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餓 王 鋳金蟲篇

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紀元前十五世紀の古代インド。   このドラビィダ人が農耕と牧畜で生活している大地に、アーリア人が武力を持って侵入している時代。後のインダス川と名前を変えた七大河に戦乱が満ちている… もっと読む
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記事一覧

餓 王 鋳金蟲篇 2-4

 空気が薄くなった。  灌木は既に見ない。  昨日までは平原を覆う草原があったが、今や岩陰…

百舌
1か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 2-3

 相貌に見覚えがある。  脳裏の記憶と相結ぶものがある、その少女にだ。  カリシュマと呼ば…

百舌
1か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 2-2

 その女性が纏う威光は、日輪の如きものだった。  これがタキシラ国を統べる女王かと思い、…

百舌
1か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 2-1

 闇夜の地平線には、プシュヤ星宿が浮かんでいた。  イ・ソフタでの逗留は数日に抑えた。  …

百舌
2か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 幕間

 適齢期というものがある。  恥ずかしながらの年齢を刻み、後悔の多い半生を振り返って、初…

百舌
2か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 1-5

 イ・ソフタは天空の要害都市である。  ヒンディークシ山脈のレーへ峠を越えた圏谷に位置す…

百舌
2か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 1-4

 曙の雲が七色にたなびいている。  光彩が時の経過で移ろう時間だ。  男は膝をついて嘆息していた。私もかなりの疲労を覚えていた。 「ようやく明けたか。小僧、あれは今晩もやってくるのか」 「わからないが、この三夜は続いていた」 「誰にかけられた呪だかわかっているか?」 「心当りがあり過ぎて、困る」 「だろうな。儂も問われれば、そう応えるだろう」  陰湿で過重な呪の意味は、価値である。この若者の死にはそれだけの報いがあるのだろう。無聊を慰める一端にはなりそうだ。長すぎる生の退屈ほ

餓 王 鋳金蟲篇 1-3

「小僧、何を企んでいる」  無言の重圧がひしめいている。迂闊であった。遠巻きに囲まれてい…

百舌
2か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 1-2

 これは興味深い。  私は待つことにした。  一応、錫杖棍は手元に置くことにした。  この…

百舌
2か月前
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餓 王 鋳金蟲篇 1−1

 中天に半月がかかっていた。  雨が近いのか、朧に霞を纏っている。  そのために星空が疎ら…

百舌
2か月前
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