だったけど、当の本人は全く周りの様子など気にしていない感じで。

それから、初めて冬雨ちゃんを連れて二人で来店してくれた時のことはよく覚えている。

樹ちゃんと雰囲気は違えど、冬雨ちゃんは冬雨ちゃんですっごく美人さんだから、そんな容姿端麗な二人に店内がざわついちゃって…笑

そこからは二人で来店してくれることが増えて、二人のお気に入りのメニューが「いちごパフェ」だってことまで把握する様になって。

初めは「仲が良い友達かな?」って思ってたけど、冬雨ちゃんがいちごパフェを食べる姿を愛おしそうに見つめる樹ちゃんの姿を見て「あっ…恋人同士なんだ」って気付いて。

お揃いのネックレスにイヤリング…いつも二人は幸せそうで、そんな二人が来店してくれる度…こちらまで幸せのお裾分けを貰った様な気持ちになって。

でも、そこから数年が過ぎた頃…二人の姿を全く見かけなくなってしまった。

二人とも大学生だったから、ここから離れた場所にでも就職しちゃったのかな?なんて…勝手に想像していた時、本当に久しぶりに樹ちゃんが1人でお店に来てくれて。

二人でよく座っていたいつもの席に案内すると、一瞬…樹ちゃんが辛そうな表情をした様にも見え…少し気になったけど、いつも通りいちごパフェを注文してからは以前の様に1人静かに本を読んでいたな。

それからは、頻度は減ったものの…

樹ちゃんは定期的に来店してくれていたけど、冬雨ちゃんの姿を見かけることはなかった。


「店長、佐藤さんって…樹のこと、、、」

珍しく冬雨ちゃんから話しかけて来たと思ったら、冬雨ちゃんの目線はカウンターの中へ。

(なるほどね…)

どうやら冬雨ちゃんは、カウンターの中で新人の佐藤さんにパフェの作り方をレクチャーしている樹ちゃんの姿がお気に召さないらしい…笑

「いや〜、そんなことは、ないと思うよ!」

「、、樹…みんなに優しいから、、、」

「そうだね、はぁはぁっ!はぁはぁ!!」

変な笑い方になっちゃったけど…冬雨ちゃん、結構…鋭いからな。

実際、樹ちゃんがお店で働く様になってからは、樹ちゃん目当てで来店するお客さんがいないかと言えば嘘になるけど。

そんなこと、心配性の冬雨ちゃんには絶対に言えないし…

樹ちゃんは樹ちゃんで、ちょっと鈍感なところがあるから全然気付いていない様子だし。

冬雨ちゃんはカウンター席に座り、1人静かにじっと2人の様子を眺めていて…

そんな冬雨ちゃんの視線に気付いたのか、パフェを作り終えた樹ちゃんが冬雨ちゃんのもとへやって来た。

「冬雨、何か食べる?」

「、、、いらない」

「どうしたの?お腹空いてない?」

「…樹と食べたいから、今は… いらない」

「そっか、うん…わかった」

なんとなく樹ちゃんも、ご機嫌斜めな冬雨ちゃんの様子には気付いている感じだけど…

それでも?顔の樹ちゃんを見て、冬雨ちゃんはカウンターに項垂れている。

そんな冬雨ちゃんを?顔で眺めていた樹ちゃんが、何か閃いたのか…

「冬雨のために、ホットジンジャーレモネード入れてくるね!」

そう言って、カウンターの中へと戻って行く。

「もぉ、、樹は甘いよ…」

冬雨ちゃんは独り言の様に何かを呟くと… 髪の毛をくるくるとまわしながら、カウンターの中でホットジンジャーレモネードを作る樹ちゃんを、またじっと見つめていた。

冬雨ちゃん、樹ちゃんが冬雨ちゃん以外を見ていないことに気付いていないのかな?

