酔いどれ雑記 32 サウダーデ、聖と俗
リスボン、世界で一番好きな街。3か月前はオレンジ色の街灯が濡れた坂道の石畳を照らしていたけれど、6月の空は青くどこまでも広がって、テージョ川は変わらず大西洋へと流れていた。
ポンパル侯爵広場に面したホテルから歩いて行く......私は極度の方向音痴だけれど、ここをずっと下ってゆくときっと港に着くだろう。なにしろ私は港町生まれ、こんな時だけは体内の方位磁針が動き出し、潮の薫りも手伝って正しい道へと導いてくれる。
フィゲイラ広場。扇風機とスーツケースを両手いっぱいに抱えて売り