石鹸師

会話劇と超短編。オール読み切り。

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「なあ、お前、生まれ変わったら誰になりたい?」 「デカプリオ」 「マジかよ。モテ男になってナンパかよ」 「ちげえよ。整形すんだよ」 「はあ?デカプリオなら整形いらねえだろ」 「いるよ」 「じゃあ、誰みたいにすんのよ」 「俺」

    • 時代という嘘

      「速報です。ただ今入ってきたニュースによりますと、本日午後十時頃、青山二丁目交差点で自転車が歩道を走行した模様です。速報です。ただ今入ってきたニュースです。本日午後十時頃、青山二丁目交差点で自転車が歩道を走行した模様です。幸いこの違法走行で事故は起きていません。コメンテーターの紺間垂由さん、これは一体、どういうことでしょう」 「いやあ。ちょっとこれは信じがたいですね。遥か昔、令和の時代と勘違いしてるんですかねえ。今はあんなズブズブの時代じゃないんですけどね。この映像ですとヘ

      • 店員

        「お前、そう言えば海外では別人だったな。レジとか店員とか怖くねえのかよ」 「全く」 「コツは?」 「喰い気味でさ、笑顔でハローとサンキューをカマしとけば大体大丈夫だよ」 「そんなもんか」 「こっちがビビってるとさ、相手に伝わるから。特に日本人はお客様は神様っていうのに慣れちゃってるでしょ。海外では対等だから。店員も客も同じ人間。それだけだって」 「そうだな。じゃあ、今度はそうするよ。あ、俺達の番だ。えっと『麺カタ、油多め、野菜マシマシ』で」 「あ、えっと、僕は麺が、えっと、麺

        • お、お前だったのか

          「何してんの?パソコンの前ではしゃいで」 「か、歓喜してた……」 「歓喜?」 「そう。よくネット記事で『ネット民が歓喜』ってあるだろ。あれ、俺なんだ……」 「そ、そうだったのかっ!そんなヤツいるのかよって思ってたけどお前だったとは……」 「いないと、だって、ヤラせになっちゃうだろ」 「……じゃあ、まさか、これから」 「『持論を展開』……」

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        • 男と女
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          6本
        • 美少女戦隊こりこりぷぅ
          4本
        • お花畑通販
          9本

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          チン先にて

          煙草を吸いながらトイレに座り、股の間から灰を落としているとチンコの先に火玉が当たりそうになるので火傷に気を付けなければいけない。慎重にポコチンの間からポンポンと灰を落とす。 隣の空き地に家が建つ。工事の音が一日中響く。 フィルターをトイレに流すことはできなかった。灰皿はないので根元まで吸い切り火を消す。 亀頭の先を火傷したら痛いのだろうか。普段通っているエステ、ギンギンの先っちょを紙パンからはみ出させることだけに心血を注いでいるが、ナニを火傷したらまずはそんな所には行かな

          チン先にて

          猫人間

          『五十嵐』と書いて、『ごじゅうあらし』と読みます。 さて、前半の『五十嵐 』をどのように読んだろうか。 ほとんどの人は『いがらし』と読んでしまい、後半の『ごじゅうあらし』には違和感を覚えるだろう。しかし小学校低学年や漢字習いたての外国人は『ごじゅうあらし』と読むかもしれないし、実際に『ごじゅうあらし』と発音する苗字の人もいるらしいので、そうした人達にとって上の命題は何ら違和感のない当たり前の事実でしかない。一つの命題(主語と述語のある文章)として、どちらが正しいのか。 実

          ノア

          「そうだよ、よく気付いたな。でも遅いくらいだよ。お前ならもっと早く気付くと思ったんだけどな。で、どうする?」 「僕は、いや、僕達は……」 「いいよ、やっても。こっちはお前らには敵わないし。そっちが一丸となってぶつかってきたら俺達はあっという間にヤられるだろうね。でも、それからどうする?このシップから出て生きていけんのか?ここ、宇宙空間だぞ。そもそもこのシップ、誰が操縦すんだよ」 「だ、だからって……。結局、僕らはお前達の食糧になるだけじゃないか!」 「それでお前達は生き残った

          new era

          「はい、じゃあさとし君はプロ野球選手、こうじ君は警察官、ゆかちゃんはお嫁さんで、ちえちゃんがお花屋さんね。みんな、なりたいものいっぱいあっていいねえ。じゃあ、最後、ともひろ君は?ともひろ君は今日がお誕生日なのよねえ」 「はい!僕は、僕は……大きくなったら、おムコさんになりたいです!」 「……」 「おムコさんになりたいですッ!」 「……えっと」 「結婚してお家でお掃除したりお食事を作りたいです!かっこいい旦那さんになりたいです」 「ああ……。消防士とかサッカー選手とか……」 「

