科学雑学

科学の雑学や知識を紹介していきます。

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最近の記事

カニとヤドカリの進化の謎:意外な共通点と多様性

カニとヤドカリの比較から見えてきた多様性と共通点カニとヤドカリは、どちらも身近で人気のある甲殻類ですが、その進化には多くの謎が残されています。 カニとヤドカリの形態的多様性 カニとヤドカリは、どちらも「カニ化」と呼ばれる進化を経て、平たい体と下に折りたたまれた腹部を持つ、特徴的な姿を獲得しました。しかし、このカニ化は、それぞれのグループで独立に複数回起こったと考えられています。つまり、進化の過程で、それぞれが別々にカニのような姿になったということです。 ミュンヘン大学の

    • 人間はライオンより怖い? 有袋類の反応から見る新たな視点

      オーストラリアの有袋類は人間を最も恐れる オーストラリア原産の有袋類は、人間を最も恐れる動物であるという研究結果が発表されました。これは、タスマニア島で行われた興味深い実験に基づくものです。 実験の内容 この実験では、カンガルー、ワラビー、パディメロン、ポッサムの4種の有袋類が、人間、犬、タスマニアデビル、オオカミ、ヒツジの鳴き声にどのように反応するかを調査しました。これらの動物たちの反応は、自動行動反応システム(ABR)と呼ばれるビデオカメラで記録されました。ABRは

      • オオカバマダラの毒と美しさの代償:意外な関係

        毒を持つ生物の戦略:警告シグナルと毒の量の関係 毒を持つ生物の中には、捕食者に対して毒の存在を知らせるために、鮮やかな体色や模様といった警告シグナルを持つものがいます。しかし、警告シグナルと毒の量の関係は、必ずしも一致するわけではありません。 例えば、ヤドクガエルやテントウムシなどでは、警告シグナルが強い個体ほど毒の量も多いという正の相関が見られることがあります。一方で、警告シグナルが弱い個体ほど毒の量が多いという負の相関を示す種も存在します。 資源競争モデル:毒と美し

        • 道路凍結防止剤がカエルに与える影響

          問題の背景 冬の道路凍結を防ぐために使われる塩。それが、実は私たちの身近な水辺に深刻な影響を与えているかもしれません。塩化物イオンを含むこれらの凍結防止剤は、雨や雪解け水によって池や沼に流れ込み、そこに住む生き物たちの生存を脅かしています。 実験対象:ウッドフロッグ 特に、両生類であるカエルは、この塩分濃度の上昇に非常に敏感です。今回、研究者たちは、ウッドフロッグという種類のカエルを使って、塩分濃度の上昇が彼らにどのような影響を与えるのかを調査しました。 実験内容

        カニとヤドカリの進化の謎:意外な共通点と多様性

          植物食に大きく依存していた狩猟採集民

          食生活の変化は、人類史における重要な転換点の一つです。特に、狩猟採集生活から農耕生活への移行は、人類の食生活に大きな革命をもたらしました。しかし、農耕が始まる前の食生活については、まだ多くの謎が残されています。 新たな発見 今回、科学者たちは、モロッコのタフォラルト遺跡で発見された15,000~13,000年前の人骨を分析し、驚くべき事実を発見しました。これらの狩猟採集民は、農耕が始まるよりもはるか前に、植物を主要な食料としていたというのです。 科学的分析 研究チーム

          植物食に大きく依存していた狩猟採集民

          野生スイカのゲノムが明かすスイカの進化と品種改良の秘密

          野生スイカの秘めたる力:ゲノム研究が解き明かすスイカの進化と品種改良 科学者たちは、栽培スイカとその野生種を対象に大規模なゲノム解析を行い、その多様性と進化の歴史を明らかにしました。特に注目すべきは、これまであまり研究されてこなかった野生スイカのゲノム情報です。 野生スイカ:未知なる遺伝子の宝庫 苦味や風味の薄い野生スイカは、これまであまり利用されてきませんでしたが、実は栽培スイカにはない貴重な遺伝子の宝庫であることが判明しました。今回の研究では、3種類の野生スイカのゲ

          野生スイカのゲノムが明かすスイカの進化と品種改良の秘密

          歌のリズムは遺伝子で決まる?鳥類の求愛と進化に新発見

          鳥類における音声リズムの遺伝的基盤 動物のコミュニケーションにおいて、音声リズムは性的選択や種認識において重要な役割を果たします。鳥類の歌に見られるリズムは、その複雑さと多様性から研究者の注目を集めてきましたが、その遺伝的基盤は、鳥類のモデルシステムにおける学習能力の影響により、ほとんど解明されていませんでした。しかし、この遺伝的基盤を解明することは、種分化において重要な役割を果たす遺伝子の特定につながる可能性があります。 遺伝子解析によるリズムの解明 本研究では、南ア

          歌のリズムは遺伝子で決まる?鳥類の求愛と進化に新発見

          シマハイエナの子育て戦略

          シマハイエナは秘密主義で謎めいた哺乳類の一種です。その分布や個体数動向の解明は進んでいるものの、繁殖成功に影響を与える要因についてはまだ十分に理解されていません。そこで、本研究では、野生におけるシマハイエナの繁殖成功を初めて分析しました。中央イスラエルにおいて、15回の繁殖期にわたり、少なくとも1回の子育てをしたメスの繁殖成功度を測定しました。この期間中に33の巣穴で67回の繁殖イベントを調査し、151頭の若いハイエナを記録しました。巣穴は平均2年間使用され、1頭の繁殖メスが

