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Rolleiflex 3.5Eのはなし

夫が使っているこのRolleiflex。

私は手元にあるRolleiflexに関する研究書(書誌情報は投稿末尾参照)に従い、私はRolleiflex 3.5Eと呼んでいますが、時に3.5Cと呼ばれたり、3.5Dと呼ばれたり。本当はどういう名称なのか、実はよくわかりません。ライトバリュー方式で露出を合わせられるようになっていますが、Rolleicord Vbなどと異なっている点は、それを簡単に解除できること。非常に便利です。カメラ全体の意匠は、私の最終型2.8Fよりも遥かに手が込んでいると思います。

Rolleiflexに関しては、私は狂信的にF型を信仰(もはや信仰と言って良いと思います)していますが、そこに「ちょっと待て」と楔を打つのはいつもこの3.5Eです。私がF型を語る時に枕詞にしている「ファインダーが隅々まで明るい」という点、この3.5Eは全く負けていないのです。私のRolleiflex 2.8F Xenotarがヴェニスで壊れた時、夫がサブカメラとして持って来ていた3.5Eを借りて撮影したのですが、夜間でも隅々までスッキリ見えるファインダーに驚嘆しました。おかげさまで、開放値F3.5であるにもかかわらず、フィルムを増感することによって、暗い屋内や日没後の屋外も難なく写真を撮り続けることができました。やはり、二眼レフに限ってはファインダーのコンディションは非常に、いやいや最も大切。

最初に触れたRolleiflexに関する本によれば、3.5系統の露出計を装備したRolleiflexの製造年は以下のようになっています。

Rolleiflex 3.5E / K.4C :1956-59
Rolleiflex 3.5F / K.4D (Type 1), K.4E (Type 2):1958-60
Rolleiflex 3.5E2 / K.4C2 (Type1), K.4C3 (Type 2):1959-60, 1961-62
Rolleiflex 3.5F / K.4F:1960-76
Rolleiflex 3.5E3 / K.4G:1961-1965?

こうして改めて見ると、E型とF型は小改良を経ながらほぼ並行して製造されているのです。...となると、「ファインダーのコンディションはF型のほうが時代が下っているぶん概ね良い」ということを簡単に言い切れないような。例えば、夫は3.5FのK.4Fにあたる機種も使っています(12/24切替付き、ただしホワイトフェースではない)。この3.5Fも3.5E K.4Cもファインダーグラスは全面磨りガラスの同じものですが、2台並べてその明るさを比べてみても、その差は全くありません。「中古カメラって製造年より、現在に至るまでどのように使用・保管されてきたかに大きく左右されるんだ」と改めて思いました。

そんなわけで、今まで「Rolleiflexをメインカメラとして買うのなら、絶対F型」と気が狂ったように主張してきた私ですが、落ち着いて考えるとE型でも十分にいけるような。相場の傾向もF型よりE型のほうが低いですしね。問題はコンディションです、レンズとファインダーのコンディション。もちろんF型が最高というのは、今も変わりないのですが。...ああ、コロコロと言うことを変えて申し訳ありません。でも、先日、夫が肩からかけているRolleiflex 3.5Eがあまりにも美しく魅力的に見えたもので...。いずれにしても、昔も今も私がRolleiflexを大好きだということだけは確かなのですが。ほんと、こんなに美しいカメラ、他にはないと思います。

Rolleiflex 3.5Eのおおまかな型番の見分け方と製造台数について

  1. Rolleiflex 3.5E
    フードの取り外し不可。セルフタイマーはボタン式。製造台数約43,000台。

  2. Rolleiflex 3.5E2
    3.5Fと同様にフードを容易に取り外しできる。ビューレンズの下に「E2」という型番号とシリアル番号の記載あり。セルフタイマーはボタン式。製造台数4000台以下。

  3. Rolleiflex 3.5E3
    3.5Fと同様にフードを容易に取り外しできる。セルフタイマーはレバー式(F型と同じ)。製造台数5000台以下。

参照)
The Classic Rollei : a definitive guide / John Phillips, Ammonite Press, 2010
ISBN 978-1-90667-293-5

後記

ここ2〜3年くらいでしょうか。Rolleiflex 2.8Fの中古相場の値上がりには目を見張るものがあります。かつて私がドイツに移住したばかりの頃は、中古相場に関しては、M型Leicaについても、Rolleiflexについても、日本よりドイツのほうが割安だと感じたものですが、今では中古カメラ市場でもグローバル化が進んだようで、こういった差異を感じることはなくなりました。むしろ未曾有の円安の現在、ユーロをベースに考えれば日本のほうがM型LeicaもRolleiflexも安く買えるような気すらします。
そんなこんなで、南欧に旅行する時、もはや資産と化した最終型のRolleiflex 2.8Fを持って行く気にはなれず、去年、Rolleicord Vbを購入しました。私は屋内や夜間など暗い場所を好んで手持ちで撮影するため、今でも二眼レフで最も大切なのはファインダーだと思っています。そして、新規投入したRollricord Vb(2.8Fと比較すればかなりお値打ち)のファインダーはRollriflex 2.8Fと変わらないくらい明るかったので驚きました。結局、去年の南欧旅行はバーリ(南イタリア)、セビリア(南スペイン)と迷ったすえ、ポルト(北部ポルトガル)に決め、そして「まあ、ポルトなら大丈夫だろう」とRolleiflexを持って行ったため、このRolleicordの国外デビュー戦は残念ながら見送られてしまったわけですが、先日大雪の日に実に1年ぶりに使ってみたら予想以上に使いやすかったので、今後は積極的に使っていきたいと思います。今まで放っておいてごめんね。

(この記事は2020年6月1日にブログに投稿した記事に、後記を加えて転載したものです。)

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