観劇感想vol.31 劇団☆新感線「髑髏城の七人 Season月 下弦の月」

劇団☆新感線とは、敢えてご説明する必要もないほど有名ですが
古田新太さん、そして且つては渡辺いっけいさんや筧利夫さんも所属されていた1980年旗揚げの劇団です。
この度夏秋公演「いのうえ歌舞伎 バサラオ」の上演決定、ならびに演劇を映画館で上映する「ゲキ×シネ」プロジェクト20周年を記念した過去作品一挙上映キャンペーンを執り行っており
普段劇場へ足を運ばれない方も、その名を目にする機会がやや増えているかもしれません。

この「ゲキ×シネ」キャンペーンで上映される「天號星」を近々観劇予定なのですが
先立ち、加入している動画配信サービスNetflixで鑑賞可能な劇団☆新感線さんの過去作品であり代表シリーズのひとつ「髑髏城の七人シリーズ」より「Season月 下弦の月」を視聴いたしました。
尚、「髑髏城の七人」は花鳥風月の4つ+極の合計5つのシリーズとなっているようですが
「月」だけは「上弦の月」と「下弦の月」のダブルチーム制で上演されていた模様です。

また、この「髑髏城の七人」シリーズは
今はもうなくなってしまった、かつて新木場にあった劇場IHIステージアラウンド東京(通称ステアラ)のこけら落としとなった作品であることも有名な話です。
こちらは、円形の劇場の外周に演技スペース、円の中心部に客席を据え
客席自体が回転することで、暗転や装置移動等のラグタイムなくシームレスな場面転換が可能となった画期的な構造の劇場です。
誰しも思いつきはしたものの実際やったことはなかったであろう逆転の発想を実現させたすごい劇場でした。
閉館してしまったのは大変残念です。

というわけで。悲しいことにステアラについては完全に余談だったわけですが
お芝居を見に行くのはちょっとハードルが高い方は是非「ゲキ×シネ」を
「ゲキ×シネ」を見に行くのはちょっとハードルが高い方は是非Netflixを
一度ご覧いただきまして、最終的には劇場での舞台観劇の楽しさと出会って頂けたらと思います。

そんなわけで感想です。
個人の感想なので本来の演出意図と乖離した発言しているかもしれませんがご了承を。
あと一応、今回も感想にはめちゃくちゃにネタバレを含みます。

劇団☆新感線「髑髏城の七人 Season月 下弦の月」

視聴可能配信サービス
Amazonプライム(500円でレンタル可)
Netflix

キャスト
宮野真守
鈴木拡樹
廣瀬智紀
木村了
松岡広大
羽野晶紀
千葉哲也
インディ高橋
中谷さとみ
中村まこと
伊達暁
肘井美佳
安田栄徳

す~~~~~ごかった面白かった!!!!
なんというか、全部見どころ。全部トロ。
始めから終わりまで、台詞の掛け合い、殺陣、見栄、ダンス等々怒涛のように押し寄せる情報量。
序盤のツカミ的な温度感というか勢いが全編ずっと続きますね。一時も目が離せない。
笑いあり涙あり、エンタメの極みのような作品でした。

まさに舞台演劇の新たな可能性を拓いたステアラのこけら落としに相応しい劇団ですね劇団☆新感線。
俳優さんの間では「くるくるシアター」と呼ばれてるそうで。身も蓋もない。
場面転換をなくした故の凝った舞台装置、シームレスなシーン展開、スクリーン投影を生かした演出
私はステアラ現地で観劇したのは1回だけだったのですが、ぜひまた行きたいめちゃくちゃ面白い劇場だった。
なくなっちゃったの本当に残念……
再開することを願っております。
設備不具合の頻度とチケット代が通常の劇場に比べてだいぶ高いのが玉に瑕ですがね。

衣装も華やかで、キャラクター性を追求したデザインや素材感を使用されているのいいですね。
時代背景を忠実に再現しているのもそれはそれで好きですが
敢えて無視した演出の衣装も、独自性というかクリエイティビティを感じてかなりよいです。
舞う時や殺陣の時のかっこよさや美しさも踏まえた作りが可能となります。

作中の登場人物で個人的に好きなのはやっぱり蘭兵衛ですね。
蘭兵衛が天魔王の手に落ちるところは涙なくして見られない。
結局みんな亡き主を想っている点は変わりない、かわいそうな人達ですね。
誰か主君の下に着いて、我が主こそ我が命ってかんじで生きてきた人達が
主がいなくなったからじゃあ自由に生きていいよとはそりゃ無理な話です。

あと宮野真守さん、当然声優としてのお仕事は何度も見た(聞いた?)ことあるんですが
舞台俳優としてのお仕事をちゃんと拝見したのは初めてかもしれない。
個人的に舞台俳優の資質として最も重要なのは声だと思ってるので、声優として名を馳せている方が舞台に於いても映えるのは道理ではありますが
捨之介の一見飄々とした佇まいからの、かつての主や共に仕えた仲間達への想いや哀しさが現れる演技は本当にすばらしかったです。
今後は役者のお仕事も追おうと思います。

全部トロと荒々しい感想を書きはしましたが、とはいえストーリーもしっかりとした起承転結で
中盤悲しい展開はあるものの〆は爽快感ある終わり方で
おそらく誰が見ても楽しめるストーリーなのではないでしょうか。
殊更見せたい場面ばかりが強調されて全体のストーリー性はさほどというお芝居もなくはないですが
そこは流石劇団☆新感線、ハラハラせず安心して追えるお話になっておりました。
今後見に行く予定の天號星も楽しみです!


※劇団☆新感線オフィシャルサイト
※ゲキ×シネ20周年記念プロジェクトサイト

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