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詩やエッセイが好き。大好きだった生地デザインの仕事を休職中。小さい雄の恐竜2頭と大きめ…

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詩やエッセイが好き。大好きだった生地デザインの仕事を休職中。小さい雄の恐竜2頭と大きめのパンダがいます。83’生まれ。関西在住。2020.10、ALS・筋萎縮性側索硬化症。何もあきらめない。言葉で自分と誰かを応援できるなら嬉しいです。

最近の記事

詩・ときめくもの

ひよこまんじゅうの箱は 花柄で六角形 真ん中にひよこの絵 子供のときの宝箱 きれいな色彩と やさしいタッチが たまらなく大好き 毎日引き出しから 取り出しては眺めて たぶん最初のときめき 箱の中には サンリオのシール りぼんの付録のレターセット 透明ジェルみたいなシール セボンスターのペンダント 桃の香りの丸い粒々 瓶に入った星の砂 大事にしすぎて 使うことなく なくなった宝物 もったいないから 使いなよと言われて もったいないから 使えないと答えた 大人は分かっ

    • 詩・私の太陽のにおい

      からっと乾いた洗濯物 まだ温かい干したてのふとん 走って腕に飛び込んできた子供 夏の暑さに負けないひまわり 肌寒い日の窓辺で日向ぼっこ 太陽のにおいはそばにある 洗いたてのふかふかになった犬 その胸に顔をうずめて 鼻をこすりつけて じゃれ合ったあとに「ワン!」 と叱られてしょんぼりする 今はもうできないけれど 思い出せばすぐそばにある 私の太陽のにおい

      • 詩・筑前煮

        思い出すのは なつかしい味 でもなく あたたかい食卓 でもなく 延々と小言を 聞かされて おいしくなくなった 筑前煮のこと 具材が減ってきて 見えてきた 出汁に浮かぶ油 まあるい油は 水玉みたいで 小さな円と円の境目を お箸でつついて ひたすら大きくして やり過ごすのが任務 少し甘めの出汁も 耳が痛い話も 全部子供のためだった 親になった私の任務は 思い出してもらえる 記憶をいっぱい作ること できれば苦いのは少な目で

        • 詩・ぱちぱちと

          目をぱちぱちさせて 世界を見れば 手をぱちぱちと たたきたくなる 景色が見える 線香花火がぱちぱちと きらめいて やがて消えて せつないと知る 泡がぱちぱちと はじけるように 案外と短い時を 薪がぱちぱちと 燃えていくように 生きられると いいよね

        詩・ときめくもの

          詩・豊かさ

          すぐに捨ててしまうような ものばかり買ってしまうよ 有り余る豊かさが 時間とコストの パフォーマンス トレンドに憑りつかれて お肌の水分と映えるか否か 身も心もカラカラ栄養失調 見返りなく 意図なく 与えること 受け取ること 大人の中に入ってる 子供が今日も困ってる 目には見えないものが 見えない世界で暮らせて 本当に良かった 生きてるけど 限りなく死んでる 生ゾンビみたいな私 今日も定点観測 異常だらけで 異常なし

          詩・豊かさ

          詩・何年も前の自分へ

          幸せを 貯めておいて いつでも 取り出して 使えるなら 苦しい時も なんとかなるかな 今のうちに 遊んでも 今のうちに 休んでも なるようにしか なってない 負けてもくじけても 腐ってもひねくれても 痛くても辛くても 悲しくても疲れ切っても 理不尽でも納得できなくても それでも 最善を尽くして 今を積み重ねて よく頑張ってくれて ありがとう 何年も前の自分よ すべての伏線を 回収するための 置手紙なら 今たしかに受け取った 楽しみだね 何年も先の自分よ

          詩・何年も前の自分へ

          詩・夜の雨

          雨粒が 脈絡もなく 室外機の上で ステップ 眠りから 引き剝がされて ささやかな苛立ちに 寝返り 今日が窓辺に 貼りついて 帰る気配も 見当たらない 朝が来たとて 曇り窓 体中の水が 濁っていくような 毎日を 雨で洗い流して 新しくなった 明日を着たい