それとも、そんなことはわかっているけど… 樹ちゃんを独り占めしたい気持ちが勝ってしまっているのか。

どちらにしても、少しご機嫌斜めな冬雨ちゃんが可愛らしくて、つい顔が綻んでしまう。

そんな二人のやり取りを眺めていたら、数年ぶりに冬雨ちゃんが来店した「あの日」のことを、久しぶりに思い出した。


あの日は… ちょうどランチタイムの時間が過ぎて、客足も落ちつき、そろそろ一息入れようかと思っていたところだった。

数年ぶりに…本当に久しぶりに冬雨ちゃんが1人でお店に入って来た姿を見て懐かしさを覚えたのと同時に、大学生の頃と比べると随分と大人の女性に成長していて、少しだけ寂しさを覚えた。

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」

「この… いちごパフェと紅茶を1つください」

(なんだか、雰囲気変わったな…)
(もっと、無邪気な感じだったのに…)

「、、かしこまりました」

注文を取り終えて、カウンターの中で冬雨ちゃんが注文したいちごパフェを作っていると、ドアベルが新たなお客さんの来店を知らせる。

フロアを覗くと… そこには樹ちゃんの姿があって。

(あっ、やっぱり待ち合わせしてたのか)

勝手に納得してそう思っていたけど…

樹ちゃんは、奥の席に座る冬雨ちゃんには全く気付いていない様子で、いつも座る席にそのまま移動して…

この時はまだ、二人の名前すら知らないし大学生の頃から二人のことは知っていたけど「カフェの常連さん」以外の情報は何もわからない。

思考をめぐらせながらカウンターの中でこっそりと二人の様子を覗いていると…

ふいに、冬雨ちゃんが立ち上がり樹ちゃんのもとへ。

(あぁ!なんだ、やっぱり待ち合わせか〜)

そう安堵していた瞬間…
店内には少し鈍い音が響いて…

(… えっ!?)

冬雨ちゃんの表情は見えなかったけど、冬雨ちゃんの足元を見つめる樹ちゃんの表情が、少し歪んで見えて。

そんな殺伐とした空気を漂わせる二人を交互に見ながら、なんとなく二人に起きた今までのことを悟った。

あんなに幸せそうだった二人が、突然お店に来なくなってしまった理由…

なんとなくだけど、少しだけわかった様な気がして… 寂しさと切なさで、こちらまで胸が苦しくなったことを今でもよく覚えている。

それから数日後、18時を過ぎた店内はほぼ満席状態でカウンターの中で慌ただしく注文を受けたメニューを作っているとフロアからバイトのゆいちゃんの声が響く。

「店長!2名様、1階は満席なのでロフト席にご案内しても大丈夫ですか?」

「OKだよ!お客様にもロフト席でも大丈夫かどうかは念のため確認して!」

「了解しました!」

それから入り口付近でゆいちゃんがお客様に説明している声が聞こえて…

「あっ、そうなんですね… ロフトでいいよね?」

「うん」

「では、ご案内いたします」

ゆいちゃんの後に続いてロフト席に移動するお客様に挨拶をしようとフロアに顔を向けると…

「いらっしゃぃ… まっ、て、、えっ!?」

「ふふっ、こんばんは!」

そこには… カウンター前を通り過ぎるにっこり笑顔の樹ちゃんと控えめに会釈をする冬雨ちゃんの姿があって。

(えっと、、、んんんーーーー…どういう状況?)

それからはもう仕事どころではない。

二人が気になって気になって仕方がない。

数日前はあんなに険悪なムードだった二人が…
今日はロフト席で寄り添い微笑みあっている!?

あの空間だけ…
もはや、別世界の様な空気さえ漂っていますけども!?

