サックスブルー

ことばと写真と / 写真:撮りたいものを素直に / ことば:湧き出るものを手ですくうよ…

サックスブルー

ことばと写真と / 写真:撮りたいものを素直に / ことば:湧き出るものを手ですくうように / 岡山県倉敷市在住

記事一覧

かえこ

中2から中3にあがるときに、もともと通っていた小学校区に新たに中学校が新設されることになった。 それまでその小学校を卒業すると、運河の向こうの、市の中心部により…

7

青い一日

朝、家のエゴノキの白い花が満開になっていた 澄んだ青い空によく映えていた たぶん、今日は一日雲がなかったような気がする、日中はほとんど建物の中にいるから、たぶん…

【詩かもしれない】やっぱり三日月

三日月が見えると 見える頃になるとウキウキする 今日は正真正銘の三日月、旧暦三日の月である 夏に向かって日足がずいぶん延びてきたから、西の空に細い月が見えるのも…

【詩かもしれない】カゲロウ

この数日、暗くなるとカゲロウが大量に舞う 大量などというと彼ら(their/each)一匹一匹の命をカウントしていないようで気がひける 一級河川が流れ、住宅地には用水路が大…

【詩かもしれない】コマツヨイグサ

河川敷のグラウンドは荒れている 雑草と呼ばれる植物が繁茂している 夕方になると コマツヨイグサが咲き始める 透明な黄色の花は夕方に咲き 朝に萎れる 夕方に咲くのだ…

図星

その人は黒くて長い髪を後ろで束ねていた 顔には少しそばかすがあったように思う それでいつも笑顔だった記憶しかない 保育園児のときにいた先生、保育士さん、当時は保…

12

こいのぼり

大気の状態が不安定だと予報が言っていたから早めに夕方の散歩に出た。 毎年揚げている家のこいのぼりが左にたなびいていた。東からの風が日中の暑さを少しだけ和らげるよ…

18

三度目の春

事情があって昨日今日の週末はほとんど家にいた。外に出るのは買い物に行くくらいで、あとはノンの散歩か。 散歩で近所の堤防の上に立つと、対岸の丘の上にある大きな桜の…

15

コーヒー繋がり

暇だから他の部署の手伝いをした。 暇、というのは精神疾患を患っているぼくのことを慮って(だと思う)ぼくに重い仕事があてがわれていないからそういうのであって、何もす…

14

雨樋

とんとんとん と、小太鼓のような、バケツをひっくり返して底を木の棒で叩くような音がしていた。雨降りの日だった。 まだ父親と暮らしていた家の仏間だったから、それは…

17

春の音がする

不思議なもので、 春になると音の聞こえ方がそれまでと違ってくる 枚方にいた頃、二月だか三月だか、下宿の窓から聞こえてくる国道1号線バイパスを走る車の音が、春の湿…

16

声を届けたい

きのう、岡山市のZINEイベントに出展した。そういうことをするのは初めてだし、栞とポストカードは昨年作ったけれど、ZINE、つまり冊子を作ること自体も初めてだった。 1…

26

遠い場所

最後に見たのがいつだったのか正確には覚えていないが、たぶん母親が亡くなった頃だと思う。小学校低学年まで父親と一緒に住んでいた家は、外観は変わることなく、まだそこ…

9

空に浮かぶは

仕事から帰って、ノンと散歩に出る。 今朝は未明に雨が降ったみたいで、日中も気温が上がらなかった。 事務所棟は古くてエアコンの効きが悪い。ただでさえ週始め、おまけ…

13

84円切手

午後遅くにローソンまで歩いた。 片道15分足らず。 休職期間中に歩きたい欲が無性に高まった時期があって、例えば倉敷の街まで歩いたら、バイパス高架下のおいしいパン屋…

18

苦めコーヒー

ついこの間、東京まで行って息子には会ったばかりだけれど、この年末、帰省してくるのがやっぱり楽しみである。 関西の大学にいる時は正月だけでなく夏休みにも帰ってきた…

