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「アブない本が読みたいんだよおお!」(セリーヌ編)

以前、「アブない本」(厳密には、あくまで「現代日本」の常識においては「危険な作家」認定されてる人たちの本)をあえて読むのが、実は大好きだ、という話をnoteに載せたら

なかなか反響があったので、

私のフォロワーさんにはきっと、「善悪は置いといて色々な本が出版されるべし」という、「シン・本好き」な方が多いのではないかと推測しました。

そうなると私も、もう少し、自信をもって、、、

では現代日本の(いや日本どころか現代世界の)通念では「アブない」認定は免れない筈なのに、学生時代の私が惚れ込んで惚れ込んだ作家さんの本を紹介しましょう。

ルイ・フェルディナン・セリーヌですね!

セリーヌなんぞが好きな学生だったなんて、、、怖くて、、、とても言えない、、、って言っちゃったけど、、、

セリーヌの何がいいかって?、、、文体だよ、、、文体、、、そう、、、「点点点」だよ、、、「点点点」だらけの、、、虚無の中から搾り出しているような、、、途切れ途切れの文体!

図書刊行会『セリーヌの作品4:ギニョルズ・バンド』より

そう、、、この途切れ途切れの、、、物凄くニヒルな作風にピッタリな文体、、、それから「!」マークの多さだ!、、、「!」マークが打たれる!、、、リズムが激しくなる!、、、しかしまた、、、「…」の羅列で言葉が弱々しく途切れていく、、、まるで虚無から文章が縛り出てきて、、、また虚無に沈んでいくかのような、、、

この文体で戦争の時代を描いているんだ、、、二十世紀の悲惨な歴史を体験した作家が、、、絞り出すように、、、「点点点」や「!」マークで途切れながら!、、、語る、、、絞り出すように語る、、、虚無からかすかに立ち上がり語る、、、そして、、、また途切れるようにその声は消えていく、、、この文体を真似したらフランス文学好きにはスグに「セリーヌの真似だ!」と突っ込まれちゃうくらいの個性的文体だ!、、、え?、、、この記事そのものの文体が、、、セリーヌの影響を受けちゃってるって!、、、ああ、、、そうかもしれない、、、なんてこった、、、

しかしこのセリーヌ、、、

政治的には露骨な反ユダヤ思想だったり、、、ご本人はもはや、、、問題だらけの人物!

しかし、、、そういう屈折した人物だからこそ、、、こんなニヒルで強烈な文章を残せたとも言える、、、

というわけで私としては、、、彼の作品の中では比較的「問題発言」が少なく、、、小説としてもかなり楽しく読める『ギニョルズバンド』こそを、、、セリーヌ未体験の方には「入門」として勧めたい、、、

ただしこの『ギニョルズバンド』に出てくる、、、第二次世界大戦の、、、空爆に晒されている街で民間人が無機質に死んでいく場面は、、、とんでもない悲痛なインパクトである、、、こんなに戦争の恐ろしさをなまなましく描写できるのに、、、私生活での差別発言問題やら暴言事件やらさえなければ20世紀最高の戦争文学作家になれていたかもしれないのに、、、

だがその一筋縄ではいかない「アブなさ」が、、、まさにセリーヌの本の奇妙なカリスマになっているところは否めない、、、

※追記:記事を挙げた後で気付いたことですが『ギニョルズバンド』は2024年3月現在、日本語版はプレミアがつくほどの希少古本扱いらしい。うへえ、いまや貴重なその本を私、まだキレイな状態で持ってるわけか!よしこれは大事にしよう!


子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!