「店長、、店長…?、、聞いてます?」

「… あっ、、ごめんごめん」

「そんなにロフトのお客さんが気になるんですか?」

「いや、まぁ…昔から来てくれる常連さんだからね」

「そうなんですね〜、そういえばさっき…」

「ん?」

「あの二人、キスしてましたよ」

「えええええっっーーーーーーー!!!!!」

「店長!うるさいです!」

「、、、二人が幸せならナニヨリデス…」


樹ちゃんがカフェで働いてくれる様になってから、樹ちゃん達を慕う会社の同僚さんもお店に来てくれる様になって…

「あっ、冬雨さん!こっち、こっち」

「ふたばも来てたんだ」

「冬雨、おつかれさま!何、飲む?」

「じゃあ…」

「樹さん、冬雨さんにも私と同じものをお願いします」

「ふたばのそれ、シャンパンでしょ?」

「いいじゃないですか〜?冬雨さん、一緒にのみましょうよ〜」

いつもより賑やかなカウンター席を横目に見ながら、お客様が帰られたテーブルのお皿を片付ける。

「ここに来れば樹さんと冬雨さんに会えるし、1人で寂しくお酒をのまなくても済むし… 」

「冬雨、ふたばちゃんに少しだけ付き合ってあげたら?」

「そうですよ〜、冬雨さんは酔っても樹さんがいるから全然問題ないんじゃないですか〜?」

「まぁ…そうだけど」

いつもはお酒を飲まない冬雨ちゃんだけど、ふたばちゃんが来ると、結局最後まで付き合ってあげるんだよね。

「、、ふゆ?… 冬雨、大丈夫?」

「、、いつき…?、、ふたば…は?」

「ふたばちゃんは、さっきタクシーで帰ったよ」

少しふらつく冬雨ちゃんをしっかりと抱き留めながら、樹ちゃんが申し訳なさそうな顔をこちらに向ける。

「店長… 騒がしくしてしまって… すみません、、、」

「いいの、いいの!全然大丈夫〜」

「でも、、、」

「樹ちゃんがこのお店に来てくれてから、売り上げ♡めっちゃ上がってるから全然気にしないで〜♪笑」

そう言うと少し安心したのか、樹ちゃんも少し笑ってくれて。

「気をつけて帰ってね!」

「はい、ありがとうございました」

二人を店の前に待たせていたタクシーまで見送ってから、静まり返った店内に戻り冷蔵庫からサン生を取り出す。

プッシュ‼︎…

「あぁ〜、うまっ!今夜も…良い夜だったな」

ひとり静かにサン生を飲みながら、最後のクローズ作業を進める。

フロアを見渡すと…
ふいに、天女世界のポスターが目に止まって…

樹ちゃんが「このお店で働きたい」と言って来たときのことを思い出した。


正直、、、かなり驚いた…

「春本…樹さん?」

「はい、よろしくお願いします」

まさか、今日の面接に「あの常連さん」が来るとは想像もしていなかったから。

少し緊張しているのか「いつもお店に来てくれていますよね?」と笑顔で問いかけると、少しだけ微笑みながら頷いてくれて。

「でも、なんで… うちのお店に?」

「ここで… この場所で、、、、、」

「、、、?」

「、、、働きたいなって、思ったからです」

俯いていた顔を上げそう話す樹ちゃんの哀愁を帯びた表情が儚げで、それ以上は何も聞けなかった。

樹ちゃんが働き始めて、あらためて樹ちゃんの「人柄の良さ」を確信したし、彼女が「勤勉でとても優秀な人」だという事にも気付かされた。

優しいオーラと柔らかい笑顔がとっても素敵な樹ちゃんの接客は、来店したお客様達をいつも笑顔にしていた。

ただ… 時折、ロフトを見上げて何かを思い出しているのか、すごく切ない表情をする時があって。

そんな樹ちゃんをたまたま何度か目にする様になって、やっぱりまた何か起きたのだと、案じずにはいられなかった。

その証拠に、最近また大学生の頃の様に二人で来店してくれることが増えていたのに…

樹ちゃんが働き始めたのと同時に、冬雨ちゃんの姿を見かけることがなくなってしまったから。
それから…

何度か、季節が移り変わって…

カラン…カラ〜ン‼︎

「いらっしゃい… ま、せ?って、樹ちゃんに冬雨ちゃん、どうしたの?今日は樹ちゃん、お休みでしょ?」

「ふふっ、久しぶりにお客さんとして来ちゃいました!」

「あっ、なるほど!」

「店長、ロフトって今… 空いてますか?」

(冬雨ちゃん、そんな… きらきらした瞳でロフトを指差さないでー!)

