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産後こんなはずじゃなかった… 地域で活動する助産師と女性の健康①

「子どもを産んだら、母乳は出るものだと思ってたのに…」
「赤ちゃんのことが気になってご飯を食べられない」
「おっぱいをあげたのになかなか泣きやまない」
「産後、からだの疲れがとれない」「眠れない」etc

「こんなはずじゃなかったのに……」

はじめてのお産を経験した女性たちの多くが、
産後、思い描いていたことと現実のギャップに直面すると言われます
(なかには、第二子の産後がたいへんだった、という方もいますが)。
「産後、こんなはずじゃなかった問題」をなんとかしようと
産後の女性がひとりがんばっても、なかなかうまくいきません。
では、どうすればいいのか……。
助産師歴20年、地域で活動する井上愛智(いのうえ・まち)さんに
「産後ケア」についてうかがってきました


「あれ? 私、お昼食べるの、忘れちゃった」みたいな……

はじめてのお産を乗り切って、ほっとしたのもつかの間。
病院を退院して、家に戻り、赤ちゃんと一対一になったとき、
多くの新米ママは
「こんなはずじゃなかったのに……」
と言いたくなるような現実に直面するといいます。
 
その一つが、食事。
 
「赤ちゃんに気をとられてしまって、
食べるの、忘れちゃうお母さんが結構多いんですよ。
私も、上の子を産んだとき、そうだったんです。
当時、私は病院に勤めていて、
赤ちゃんは泣くのが仕事くらいに思っていたのですが
それでも、いざ自分が子ども産み、
家で、わが子と一対一になったときに
『いやあ、こんなに泣くのか・・・』って思いました。
病院では、お母さんたちに
『赤ちゃんが泣いたら、すぐ抱っこしてあげてください』
という指導をしていたので、
私も、うちの子が泣くとすぐ抱っこしていたんですが、
それをやっているうちに時間がどんどん過ぎて
『えっ、もう午後3時だ。今日もお昼、食べるの忘れちゃった』
みたいな感じで。
そういうふうにご飯をちゃんと食べていないと、
おっぱい(母乳)が出なくなっちゃうことがあるんですよ」(まちさん)

まちさんが運営する助産院「mid-U」が提供する
産後ケア(デイケア・宿泊)で提供するお昼ご飯。
玄米ご飯(あるいは雑穀を混ぜたご飯)に、
地域でとれた野菜や山菜と、たんぱく質は植物性のものを使った
プラントベースな食事を、玄米菜食を研究した食の専門家が心をこめて作る。
お母さんが食事をゆっくり味わえるよう、
まちさんはお母さんに代わって赤ちゃんを見守る。
さりげなく母子を気づかうひと言を添えて。

そんな新米ママにとって、
助産師さんが心をこめて作った
おいしくて体にいい食事を
ゆっくりと味わいながら食べられることは
 
栄養補給だけじゃない、
すぐそばで見守ってくれる人がいる、という安心感など
目には見えないパワーを与えてくれる。

子育て、という、未知の世界の扉を開いたばかりの
新米ママさんにとって、それは大切な「産後ケア」の一つなのです。

「産後ケア」は高くて手が出ないーー今は、そうではないんです

数年前から「産後ケア」の必要性が声高に言われるようになった印象がありますが、
ところで、「産後ケア」とは、どのようなことを行うのでしょうか。
 
下記に、厚生労働省の産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン(令和2年8月改定)から、「産後ケア事業」の目的について書かれた記述を抜粋してご紹介します。

市町村が、分娩施設退院後から一定の期間、病院、診療所、助産所、自治体が設置する場所(保健センター等)または対象者の居宅において、助産師等の看護職が中心となり、母子に対して、頬親の身体回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子の愛着形成を促し、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援することを目的とする。

厚生労働省の産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン(令和2年8月改定)

市町村が行う「支援」とは、ザクっと言うと
助産院、産婦人科の病院・診療所などが提供する
「産後ケア」の料金について、
その一部を市町村が負担する、というもの。
 
その分、利用者側が負担する金額は低く抑えられますから、
「産後ケア」が受けやすくなるわけですが、
市町村間の連携が課題となっており、

今のところ、補助を受けられるのは、
住民票のある市町村が委託する
施設が提供する「産後ケア」を受けた場合のみです。
 
「里帰り出産をされた母子を受入れることがあるのですが、
住民票が相模原市にないので相模原市の補助を受けることはできず
自費になります」(まちさん)
 
