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私は存在していたのかしら。 記憶さえ曖昧な乳白色の闇に包まれている。 時間の流れでさ…
アームチェアで膝を組んでいる。 イームズのシェルアームチェアで、座面は織地で肌触りが…
早世した両親に代わってなのでしょうかね。 親戚でもないのに、40年余りも親しい家族がい…
早朝から峠を走る。 明治の空気が残るこの道に、愛車を連れていきたかった。 佐賀の鹿島…
法事のために島を出ます。 片道3時間弱は毎回、新作を書く時間に充てていて。ただし今日は…
還暦という区切りまでもう少し。 生後すぐに母親を。 二十歳そこそこで父親を。 早く…
遊歩道はひび割れていた。 炎熱と風雪の痕跡だろう。 石段に走る隙間から、新芽の息吹が顔を出していた。 冬枯れの遊歩道を歩き続けて、汗ばんできている。歩を止めると吹き下ろす北風に意地悪を感じる。 夜景で有名なスポットで、恋人たちが願掛けに来る場所だ。 むしろ夜の方が賑やかかも知れない。都心から進出して来た洒落たバーガー店もとっくに閉店して、お知らせの貼り紙も色褪せている。 展望台からは、眼下に港町が見下ろせる。 深い入り江が故郷の港町を分断し、そのどこまでが海な
今月は厳しいな。 進行表をスマホで管理している。 もう銀杏の並木道に木枯らしが駆け抜…
不思議なことに。 別居離婚をして。 僅かな眠りを拾うように集めていて。 それでも朝…
朝の匂いがまだしている。 鳥籠みたいに手狭な部屋に入り、手探りで灯りをつける。 頭上…
シャッターが切られた。 素肌に僅かな電流がはしった気がする。 指先がフィルムを巻き上…
峠はもう雪で通れないかもね。 そう考えながら、湯気を立てる珈琲に視線を送る。 この辺…
メイクルームに座る。 その瞬間を待ちわびたように、ウィッグを抱えたスタイリストが駆け…
クルマを貸してくれ。 不意にそんな電話が来て、私は仕事の手を止めた。 「ちょっと待って。今は手が離せないの。お昼にかけ直すから」 「了解」と言ってその電話がぷつりと切れた。 会社のデスクでは気まずいので。 バスケットを持って港公園にランチを取りにいく。オープンサンドと、ポットには珈琲を入れている。食後にスマホで連絡を入れるつもりだった。 夏が駆け抜けたビル群に、海からの涼風が届く季節になった。 やっと幌を降ろしてもいい季節になったな、と考えた瞬間に彼の思惑が透