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[小児科医ママが解説]「風邪の咳」と「喘息の咳」は、どう区別する?


お子さんの咳が長くつづくと

喘息(ぜんそく)じゃないのかな?

新しい薬をもらったほうがいいのかな?

と心配になりますよね。

咳が長引くときの受診の目安」や「咳の薬」については、それぞれ過去noteにまとめています。

今回は「風邪の咳」と「喘息の咳」をどう区別するか、解説していきます。


喘息の診断基準は、世界でもさまざま。


まず、お子さんの喘息の診断基準について。
世界的にも様々な指標があり、絶対これ!というものは、実はありません。

が、どの指標にも通じる胸痛の項目としては、下記になります。

①今までのゼイゼイ・咳のエピソード
花粉・食べ物のアレルギー・アトピーがあるか。
ご両親や兄弟などの喘息・アレルギー性疾患。

詳しくはこちらにまとめていますが、
特に①の「ゼイゼイ」については、誤解が多いので、補足します。

ここでいう「ゼイゼイ」とは

医師が聴診器できいたときに聞こえる、
気管が狭くなったり、炎症を起こしているような音。

のことです。

聴診器をあてないで聞こえる「ゼイゼイ」「ゼロゼロ」とは違います。
聴診器をあてないでも聞こえるこうした音は、
実は単に、鼻水や痰がのどにつまって聞こえる音だからです。

…とはいえ、ただの風邪でも「ゼイゼイ」するのが、子ども。


一応上記のような指標はあります。
が、「お子さんの喘息は、非常に診断がむずかしい」ということを、
過去noteにも書きました。

というのも、お子さんの場合、
ただの風邪でも、聴診器でゼイゼイする音が聞こえることが、多くあるからです。
これは別に、喘息のお子さんに限ったことではありません。

たとえばRSウイルスやライノウイルスといった、
風邪の代表格のウイルスは、
気管に炎症を起こしやすいウイルスです。
この場合、聴診器で聞くと、喘息のようなゼイゼイした音が聞こえます。

一方で、もともと喘息のお子さんがこうしたウイルスにかかったときも、
やはりゼイゼイの音が聞こえます

喘息のお子さんは、ちょっとしたウイルスの感染でも、
気道に炎症が起きやすかったり、気管が狭くなりやすかったりするからです。

RSウイルスなど、
ウイルスのせいでゼイゼイした音が聞こえるのか。

あるいは

ウイルスをきっかけに喘息の症状が出て、
そのせいでゼイゼイした音が聞こえるのか。

この2つを区別するのは、医師でも非常に困難なのです。


「ちょっと喘息の薬をトライしてみる」のは、医学的にも正しいやり方。


では、結局、
お子さんが喘息なのかどうか。
お子さんが喘息の薬を飲むべきなのかどうか。

どう判断しているかというと、

聴診器で聞いた時に、ゼイゼイ聞こえる。
こんなエピソードが、3回以上ある。

こんなときに「もしかしたら、喘息なのかもしれない」と考えます。

この時点で「絶対にこの子は喘息だ」という診断はできません。
たまたま、ゼイゼイしやすいウイルスに感染することを、
繰り返しているだけかもしれないからです。

ただしゼイゼイ聞こえたときに、とりあえず、喘息の薬を飲んでみる。
これは、医学的にも正しい方法です。

過去noteにも書きました。)

お子さんのゼイゼイが、風邪か喘息か、
どっちが原因かわからない。

でも、もし、喘息の薬をのんで、
ゼイゼイの頻度が減ったら、
お子さんは喘息だったのかもしれない。

という「診断的治療」という方法です。

風邪だと思って受診したのに、
お薬の説明をみたら「ぜんそくの薬です」と書かれていて、
ビックリしましたというお声も聞きます。

別にその医師が「あなたのお子さんは喘息です」と診断したわけではなく、

喘息のときに聞こえるような、
ゼイゼイした音が聞こえました。

このゼイゼイは、風邪のせいか、喘息のせいか、
判断するのはむずかしいです。

でもこれを飲んでゼイゼイが良くなれば、喘息の可能性がある。
ということで、ひとまず飲んでみてくださいね。

という意味なんですね。

いかがでしょうか。

診察室ではなかなか医師に聞けないけど、ちょっと気になることを、
これからも発信していけたらと思います。

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