19

かえこ

中2から中3にあがるときに、もともと通っていた小学校区に新たに中学校が新設されることになった。

それまでその小学校を卒業すると、運河の向こうの、市の中心部により近い中学校に通うことになっていた。そこにはぼくらからしたら都会っぽい子らがたくさんいて、ぼくらの小学校組の倍くらいはいて、だからクラスも9つもあった。

新しい中学校は、小学校がそのまま進級するだけの学校になり、つまらないだろうなと思った

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青い一日

青い一日

朝、家のエゴノキの白い花が満開になっていた

澄んだ青い空によく映えていた

たぶん、今日は一日雲がなかったような気がする、日中はほとんど建物の中にいるから、たぶん

夕方、青い空に浮かぶ白いものは月だけだった

センダンの高木の上の方に、小さな花がびっしりと咲いていた

枝と枝の間の向こうも真っ青な空が

緑と対比させるとさらに際立つように

やがて暗くなると月が明るさを増してきて

空の青が宇

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【詩かもしれない】やっぱり三日月

【詩かもしれない】やっぱり三日月

三日月が見えると
見える頃になるとウキウキする

今日は正真正銘の三日月、旧暦三日の月である

夏に向かって日足がずいぶん延びてきたから、西の空に細い月が見えるのも、ずいぶん遅い時間になってきた

今日はカレーライスを食べ終えた19時半、カメラを手にして外に出てみた

日没時刻はとうに過ぎ、でもまだ地平のあたりに太陽の名残がある

三日月が、目の高さより少し上に見えている

地球照もばっちり確認で

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【詩かもしれない】カゲロウ

【詩かもしれない】カゲロウ

この数日、暗くなるとカゲロウが大量に舞う

大量などというと彼ら(their/each)一匹一匹の命をカウントしていないようで気がひける

一級河川が流れ、住宅地には用水路が大小張り巡らされている

たまに大発生したカゲロウが道路の上を埋め尽くすように乱舞している

その大量のカゲロウは朝に見ると弱々しく草葉にすがりつき、命を終えようとしている

儚い命だけれど、一夜限りの命でもない

幼虫でいる

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【詩かもしれない】コマツヨイグサ

【詩かもしれない】コマツヨイグサ

河川敷のグラウンドは荒れている

雑草と呼ばれる植物が繁茂している

夕方になると
コマツヨイグサが咲き始める

透明な黄色の花は夕方に咲き
朝に萎れる

夕方に咲くのだからどちらを向いていようとその時間がきたら咲くんだろうと思っていたら

荒れたグラウンドのそこかしこで開き始めたその花たちはみな

夕陽の方を向いていた

どうでもいいことのようで
大切なことだと思った

図星

図星

その人は黒くて長い髪を後ろで束ねていた

顔には少しそばかすがあったように思う

それでいつも笑顔だった記憶しかない

保育園児のときにいた先生、保育士さん、当時は保母さん、その先生は結婚を期に仕事を辞めることになった

学区に幼稚園が無く保育園がその役割をはたしていて、ぼくは年長だったか年少だったか、六歳だったか五歳だったかそこまで細かいことはわからない

送別会のようなものをその先生の自宅で開

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こいのぼり

こいのぼり

大気の状態が不安定だと予報が言っていたから早めに夕方の散歩に出た。

毎年揚げている家のこいのぼりが左にたなびいていた。東からの風が日中の暑さを少しだけ和らげるように涼しさを含んでいた。

いつもそこで曲がる郵便ポストのある角にさしかかると、右手から男の子が歩いてきた。

こんにちは

と大きな声ではないけれど、はっきりとした口調であいさつをしてきた。

こんにちは、と返す。

かわいい、とノンを

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三度目の春

三度目の春

事情があって昨日今日の週末はほとんど家にいた。外に出るのは買い物に行くくらいで、あとはノンの散歩か。

散歩で近所の堤防の上に立つと、対岸の丘の上にある大きな桜の木が薄いピンク色に染まっているのが、数日前からこちらからでもわかるようになった。間にあるのは下流域の一級河川と広い河川敷だ。