「ああぁ!!ぜっ、全然!?空いてるから…全然大丈夫だよー!!もちろん、OK!OK!!」

「、、、店長?」

「えっ?んっ… はい?」

「なんか、、変ですよ?」

「そっ、そうかな?いつも通りだよ!」

動揺している様子を見て、二人は楽しそうに笑い合っていて… あぁ、幸せそうだなぁって、なんだか私まで嬉しくなる。

「たまには、ゆっくりしていってね♪」

「はい、ありがとうございます!」

ロフトの梯子を登る冬雨ちゃんの手をしっかりと握りしめて微笑み合う二人の姿が、尊すぎて眩しい。

二人のオーダーを受けてから、カウンターの中へと戻り…

見てはダメ、見てはいけない。絶対に見てはいけない。
仕事に集中集中全集中…と自分に言い聞かせる。

「今度… ロフトにカーテン取り付けようかな… 」

「どうしたんですか、店長?」

カウンターの中でお皿を拭きながら呟いた独り言が、隣にいた佐藤ちゃんにも聞こえていたみたいで…

「んー?ロフト、見てみて…」

「え?、、、あっ… なるほど!」

「… ね?、、尊いでしょ?」

「あっ!?… 今、樹さんと冬雨さん… 」

「えっ、キス!?えええぇぇーーーん!!!」

「店長… たぶん声、ロフトまで聞こえてます、、、」

「、、だって… いつも私だけ🥲グスン…」


「おはようございます!」

「あっ… 樹ちゃん、おはよう!」

「今日は寒いですねー」

「ほんと…なんでこんなに寒いんだろうねー笑」

朝のゆったりとした空気が流れる店内で、寒さをしのぐためマフラーにすっぽりと顔をうずめた樹ちゃんと挨拶を交わす。

「樹ちゃん、その赤いマフラー可愛いね!」

「えっ?ほんとですか!?」

「うん!樹ちゃんにすっごく似合ってる!」

「ふふっ、ありがとうございます♪」

(なんだろう、既視感…)

何気ない朝の会話も、いつも通りなんだけど…
何かが引っかかっている様な…

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよー」

(気のせいかな…)

それから2人でオープン作業をはじめて、忙しいランチタイムの時間へと突入した頃には、すっかり朝の既視感の真相について…追求することを忘れてしまっていた。

その日の夜…

ピーク時を過ぎて落ち着きを取り戻した頃、仕事終わりの冬雨ちゃんがお店にやって来た。

「冬雨ちゃん、お疲れ様〜」

「お疲れ様です」

「樹ちゃん、もうすぐあがりだよ!」

カウンターの中を指さすと、樹ちゃんの姿を捉えた冬雨ちゃんの表情が一気に柔らかくなる。

「あっ、冬雨!」

樹ちゃんも私たちの話し声に気付いたのか、カウンターの中から顔を出した。

相変わらず二人が一緒に居る時の空気感はあの頃と変わらず、ぽかぽかとあたたかくて心地良い。

(さてと、ロフトのお皿でも片付けますか!)

