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離婚式 42

 乱暴に突いてくる。
 でも苦痛じゃない。
 後で沁みるかもね。
 それでもこの肉棒はとまらない。
 いいえ。とめようがないのかな。
 それでもボクには下腹からの熱い律動に、官能の海がかき混ぜられて。全身が雷に打たれたように痺れている。
 もう知的な思考がまとまらない。
 血肉の滾るままにこの海に漂っていたい。
 首を左右に振って、ショートの髪の先辺が首筋に当たる。それすらも肌から熾火のような火種を掘り出していく。
 そうして背後から手を掴まれた。
 背中をのけ反らされた。
 乳房が左右に揺れている。
 その刺激で乳首にも赤い欲望が凝っている。
 ああ。
 そろそろ高まってくるのね。
 なかで膨らむのが伝わって。
 あああ。
 何か温いものが流しこんで。
 こんなに温いなんて。

 行為をまた繰り返して。
 やっと落ち着いてみると、そこはこの中年男に当てがわられたセーフハウスだった。ご丁寧に仮眠用のソファベッドがあり、そこに押し倒されたのだとわかる。
 そうそう。
 この男、ボクをBistroに誘って、飲み物に何かいれたわね。
 酔いの回りが早すぎた。
 手足が効かなくなった。
 それでここにいるのね。
 そう、撮影されている。
 そんなもので縛ろうというのだけど。
 ふふふ。
 それが貴方自身が陥穽に陥れられるのだけど。覚悟はいいの。
「・・なにか可笑しいのか」
 ほらもう所有物扱い。
「・・手がはやいのね」
 満足気な醜悪な笑みを浮かべる。だらしなく垂れた下腹に恥毛から繋がるムダ毛が並んでいる。
 ボクは肩肘をついて顔を支えてそれを見上げている。膝立ちしているこいつは、おそらく征服感を持って見下げているんでしょう。
 補助脳から起動させた。
 そのセーフハウス内のPCが目覚めている。
 中年男の眼に驚愕の色がある。この部屋内では彼が帝王の筈。電磁防壁がここほど完璧な場所はない。つまり外部から侵入はできない。
 っていうことは、内部に入れば侵入ができる。
 その画面には先刻のBistroが俯瞰で映し出されている。
 画角は斜めだ。別カメラへ。瞬時に16個に分割されてそれぞれの画像が浮かぶ。そのなかで3つを指定してさらにズームをかけた。
 ボクの傍にたつ中年男。
 飲み物が差し出されている。
 カクテルにチェリーが揺れている。
 音声はない。でもわかっている。彼はこれが好きなの、って自分のグラスから摘まみだして、それを入れてくれた。ああ。そこにドラッグを仕込んでいたのね。
 補助脳から、次の指令を出す。
 先刻までの痴態が再生される。
 しっとりとした白い背中が汗ばんでいる。黒子ひとつもないそれが弓なりに拘束されている。
 ああ。こんな感じだったのね。
 
 

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