          シマハイエナの子育て戦略

          予想外の捕食者:葉っぱで罠を仕掛ける知的なクモ

          マダガスカル北東部で、クモがカエルを捕食しているという珍しい観察例が報告されました。 観察内容 2017年10月25日、アンボディアラの雑木林で、Sparassidae 科の Damastes 属のクモが、Hyperoliidae 科の Heterixalus andrakata というカエルを捕食しているところが目撃されました。クモは、生きたままの木の葉2枚をクモの糸で織り合わせて作った隠れ家に身を潜めていました。この隠れ家は、葉の付け根が開いており、奥にクモが隠れるこ

          予想外の捕食者:葉っぱで罠を仕掛ける知的なクモ

          アリの行動における普遍性

          はじめに社会システム、例えば人間社会やアリ社会がどのように機能しているのかを理解し、予測することは、科学にとって大きな挑戦です。都市の規模と経済活動、技術革新、さらには生活のリズムとの間に見られるような、社会レベルでの普遍的な関係性は、都市生活の統一理論の構築を促しています。しかし、社会内における普遍的な関係性の存在は、まだ明らかではありません。行動は個体間および個体内で異なり、予測困難な自発的活動を含むためです。 本研究では、アリ社会において、活動イベントの持続時間と個体

          アリの行動における普遍性

          クモもアリになりきり!?進化の制約を覆す驚きの擬態

          アリに擬態するクモは、昆虫に比べてアリとの進化的な距離が離れているため、形態的な制約から、アリにより似るように進化できないと考えられていました。しかし、オーストラリアで行われた最新の研究では、この仮説は支持されませんでした。 アリの擬態の正確性 マッコーリー大学の研究者たちは、アリに擬態するクモと昆虫の形態を比較し、その正確性を評価しました。その結果、最も正確なクモの擬態は、最も正確な昆虫の擬態に匹敵することがわかりました。つまり、クモは昆虫よりもアリとの進化的な距離が離

          クモもアリになりきり!?進化の制約を覆す驚きの擬態

          キツツキの頭蓋骨の秘密:木を叩くための進化

          キツツキは、そのユニークな行動と頭蓋骨の構造により、鳥類の中でも特に興味深い存在です。彼らの頭蓋運動、特に上嘴の動きは、木を叩くという特殊な行動に適応した結果、他の鳥類とは異なる進化を遂げていることが、新たな研究で明らかになりました。 鳥類の多くは、上嘴を頭蓋骨に対して動かすことができます。これは頭蓋運動と呼ばれ、主に採食や歌を歌う際に役立つと考えられています。キツツキも頭蓋運動を行うことができますが、その主な目的は木を叩くことであるため、頭蓋運動は邪魔になるのではないかと

          キツツキの頭蓋骨の秘密:木を叩くための進化

          ゴリラ、硬い種子を歯で割って食べていた!意外な食生活とは

          西アフリカのガボンにあるロアンゴ国立公園で、西ローランドゴリラが固い種子を割って食べている様子が初めて観察されました。この発見は、ゴリラの食性に関する従来の考え方に一石を投じるものです。 これまでゴリラは、葉や果実を中心に柔らかい食べ物を好むと考えられてきました。しかし今回、ロアンゴのゴリラが、硬い外殻に覆われたCoula edulis(クルミ科の植物)の種子を、歯で割って中身を食べる行動を、4年間にわたって繰り返し観察されたのです。 研究チームがC. edulisの外殻

          ゴリラ、硬い種子を歯で割って食べていた!意外な食生活とは

          地下帝国の陰に潜むストレスの影 ── 社会性デバネズミの繁殖抑制メカニズム

          アフリカ南部の地下トンネルに生息するハダカデバネズミとダマラランドデバネズミは、極めて協調的な社会を形成しています。コロニー内では、ほとんどのメンバーの繁殖が抑制され、一匹のメスと少数のオスだけが子孫を残します。 これまでの研究から、繁殖メスによる攻撃行動がストレスを引き起こし、非繁殖個体の繁殖を抑制している可能性が示唆されています。しかし、実験室での研究では、繁殖個体と非繁殖個体の間でストレスホルモンに差は見られませんでした。 一方、野外研究や他の社会性デバネズミの研究

          地下帝国の陰に潜むストレスの影 ── 社会性デバネズミの繁殖抑制メカニズム

          ラッコの貝割り行動が残す考古学的痕跡

          アメリカ・カリフォルニア州のモス・ランディングにあるベネット・スロー・カルバート (BSC) で、野生のラッコが貝を岩にぶつけて割る習性のおかげで、ユニークな考古学的な跡が残されていることがわかりました。イギリスとドイツ、アメリカの研究者チームが10年かけて観察研究を行った成果です。 研究チームは、BSCの岩場でラッコがムール貝を岩に打ち付けて殻を割る様子を観察しました。ラッコは同じ岩を「台石」として何度も使うので、岩には特別な摩耗パターンができ、その下には割れたムール貝の

          ラッコの貝割り行動が残す考古学的痕跡

          シャチの呼吸数と行動状態に関する新しい研究

          カナダ、ブリティッシュ・コロンビア沖で、研究者グループが野生のシャチの呼吸数を測定し、行動状態との関連を調べる研究を行いました。調査にはドローンとバイオロギング装置を使用し、シャチの遊泳行動と呼吸数を詳細に記録しました。 解析の結果、シャチは移動中が最も高い呼吸数(未成熟個体で1.6回/分、成熟オスで1.8回/分)を示し、次に採餌中(未成熟個体1.5回/分、成熟オスで1.7回/分)、休息中は最も少なくなる(未成熟個体1.2回/分、成熟オス1.3回/分)ことが分かりました。ま

          シャチの呼吸数と行動状態に関する新しい研究