ロフトを片付けていると、着替え終わった樹ちゃんと冬雨ちゃんの呼ぶ声がして…

1階の二人に声をかけようとロフトから下を覗くと、樹ちゃんの首にしっかりと巻かれた赤いマフラーに目が止まってハッとした。

「あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「店長!?」

「思い出したよ!樹ちゃん!!」

「えっ?」

「その赤いマフラーって、ここで冬雨ちゃんとイチャイチャしながら二人で巻き巻きしてた時のやつだよね!?朝の既視感はこれだったんだ!なんだ、そっかそっか〜!」

「あっ、、えっと…」

「、、あっ、、、ごめんなさい…」

響き渡った声を回収するには、、既に遅く…

赤いマフラーと同じくらい顔を赤く染めた樹ちゃんと、そんな樹ちゃんとは対照的に楽しそうに微笑む冬雨ちゃんをロフトから見送りながら盛大に反省をする。

(そういえば…あの時、、、!?)

「しなかったじゃん、キス!!」

その事実を思い出し、やっぱり私は現場にいながら目撃者にはなれないのかと、一人ロフトでしばらく項垂れた。


今日は、少し前から計画していた店内のリノベをするためお店を休業にして、樹ちゃんと佐藤ちゃんと3人で朝から作業を進めていた。

「ここ、ちょっと届かないかも、、、」

「店長、そこ…私がやります」

「あっ、ありがとう!助かるよ〜樹ちゃん」

樹ちゃんは、いつも周りの様子を良く見ていて…こういう時、さらっと助けてくれる。

常に穏やかで、みんなに分け隔てなく優しく接する樹ちゃんは魅力的な人だと思うし、だからこそ冬雨ちゃんは心配になるんだろうな…

「店長、、ダメですよ!!!」

「•••えっ、、何が?」

「樹さんは、冬雨さんのものですからね!!!」

最近、二人の尊さに気付いた佐藤ちゃんから樹ちゃんへの疑いをかけられ、全力で否定をしながら苦笑いする。

「樹さんみたいにみんなに優しくて穏やかな人って、実は一方で意外と他人に無関心•••という側面もあるみたいなんですよ。冷静に物事を客観視できる人が多いそうです」

「なるほどね、詳しいね… 佐藤ちゃん」

「そんな樹さんが、冬雨さんといる時は感情的というか、冬雨さんには心を許しているというか、より自然体というか!!!」

「確かに、冬雨ちゃんといる時の樹ちゃんはちょっと違うよね〜」

「冬雨さんも普段はまさに”バリキャリクール系女子”って感じなのに、樹さんといる時の冬雨さんの柔らかい雰囲気、やばくないですか!?… とにかく、あの二人は尊いんですよ!!!」

佐藤ちゃん、、すごい熱量だね…笑

「たぶん、、なんだけどね…」

「???」

「今の会話、樹ちゃんに聞こえてると思うよ」

「えええっ!!!!!」

ここからは、奥の壁に向かって作業している樹ちゃんの表情は確認出来ないけど、何度か咳払いをする樹ちゃんと目があったからな•••笑

それからは作業に集中して、なんとか3人で協力して予定していた作業を無事終えることが出来た。

夕方… 作業終わりに冬雨ちゃんが差し入れを持って来てくれたので、このままみんなでここでご飯を食べようということになって。

せっかくだからアルコールも…と思い、冷蔵庫から私物のサン生を出してみんなで乾杯する。

「お疲れ様でした!乾杯!!」

作業終わりの美味しいビールを飲みながら、目の前の二人の何気無いやり取りを眺める。

普段からそうしているであろうスマートな動作で樹ちゃんはさっと冬雨ちゃんに料理を取り分けてあげている。

冬雨ちゃんは冬雨ちゃんで、さり気無く苦手なものを樹ちゃんのお皿に移動していたりと、相変わらずの相思相愛っぷりに自然と顔がニヤけてしまう。

お店の話や冬雨ちゃんの仕事の話などを聞きながら、アルコールも少しまわって来た頃…

「樹さん、冬雨さん!!!」

「「 ん? 」」

「二人の… 出会いとか、きっかけとか聞きたいです!」

お酒の力を手に入れた…
佐藤ちゃんが二人のもとへ襲来する。笑

「あぁ、なんだろうね、、冬雨とは大学時代に知り合って、冬雨は中国からの留学生で、、、」

あきらかに動揺する樹ちゃんとは正反対に…

「んー、樹と出会った時は… 私がまだ日本に来たばかりの頃で、そんな私をいつも樹が気にかけてくれて…」

「どっちから告白したんですかー?」

(佐藤ちゃん、流石ですね…笑)

