ベランダうんこフェス中止のお知らせ

ベランダに猛烈な量のうんこが落ちている。

どれほどの猛烈具合かというと、たとえば世の中に「うんこフェス」なる祭りが存在していたとしたら、その”祭りのあと”の光景くらい、猛烈にうんこが落ちている。

あまりに多すぎて、ベランダにうんこが落ちているのか、うんこの下にたまたまベランダがあるのか、もはや私には判断がつかない状態である。

ムクドリ。

この、うんこが先かベランダが先か問題を私に突き付けてきた、うんこフェスの主催者であり参加者である。

うんこフェスは今月に入ってから、私の住むマンションのベランダで不定期に開催されている。
当然だが、うんこフェス運営から私宛に「ちょっと今度うんこさせてもらいますんで〜」的な事前連絡などは一切届いていない。
そもそもこちらはうんこフェスの開催を許可した覚えもない。なぜなら、それがうんこフェスだからである。

これでは、せっかくの春の心地いい天気に、洗濯物を気持ちよく外に干すことができない。もしお気に入りのシャツを干している最中にゲリラうんこフェスが開催されようものなら、私はフェス出禁になるレベルで暴れ狂ってしまうと思う。
ただ、出禁になったとしても、私としてはなんら問題はない。なぜなら、それがうんこフェスだからである。

ベランダは、うんこフェスの会場では、ない。
書いていてそろそろ頭がおかしくなりそうだが、そうなのだから仕方がない。いや、うんこフェスを催してもよい会場なんてそもそもどこにも存在しない。催すな。うんこを。

そこで強行手段にはなるが、この度「ベランダうんこフェス中止のお知らせ」を設置することにした。そう、「鳥よけ」である。

早速私は、近所のホームセンターまでベランダうんこフェス中止のお知らせを買いに走った。
しかし、私にはこれまでベランダうんこフェス中止のお知らせの購入経験がないため、ホームセンターのどのエリアにベランダうんこフェス中止のお知らせが置いてあるのかわからない。お知らせビギナーである。

「害虫駆除」や「洗濯物」コーナーなど、ありそうな区画を調べて回ったが、全然見当たらない。
あきらめて店員さんに聞いたところ、「それならガーデニングコーナーにありますね〜」とのこと。
なるほどガーデニング。ガーデニングか？

言われるがまま行ってみると、あった。
めちゃくちゃあった。

実に多種多様のベランダうんこフェス中止のお知らせが売られている。
吊るすタイプ。撒くタイプ。剣山のような形状をした見た目がなんか怖いタイプ。
絶対にお知らせするぞという強い意志を感じるものばかりで心強い。

ただ繰り返しになるが、私はこれまでベランダうんこフェス中止のお知らせを一度も買ったことがないため、ベランダうんこフェス中止のお知らせの良し悪しが全くわからない。

ということで、手っ取り早い基準として、ここは一番値段の高いベランダうんこフェス中止のお知らせ（吊るすタイプ）を購入することにした。
税込3,168円。カラスにもハトにもお知らせすることができる、お知らせオールラウンダーである。

そして、このベランダうんこフェス中止のお知らせ（吊るすタイプ）を設置して、今日で丸一週間。

フェスは、ただの一度も開催されていない。

ベランダうんこフェス中止のお知らせ（吊るすタイプ）！！すごーい！！！

うんこフェスに悩んでいた毎日が嘘のようである。これは完全にお知らせできている。
それ見たことか！やはりうんこではなくベランダが先にあるのだ！Q.E.D.！！

しかし、こういった「フェス中止お知らせ系グッズ」を使用するたびに思うことがある。
お知らせによりフェスの開催は中止にできたが、結局は場所を追われた主催者は、また別のフェス会場を見つけては、そこで元気にフェスり続けていくことだろう。要は、この手のお知らせを掲示したところで、単にフェスの開催場所が変わるだけなのだ。
そしてそれはスライドパズルのように、めぐりめぐって、いつかまた自分のもとへと帰ってきてしまうのではないだろうか。

フェス自体、運営母体そのものを解体しなければ、きっとこの悲しい連鎖を断ち切ることはできないのであろう。なんと、なんと難しいことか。

春風に揺れるベランダうんこフェス中止のお知らせ（吊るすタイプ）を眺めながら、そんなことを思う３月末の午後なのであった。