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【23】失いたくなかったもの

予感通り「元の関係に戻そう」と告げられた。その瞬間、やっぱりか…と納得し「わかった」と言って荷物をもち玄関に向かった。

でも帰れなかった。
玄関先で座り込み心が落ち着くの待った。

彼のいる部屋にもどり、理由を聞いた。

彼は飛び抜けた豪快さと繊細さを併せ持っている。その繊細さゆえ、私の不機嫌さに対する心地悪さをどうしていいのかわからず緊張し、一緒にいるのが苦しくなった。

「緊張する」が彼のキーワードだった。

大切にしたいがゆえに「緊張する」と以前から聞いていた、けれどそこまで緊張しているとは想像できていなかった。

「ごめんね…」

彼が緊張するのは、私のせいでしかたない。
受け入れるしかないように思えた。(この時は)

「元の関係に戻ってもいいから、ハグしてほしい」
私の今の気持ちを伝えた。

彼は「情がわくからできない」と言った。

その言葉を聞いたとたん、私の心が悲鳴をあげた。

「ハグしてくれなきゃ困る」
涙があふれて、声をだして泣きだしていた。

「俺だってさんざん考えてだした答えだから、変えるのは嫌だ」

と押し問答が続いた。

彼の思いは知ったことじゃなかった。
何を言われようとハグだけは譲れない、と私の心の声は叫んでいた。
「嫌だ」「困る」と子どもみたいに駄々をこねた。

付き合うもSEXもいらないけど、ハグだけはいる。

私が欲しいのはコレなんだ…と自分でも驚いていた。

肌に触れ柔らかな感触と体温を感じ、身をゆだねる。
愛する人に触れられる「安心感」が、私にとって一番大切なもの。

これは人間に生まれた根源的な欲求だと思う。

譲らない私に彼がおれてくれた。
「ふたりが納得する答えをださなあかんな」と冷静に彼が言った。 

ふたりが納得もなにも、私のハグは譲れなかった。

寝るのは別の部屋にするから、寝る前にハグさせて欲しいとベットで彼を背中から、彼を抱きしめた。

本当にそれだけでよかった、気がすんだ私は和室に布団を敷いて眠った。

朝、目が覚めて布団の中で思いを巡らせていた。
私は勝手に自分の理想の彼氏像を彼に押し付けていたんだなぁ
彼に求めすぎていたんやな~

それが、彼に緊張をもたらしていたんだ。
やめよう、彼を彼のままを受け入れ信頼しよう。

それは、私が3人の子どもたちが教えてくれたあり方。

「生きてるだけでいい」

そ~いうことか。それでよかったんや。

彼は初めから私に何も求めない。
私がワタシであるだけでいいと思ってくれていた。
(大人だなぁ~)

彼と新しい関係をつくっていこう。
彼氏・彼女とか、付き合ってるとか、セフレとか、そんな一般的なカテゴリーにとらわれない、私と彼だけの関係。

彼がカレでいて、私はワタシでいる関係。
ここから始めればいい。

いったん、付き合っていた関係を終わりにしようと彼に手紙を書いた。
今までの事を思い出し、感謝しかなくて泣けてきた。

その時、彼が起きてきて「昨日はごめんな」と伝えてくれた。

こちらこそだった。

「ううん、これ書き終えたら出ていくね」って言うと「出ていきたいんか?」と聞かれた。

「違うよ」「私、ひとりは無理やし」と答えると

「じゃぁ、出ていかんでええやん」とかえってきた。
(元の関係に戻しても、ココにいたかったら居ていいと言う意味で)


近くのカフェへでモーニングを食べた。
私は布団の中で閃いた、「新しい関係」について話した。

「友だち以上、彼氏未満ってやつか?」と聞く彼に、「そんなんちゃうねん、そんなカテゴリーにない2人の関係やんねん」と答えた。

彼と一緒にいて楽しいのは、私の話が通じるところ。
内面のことや目に見えないモノ(お化けとかじゃないよ)について、私の感覚的な言葉を理解してくれる。

とにかく、私は彼の緊張を理由に「元の関係に戻す」は納得いかいことに気づいた。それは、彼の問題で私の問題じゃない。

私を嫌いだとか、私のここが嫌ならわかる。
他に好きな人ができたと言われたら納得せざるを得ない。

そうじゃなくて、「緊張するから無理」は、私が「無理」

この時は、心や話を聴くプロをしてて良かったと思った。
彼を納得させるだけの理論と確信をもって話せたから。

彼の「緊張」と私の「不信感」は脳みその癖。
これをお互いにやめようと提案した。

「そんなことできるかなぁ・・」という彼に、仕事の時に彼が言う言葉を返した。「できるかなぁ?じゃなく、やるの!」

最終、「やってみよう」に落ち着いた。


私は楽ちんになり、彼のありのままを受け入れた。そして「幸せ」を感じて毎日を過ごした。すると自動的に彼が緊張することはなくなった。

あれから8か月…
一緒に寝るようになったしSEXもする。

そして、私が望んでいた彼氏像を彼なりのペースで、叶えてくれるようになった。

今でも付き合ってるとか、彼氏だとは思っていない。彼はカレで、私はワタシ。そこに愛があるだけ。

それを「付き合っている」と呼ぶのかもしれないけれど、そんなことはどうでもいい。私たちが居心地よくいるだけ。

私にとって大切なものに気づくために、ネガティブに見える今回の状況が起きたんだと思う。あの月食の日、月が隠れ真っ暗になった空に瞬く無数の星の光は、それを私に教えてくれていた。

「闇」がなければ「光」はみえない。


いつも思うけど、人生には無駄がなく必然で埋め尽くされている。
ユーミンの歌通り、「目に映るすべてのものがメッセージ」だなぁって思う。


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