          詩・夜の雨

          詩・春の日

          花びらが 春を連れて 帰っていく 陽の光に笑い 雨と一緒に泣き 雷に肩をすくめ 風と遊び楽しむ 水色に晴れて 桃色に満ちる あるがまま 笑顔も涙も 何十年 何百年と 見守ってきたのね ここから動けない体 見ているだけの体 似たような私 どうすることもできなくて 悲しいのは 似てないな 大事な人を 抱きしめることも 両手で顔を包むことも 背中をさすることも 私には出来ません それでも この世界は 色があふれて 素敵だった 花びらが 私を連れて 帰っていく

          詩・春の日

          詩・すーとはー

          ため息つくとき うまくいかなくて ため息つくとき うんざりしてて ため息つくとき さみしくて ため息つくとき 焦がれてて ため息つくとき 一気に吸って 長く吐く 一度で終われば それはため息 繰り返したら 深呼吸 すー いらないものを 集めたら はー すっきり出して 元通り すー 新たな空気 取り込んで はー 切り替え完了 リスタート 力を抜けば うまくいく 流れに任せて 大丈夫

          詩・すーとはー

          詩・たぶん泣く

          何の味もしない日々に 全部持ってかれた じわじわと奪われる 生命と感受性 やり場のない感情で 血管が焼け焦げそう 舌が動かぬ口に キャラメルサイズの肉 喉の渇きにストローで ちびちび飲む水 満足感には程遠い よくも打ちのめしてくれたな 数々の屈辱を悔しさを悲しみを 私はずっと忘れない というわけで いい人のフリは やめました 病の背中に ドロップキックを 心無い言葉に かかと落としを 何の味もしない日々に 延髄切りを すさんだ心に あたたかなハグを 元の体を

          詩・たぶん泣く

          詩・いろんな日

          大事な人の 寝ぐせまで 愛しい日がある 憎い人の 手相まで 苛立つ日がある 生きてて よかったと 感謝する日がある 生まれてきた 意味が分からないと 嘆く日がある 平凡すぎて ヒマな日も コントラストに 疲れる日も もう死にそう 生きてたから 思った 全部知ってた 生きてたから 知ってた どんな日も 頑張った自分よ ありがとう

          詩・いろんな日

          詩・いすに座って

          ならんで座った夕方も コーヒーがぬるくなっても 黙って人のを一口食べてても 笑わせようとしたモノマネも 昨日のように思い出す 覚えてない 忘れてもいいような 確かに色があった時間 記憶に残らない 無限に思える 無駄をぜいたくに 使い捨てて行こう 人にしかできないから それでいいの 忘れていくのは 失うことと 同じでもない いすに座って 思い出す

          詩・いすに座って

          詩・雨と人

          雨と人は どこか似ている みんなでひとつだったところから 地上でひとつに分離する 時間が終われば元のひとつに還る 多すぎる雨 降らない雨 大きすぎる思い 枯れて尽きた思い 欠けたら満ちて 満ちたら欠ける ずっと同じでいられない どこから来たのか帰るのか それは誰にも分からない 土に還る 海に還る 空に還る 傘もささずに 踊るよ 意味もなく むやみに 心揺らそう 際限もなく その日 その時が来るまで

          詩・雨と人

          詩・海に来て

          春の瀬戸内 空を溶かした 海に島並 水平線に 負けじと 鳥が並んで 点線を描く 通る船が 波を呼び 水面を踊る 見えるものは ただそれだけ 風に歌うことも 空に飛び跳ねることも 私にはできない いま息をしている ただそれだけ

          詩・海に来て

          詩・蛍光灯のひも

          夕陽が帰って 窓の外 寝転ぶ畳 見つめる天井 蛍光灯 長いひもに 手を伸ばす 一度引けば まぶしくて 二度引けば 丁度よく 三度引けば 豆球オレンジ 四度引けば まっくらけ もいちど 引いたら 明るい世界に なってるかな 蜘蛛の糸みたいな 蛍光灯のひも 一人と言わず みんな助かれ

          詩・蛍光灯のひも

          詩・出がらし

          出がらし みたいに 誇らしく あれたら 暗い底から 出れるかな ふたが開くのを 待っている 熱いお湯を得た 茶葉のように 色や香りと 踊りながら 時が来るのを 待っている 二煎目はない 人の命に 思い巡らせ 今このときを 味わって できることを できるだけして 出がらしに なりたい

          詩・出がらし