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【小説】たましいのみなと

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たましいのみなと。それは、すべてがはじまる場所。命の煌めきも、感情の揺らめきも、この港から旅立っていく。
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記事一覧

【連載小説】たましいのみなと vol.6

じいちゃんの家にある離れの部屋は、僕にとって秘密基地みたいな場所だ。

行くまでの道のりもワクワクして、そこが自分の居場所のように心地よく、無敵になれるような感覚がした。

たとえば家や学校で嫌なことがあった日も、彼女とうまく行かなくて悩んだ日も、仕事で失敗して落ち込んだ日も、ここに来ればリセットされた。

じいちゃんやそのまたじいちゃんが集めた本を読んでいるうちに、悩みや不安の答えになるようなこ

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【連載小説】たましいのみなと vol.5

この家に越してきた時、まだ幼い私に、祖父は言った。

「この家にはな、歴史が刻まれているんだ。家族ひとりひとり、それぞれの歴史だ。これからは、お前の歴史もここに刻まれる」

その意味も分からないで首を傾げる私に、祖父は笑っていた。

私の目線までしゃがみ、眩しい夏の太陽を背に受けて祖父は言った。

「これからはな、平和の時代が来るぞ。希望の光はあちこちで輝くし、色んなかたちの愛が広がっていくだろう

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【連載小説】たましいのみなと vol.4

窓際に置いたテーブルと椅子は、長いあいだ陽の光を浴びてきたせいで、今はもう、昔の色を失っている。

何年も前にこの家を相続したとき、手始めにまず彼女と手を加えていったのが、この部屋だった。

この場所にテーブルを置こう、それぞれ好きな椅子を並べて、くつろいで過ごせる場所を創ろう、と言ったのは私だった。

彼女は「素敵なアイデアね」と言ってくれたけれど、窓際だと本が日に焼けてしまうのではないかと、そ

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【連載小説】たましいのみなと vol.3

離れの部屋には、今はもう、僕とじいちゃんしか足を運ぶ人はいない。

出入りする人が少ないからだろうか、廊下を奥に進めば進むほど、別の世界へ入っていくような不思議な感覚がする。

風の音と、鳥の鳴き声だけが耳に心地よくて、外の世界より楽に呼吸ができるのだ。

「入るよー」

離れの部屋の引き戸を開けると、窓辺の椅子に腰掛けていたじいちゃんと目が合った。

「やぁ、純くん。いらっしゃい」

読んでいた

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【連載小説】たましいのみなと vol.2

廊下を渡った角の台所に入って、冷蔵庫からオロナミンCを取り出した。

特別好きだと言ったこともないけれど、子供の頃からずっと、じいちゃんの家の冷蔵庫には僕のためにオロナミンCが常備されているのだ。

栓を開けて、ゴミ箱の横にぶら下がったコンビニ袋にそれを投げ入れ、暖簾をくぐり廊下の先を進んでいく。

中庭に射す陽の光は、いかにも古めかしい造作で植えられた草木を照らしている。

まるで、この家の中だ

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【連載小説】たましいのみなと vol1.

【連載小説】たましいのみなと vol1.

「じいちゃーん、入るよー」

カラカラと玄関の戸を開けて、大きめの声で挨拶する。

木造の古い家に住んでいるのは、今はもう、じいちゃんだけなので、少し声を張れば家中どこにいても声が届く。

靴を脱いで玄関に上がると、清けさの中に床のきしむ音が鳴った。

どこもかしこも古くなってガタがきているから、住みにくさを挙げればキリがないんだけど、僕はこの家を気に入っている。

静けさが心地よくて、風通しが良

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【連載小説】たましいのみなと promenade

【連載小説】たましいのみなと promenade

たましいのみなと。

それは、すべてがはじまる場所。

命の煌めきも、感情の揺らめきも。

この港から旅立っていく。

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春の空のように凪ぎ、澄みわたる場所。

たましいのみなとには今日も、数え切れないほどのボートが浮かびます。

ぷかぷか、ゆらゆら。

ぷかぷか、ゆらゆら。

風も、波も、ここにはあり

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