「えっ!?!?」

「大学1年の時、樹と二人で一緒に部屋を借りて住みたいねって、盛り上がったことがあったの。この時はまだお互いに気持ちは伝えていなかったけど…」

「ふ、ふゆっ!?」

「でも、私がママを説得する自信がなくて… それを樹に話したら私を勇気づけるために… 樹… 突然キスをしてくれて、そこから正式に恋人同士になったよね?、、樹?」

冬雨ちゃんの話に、樹ちゃんは恥ずかしそうに視線を彷徨わせながら小さく頷いた。

「えええええぇぇぇ!!!樹さん、積極的!!!」

「ふふっ、そうなの。笑」

「きゃっ♡… 冬雨さん、それ惚気じゃないですかー!」

こうして、佐藤ちゃんの暴走は続き…
いつもより饒舌な冬雨ちゃんと…
固まる樹ちゃんを眺めながら
幸せな日曜の夜は更けていくのであった。


樹と冬雨が別れたのは大学4年の春。

以来、冬雨は春になると涙を浮かべたり鼻をグズグズさせながら「春なんて大嫌い!」と叫ぶのが日課でした。

今度の春は…?

🤍「ねぇ、冬雨?今日は良いお天気だから、たまにはお散歩しない?」

🖤「うん、良いね」

🤍「冬雨、見て?桜が綺麗だね…」

🖤「本当に綺麗…」

🤍「あっ、冬雨の髪に桜の花びら付いてる、ほら?」

🖤「そーゆー、樹の髪にもたくさん付いてるよ?」

🤍「えっ?あっ、ほんとだ!笑」

🖤「ふふっ、樹って、そういうとこ、昔のままね」

🤍「えー!?そうかなー?」

🖤「そうだよ!あの頃と、変わってない」

🤍「ねぇ、冬雨?」

🖤「んー?」

🤍「来年の春もまた一緒に、桜を見に来ようね」

🖤「うん、約束!ねぇ…樹?」

🤍「ん?」

🖤「春って、こんなにも綺麗な季節だったんだね」

🤍「うん、あったかくて気持ち良いねー」

🖤「ふふっ、幸せだね」

🤍「うん、本当に幸せだね」


「ねぇ… 佐藤ちゃん、、、」

「なんですか、店長!?」

「これってさ、もうストーカー行為だと思うの…」

「違いますよ!!なんてこと言うんですか!!」

「じゃあ、、、何?」

「、、、二人が尊いせいじゃないですかね?」

「、、、帰ろ!ほらっ…邪魔しちゃ悪いから」

「もう少しだけ… あああっ!?」

「なに?、、そんな声出したらバレちゃうよ!?」

「今、樹さんからキスしました♡」

「えええっーーー!!また私が見てない時にーーー!?」

「店長、今の叫び声のせいで…二人にバレました…」

「えええっーーー!!本当にごめんなさい、、、」


Xの投稿を読んでくれた方も…
noteの文章を読んでくれた方も…
私の拙い文章にお付き合い頂き
本当にありがとうございました🙇‍♀️

続編に期待を膨らませながら✨
その日までは…🥹
今頃、樹と冬雨は何をしてるのかな?と…
妄想の日々が続くとは思いますが🥹
また会えるその日まで…
なんとか、生き延びます!笑

愛してやまない… 樹と冬雨が🤍🖤
何気無い日常を二人笑顔で過ごしていることを
祈って🫶

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