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Rolleiflex 2.8Eと2.8Fのはなし

先日、一定期間並行して生産された3.5系統のE型とF型について、手元にあるRollei二眼レフの研究書(書誌情報は投稿末尾参照)をもとに簡単にまとめてみました。そうなると気になるのは2.8系統のE型とF型ってどうなのかしらということ。今日はこの点について、再び研究書に書かれていることをザックリまとめてみることにしました。

まず、2.8Eと2.8Fの生産年は以下のようになっています。3.5系統と同様に並行して生産されていた期間があるようです。

Rolleiflex 2.8E K.7E:1956-59
Rolleiflex 2.8E2 K.7E2:1959-60
Rolleiflex 2.8F K.7F:1960-81
Rolleiflex 2.8E3 K.7E3:1962-65?

次に、大まかに2.8Eの各機種の差異に関して、簡単に書き記していきます。

  1. Rolleiflex 2.8E
    露出計搭載可能な機種としてRolleiflex 2.8Dの後継機として発売
    露出計はEV表示、絞り・SSダイヤルと連動していない(3.5系統も同じ)
    1959年以降、ファインダースクリーンがそれまでのガラス素材のものからRolleiclearというプラスティック素材のものに変更される
    製造台数約44,000台

  2. Rolleiflex 2.8E2(Eからの変更点など)
    テイクレンズの下に「E2」およびシリアルナンバーの記載あり
    ファインダーフードを簡単に取り外すことができる
    Planarモデル(露出計付き)のほうが生産台数が多い
    Xenotarモデルの大半は露出計なしで販売
    製造台数約8000台

  3. Rolleiflex 2.8E3(E2からの変更点など)
    シリアルナンバーの記載は銘板上面に戻る(2.8Eと同様)
    シンクロ接点・セルフタイマーレバーがビューレンズ(正面から見て)左側に移動
    製造台数は約2000台、そのほとんどがPlanarモデル

ふむふむ。E2やE3は、3.5系統でも2.8系統でも、生産台数が少ないハイブリッドカメラとして、ニッチな蒐集にはもってこいの機種かも。そんなんことを考えてみたりして。

一方、1960年から1981年という非常に長い期間製造され続けたRolleiflex 2.8Fですが、私の手元にある研究書に依る限りでは、E型ほど際立った変更・改良が加えられることはなかったようです。それだけこの2.8Fが発売当初から「最終モデル」と呼ぶにふさわしい機能を備えていたということになるのでしょうか。しかしながら、以下の2点は特記しておいても良いかなと思います。

  1. 貼り革
    1966年を境に貼り革が皮革から模造革(leatherette)に変更されています(Rolleicord Vbも同様)。

  2. 12/24切り替え機能
    1965年以降加えられた(対応可能になった)機能で、私の手元にある3.5Fと2台の2.8Fには、いずれも12/24切り替え用操作板がついています。操作板はなくその台座のみという機種も、中古市場ではよく見かけます。切り替え操作板がついている場合、1本で12件撮影可能な120フィルムと、24件撮影可能な220フィルムの両方を使用することができます。しかし、220というサイズのフィルムは現在では入手するのが難しい*ので、残念ながら今となっては不要な機能となってしまいました。加えて、120で撮影中にうっかりこの切り替え操作板に触って動かしてしまうと、カウンター表示がおかしくなり、撮影を続行できなくなってしまうこともあるので注意が必要です。今後RolleiflexのF型を買うのであれば、この操作板がないものを購入したほうが良いかもしれません。

Rolleiflex Originalから始まり、長い長い期間、改良に改良を重ねて到達したF型ですが、研究書を一行一行丁寧に読んでいくと、世の中の趨勢には勝てず1960年代中頃からは徐々にコストダウンの方向に向かっていったことが伺えます。これは2.8系統のみならず3.5系統にも言えることで、その最初の目に付く兆しが貼り革の素材の変更だった。私はそんな気がするのです。

以上、研究書に書かれていた事柄のうち、私が個人的に重要と思った部分をザックリ訳出し、まとめててみましたが、実は各機種の項目にはこの何倍、何十倍もの細かい記載があるのです。手に持つとズッシリとした重みがあり、その重さから著者の熱意が伝わってくるような実に素晴らしい研究書です。本来ならここで記載すべき重要箇所を、私が読み落としている可能性は十分にありますので、Rolleiflexについて詳しく知りたい方は、ぜひ実際にこの研究書を手にとって目を通してみることをお勧めします。書誌情報は以下のとおりです。

引用・参照)
The Classic Rollei : a definitive guide / John Phillips, Ammonite Press, 2010
ISBN 978-1-90667-293-5

* 220フィルムは今でも買えるか
eBayに時々期限切れのものが出品されていたりします。

後記

この記事は3年半前に書いたものです。私がこの記事を書くにあたり参照した本について、本文末尾に「Rolleiflexについて詳しく知りたい方は、ぜひ実際にこの研究書を手にとって目を通してみることをお勧めします」などと書きましたが、今回改めてこの本は2024年1月現在、新刊書として今も市場に出回っているのか調べてみたところ、残念ながらどうやら絶版になっているようです。中古で最低価格約250ユーロの価格がついて出品されているのを見ました(ちなみに新刊書の価格は30ポンドでした)。日本円に換算すると一体いくらになるんだろう…。「ぜひ手に取ってみて」なんて気軽にすすめられなくなってしまいました。そうそう、220フィルムも今やどこを探しても入手不可能になってしまったようです。

(この記事は2020年6月5日にブログに投稿した記事に、後記を加えて転載したものです。)

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