あそこまで道がまっすぐ続いていれば歩いて15分ほどだと思うが、事実は数百メートル下流にある長い橋を渡らないと向

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コーヒー繋がり

暇だから他の部署の手伝いをした。

暇、というのは精神疾患を患っているぼくのことを慮って(だと思う)ぼくに重い仕事があてがわれていないからそういうのであって、何もすることが無い、という訳ではない。

手伝った仕事は元々のぼくの業務からはそんなに遠いことではなく、だからといって教えてもらわなくてもできる、というような簡単なものでもない。片手、あるいは両手の掌にのる大きさのものを手元で確認しながらパソ

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雨樋

雨樋

とんとんとん

と、小太鼓のような、バケツをひっくり返して底を木の棒で叩くような音がしていた。雨降りの日だった。

まだ父親と暮らしていた家の仏間だったから、それは小学校に上がる前のことだったと思う。

とんとんとん

は、どこか恐ろしい音のようにも聞こえたし、リズミカルな遊びのようにも聞こえた。

母に尋ねると、あれはあまどいのおとだ、と教えてくれた。そう、あまどいのおと?

雨樋の音だというの

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春の音がする

春の音がする

不思議なもので、

春になると音の聞こえ方がそれまでと違ってくる

枚方にいた頃、二月だか三月だか、下宿の窓から聞こえてくる国道1号線バイパスを走る車の音が、春の湿り気と温度をふくんでいるのに気がついた

下宿とその道路との間には、家は少ないけれど少し距離があって、普段はそれほど気にならない音が、その時はそうやって部屋に入ってきた

ああ、春なんだな、と、そう感じさせた

今、電気を消して寝ようと

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声を届けたい

声を届けたい

きのう、岡山市のZINEイベントに出展した。そういうことをするのは初めてだし、栞とポストカードは昨年作ったけれど、ZINE、つまり冊子を作ること自体も初めてだった。

1月の中頃にたまたま出展募集を目にして、勢いで申し込んだら受理をされたので、そこから短期間でなんとかZINEの作成を間に合わせた。

構想だけは持っていたけど、タイトル、撮りためた写真から何を載せるか、文章やキャプションはどうするか

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遠い場所

遠い場所

最後に見たのがいつだったのか正確には覚えていないが、たぶん母親が亡くなった頃だと思う。小学校低学年まで父親と一緒に住んでいた家は、外観は変わることなく、まだそこにあった。両親の離婚後は全く別の人が入居していたらしい。築60年くらいにはなっていると思う和風建築。

その後に母と兄と一緒に移り住んだ家も結局は同じ学区で、近い。

時々中の様子を思い出したりもするし、実際に残っているのなら、とも思うのだ

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空に浮かぶは

空に浮かぶは

仕事から帰って、ノンと散歩に出る。

今朝は未明に雨が降ったみたいで、日中も気温が上がらなかった。

事務所棟は古くてエアコンの効きが悪い。ただでさえ週始め、おまけに先週の末にトラブルがあって体調が上がらないから、気分がいまいちだった。

夕方、駐車場を出るときにメールを確認したら注文が一件入っていて、喜んで、郵便局に寄ってスマートレターを購入した。

帰宅して散歩に出ると、空に細い月が浮かんでい

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84円切手

84円切手

午後遅くにローソンまで歩いた。

片道15分足らず。

休職期間中に歩きたい欲が無性に高まった時期があって、例えば倉敷の街まで歩いたら、バイパス高架下のおいしいパン屋さんまで歩いたら、など色々地図アプリで最短ルートを検索して実際に歩いてみたりしていた。

それぞれ一時間以上、30分前後だというのがわかって、でも実行すると写真を撮りながらだから、もっとたくさんかかっていたりしたけれど、それだけ余裕が

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苦めコーヒー

苦めコーヒー

ついこの間、東京まで行って息子には会ったばかりだけれど、この年末、帰省してくるのがやっぱり楽しみである。

関西の大学にいる時は正月だけでなく夏休みにも帰ってきたりしていたし、ここ岡山からは近いこともあってこちらから向こうに遊びに行くことも、年に一、二度あったのだけど、社会人になって東京に行って、距離が遠くなっただけでなく、ちょうどコロナもあったりして、直接会うことはずいぶん減った。

この十一月

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