自費になると、お母さんたちが「産後ケア」を受けるのをガマンするのではないか
そうなったら、「健やかな産後」「健やかな育児」の実現は難しいだろう。
そのように考えて、自費の部分については採算を度外視して
値段を下げて提供する、助産院もあるのです。
 
まちさんが運営する「mid-U」もそんな助産院の一つ。
 
一助産院の努力だけでなんとかなるような問題ではないような
気がしてならないのですが……。

これについては〝場〟をあらためまして
みなさんとともに考えてみたいと思っております。
 
それでは、話を元に戻します。

「産後ケア」の気になる内容は……

ケアの内容は、助産師・助産院によって異なりますが、
「産後ケア」における柱は、以下の4項目になります。
 
①お母さんの養生
・出産という大仕事を果したお母さんが休息できるようサポート
・体を回復させる食事と、ゆっくり食べられる時間を提供                     など
 
②授乳の支援
・乳房のハリや乳頭のトラブルなどのケア
・授乳のしかた(子の抱き方、子の吸着)についてアドバス                     など
 
③メンタルヘルス
・お母さんの悩みに耳を傾ける
・必要に応じて親や夫との関係調整                                  など
 
④育児技術の習得
・育児についての悩みを聞き、専門家として助言
・赤ちゃんをお世話する様子を見せ、お母さんにその技を学んでもらう      など
 
上記はあくまでも「産後ケア」の柱です。
 
実際は、助産師さんが〝得意とするケアの技術〟〝持ち味〟が加味され、
その人ならでは、その施設ならではの「産後ケア」が提供されています。
 
たとえば、まちさんが運営する助産院「mid-U」が提供する
「産後ケア」(デイケア・宿泊)の場合ですと、
 
藤野という、自然に恵まれた環境のなかで
母子ともに、ゆったりとした、ひとときを過ごせる、ということが
他にはない、「mid-Uならではのサービス」と言えるでしょう。

産後ケアを受ける母子が過ごす和室。
昔ながらの広い縁側。
日向ぼっこをしタラ気持ちいいだろうなあ。
縁側からの景色と白い椅子。

取材におとずれたこの日は
名前はわからないけれど
野鳥の歌い声が耳にここちよかった。
 
それと、姿は見えませんでしたが、雉の声も聞こえました。
 
都会の喧騒になれている人には
最初、「静かすぎる」と感じることもあるかもしれませんが
 
朝、鳥の声で目が覚めた瞬間、
何かにふりまわされて過ごす日常から解放され
安らいだ気持ちになります。
 
そして、母子がいっしょに過ごす部屋が和室である
ということも、利用者側にとって〝いいこと〟があります。
 
産後ケアを受けたいのだけれど、上の子がまだ小さくて
手が離せないから、受けられないという、
お母さんの声を聞いたことがあるのですが、
 
「うちは和室に布団を敷いて、お休みいただく形なので、
上のお子さんもごいっしょに過ごしていただけます。
また、休日に、ご主人もいっしょに過ごしたいのでしたら、
どうぞ、どうぞ、っていう感じ。
ベッドじゃなく、和室だからできることですよね」(まちさん)
 
その他、提供するサービスとその料金など
詳細は、こちらまで👉 https://mid-u.life/
 

「mid-U」さんは、診察も、ケアも、母子がくつろぐ場も和室。
その「和室」は、実家に帰ってきたかのような気分にさせる。
なぜだろう……。


さて、今回は「産後ケア」についてお伝えしましたが、
まちさんには、「生涯にわたっての女性の健康」についても
お話をうかがっております。
 
次回は、「助産師のケア」と「いいお産」について
みなさんといっしょに考えていきたいと思っています。

【お話をうかがった方】
藤野の助産院「mid-U」 院長 井上愛智(いのうえ・まち)さん  
助産師・看護師。病院での助産、NICU(新生児集中治療室)看護などを経て、開業助産師に。
お産を扱う病院がない藤野・相模湖・津久井・上野原で、
「つくい助産院」の早船院長とともに助産を行っている。
2023年、助産院「mid-u」を開設、産後ケアをはじめ「生涯にわたる女性の健康づくり」をサポート。
このほか、訪問看護、啓もう活動など、地域でさまざまな活動を行っている。
ホームページhttps://mid-u.life/

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