見出し画像

最低限の傷で ショートショート

昔から、人と上手く馴染めなかった。人の言葉を馬鹿正直に受け取っては、何度も痛い目を見た。
人付き合いが苦手、という免罪符の元、中学高校は平和に暮らしてきたが、その間に人間関係を構築するすべを忘れた。

社会から省かれることは怖くない。でも、それに伴う不都合を処理するすべを私は知らない。

大学に入ってからは、この状況を脱却しようとコミュニケーションに関するいろんな本を読み、積極的に人に話しかけた。
でも、結局は真面目な人という印象からは脱却できなかった。
話し相手は、賢い人都合のいい人として扱われ、2年の頃にはそんな取り繕いもやめた。

社会人になり製薬会社に勤める今、私は少しだけバカなふりをすることにした。ミスをして下に見られ、笑われるくらいの人間の方がいい。

会社で扱っているトラネキサム酸は止血剤として使われることがある。
最低限の出血で、社会に馴染むためにするこの笑顔はそれによく似ているように思える。

私は今日も少しだけミスをし続けた。

お題 トラネキサム酸笑顔 415字

あとがき

普通に忙しなくてできなかった。計画性大事

💉たらはかにさんの企画に参加しています事後参加しています💉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?