          偽モノ

          「だからさ、こういう庶民的なエリアでこそ本当の味が分かるんだよ」 「さすが町中華愛好家。やっぱ海外でも鼻が利いちゃうねえ」 「そうだな……。あそこなんていいんじゃないか。ほら、観光客いないだろ。いかにも現地人がさ」 「確かに。ふっつーに地元の食堂って感じだな。安そうだし。おい、向こうに和食らしきレストランもあるぞ」 「お。ちょっと覗いてみるか」 「どう?」 「ん……。こりゃ、偽物だな。日本人じゃない。和食でもねえだろ」 「……」 「なんだよあのカラフルなラーメン。カレーもと

          童貞チーズ

          「へえ、開発者の方、童貞なんですか」 「はい、でも開発者だけじゃないんですよ。農家の方も物流の方も製造業者もこうして販売員も全員童貞なんです」 「そうですか。それはしかし安心ですね」 「はい、そりゃもう。世の中、いろんな製品が出回ってますでしょ。製造業者なんてどこの輩が潜んでるかわかったもんじゃないですから。どこで何をしてるやら、薄気味悪くて仕方ない。その点、ウチなんか関係者は全員童貞で揃えてますからね。童貞だけで全てを完結させてますから。こんな安心なことはありませんよ。童貞

          童貞チーズ

          価値観

          「はい、じゃあね、期末のレポートは手書きの原稿用紙のみ、鉛筆書きやワープロの使用は認めませんからね」 「えええっ!今どき手書き~!?しかもインクで?消せないじゃん?途中で失敗したらどうすんの?」 「はい、そこ。失敗したら?そんなのは最初からやり直すんだよ。そういうもんなんだよ、文章というのは。だからそうならないように何度も何度も下書きして、推敲に推敲を重ねてやっとそこで清書に移るもんなんだよ。インクのペンを握ってな、神聖な気持ちで原稿用紙に向かう。そうすることで文章そのも

          価値観

          最高です

          岸田文雄君13万票、内閣総理大臣に任命す。 ガーシー君28万票、除名す。 民主主義、最高ですね。

          最高です

          選別

          「昼、何食ったの?」 「コオロギハンバーグ。うまかったよ」 「いいね、注目のタンパク源だもんな」 「見た目とか関係ないんだよ。殺生してる時点でさ、俺達はそれを受け容れてんだから。生き物は皆、平等。で、お前は?」 「犬」

          かつての蜜月

          かつて私にもあなたを殺して私も死ぬという、現実の世界でそんな言葉を使う機会が訪れた奇跡に蹌踉めいては己の奇跡に陶酔し、そうした事態に陥っている運命に恍惚としては悦に入っている時期があった。私は迂闊にも客の一人に嵌まり込んでしまい、彼の居直りに憮然としたまま無意識のうちに包丁を持った手を震わせ、ふらふらとベランダに飛び出したのだが、そのとき見た初台の夜空はこれまで見たどんな空よりも汚らしく白く濁っていたのを覚えている。 そのとき見た空と、そうは言ってみたものの現実に空を見たか

          かつての蜜月

          上司の判断

          「部長、こんどの定例総会ですがスーツの下はノーパンで出席してもよろしいでしょうか」 「ん?ノーパン?パンツ穿かないってこと?」 「はい。実はノーパン健康法の最中でして。締め付けによる下腹部への負担、何よりも睾丸を締め付けず過度に温めないことで精子の健康を保てるかと。少子化の中、妊活中の私としては……」 「うむ。少子化対策となれば国家レベルの話、検討に値するな」 「しかしモッコリ問題や尿漏れによるオイニー問題、パンツを穿かないとなると周囲への迷惑も一定程度生じます」 「しかし問

          上司の判断

          個人の判断

          もともと意味なんかないのです。してもしなくても同じ、むしろしている方が不衛生、身体には有害です。ただそれをしているということが世間へのアピール、私は周囲に合わせています、マナーを守っていますという証になっているだけ、でも社会とはそいういもの、意味のないバカなことでも皆がそれをしたらそれが正義です。それが、正しいのです。洗濯もできない不衛生な布、そんなのを一日中身体に纏わり付け、だからといって他に使えるわけでもない。家に帰れば外し、外では颯爽とこれ見よがしに身に付ける。はあ?な

          個人の判断