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かわいいひと

「かぼちゃいらない、買わないで」と、スーパーのセルフレジの一角で母親らしき女性に駄々をこねている子供がいて、かわいいなと思う。知らない犬と犬が飼い主同士の会話をよそにガウガウ喧嘩をしているのも、かわいい。

友達が「そろそろ会いたいね」なんて連絡をくれるのもかわいくて、私の周りはいつだってかわいいが飽和している。

私を「かわいい」と思う奇矯な人もいて、これは本当にただの惚気話でしかないのだけれど、遠距離中の恋人は毎日電話越しに私に「かわいい」と言う。それがよくわからないタイミングで言うもんだから「かわいくないよ」と私は返すけれど、恋人は「〇〇ちゃんはかわいいんだ!」と、訴えてくる。

そういうあなたが一番かわいいことに気づいているのは、きっと私だけ。

自分の容姿もそうだし、声や性格もろもろすべて、かわいいとは到底思えないけれど、恋人から見た私がかわいく映っているのならそれで無問題なのかもしれない。恋人は「自分だけが分かっていればいい」と、私に理解できない私のかわいさを独占している。それがすごくかわいい。「かわいい」と言われるたびに、私は恋人をかわいいひとだな、と思う。

書き終わって読み返してみたら、本当にただの惚気話だった。


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