79.逆接採取隊

「隊長、ありました!」
「なんだ?」
「『しかし』と『ところが』です」
「駄目だ。そんなものは珍しくもなんともない。放っておけ」
「こっちにも、別の種類を見つけました!」
「そっちのはなんだ?」
「『それなのに』です」
「そいつもありふれてる」
「隊長、少し長ったらしい『ここまではよかったのですが』というものも見つけたんですが、やっぱり捨てておきますか?」
「いや。……それは、一応取っておこうか」

 夜に、各局でその日のプロ野球の試合結果を振り返るスポーツニュースを放送する。もちろん、すでに勝敗は出ているのだが、この時間に初めて見る人も多い。そこで試合のダイジェストでは、途中までどっちが勝ったかわからないような編集でわざとハラハラさせるという作り方をしている。
 そのために、ナレーションはどうしても、
「あっさりと先制点を取り、楽勝パターン。しかし、その裏……」
「リリーフが見事にこの回を切り抜けました。ところが、ホッとしたのか……」
 と逆接の接続詞オンパレードとなるのだ。
 一ゲームごとに二、三回は試合展開が変わった方が面白い。そうすると当然『しかし』とか『ところが』という言葉が多用されることになる。とはいえ、毎度『しかし』ばかりでは芸がない。視聴者にも飽きられてしまう。
 何か新鮮な逆接の言葉はないものか? とスタッフはこの稿の冒頭のように、いつも言葉を探しているに違いないのだ。 

【モンダイ点】
◎そのうちにスポーツニュースで「豈はからんや」とか「however」とか使い始めるのではないか?

(ステラ/1999/10/21)

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