咲月

高卒Web編集者、24歳。東京や仕事や私のあれこれを書きます。

咲月

高卒Web編集者、24歳。東京や仕事や私のあれこれを書きます。

記事一覧

固定された記事

東京百景、はじまっている

又吉直樹さんの書く文章が好きだ。彼の“東京百景”というエッセイ集に、こんな一節がある。 私もまさにそんな感覚で、梅雨をすっ飛ばして訪れたせっかちな今夏に、背を押…

咲月
1年前
52

平均台が得意じゃなかった

毎晩アヒージョ、毎朝aiko。食べ物も音楽も、一度気に入ったら病的にリピートし続けて、ある日ぱったり興味をなくす。その後5年は戻ってこない。 0か100か、白か黒か、好き…

咲月
9日前
12

好きでもない男と会う意味

久々の恋がダメだった。 好きでもない人から好かれて、好きな人には好かれない。恋とはそういうものだ。始まる瞬間はすっかり忘れていて、ひとつ結論が出る時に思い出す真…

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咲月
12日前
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説教の記録「主人公がモブやんな」

経緯は省くが、部長から「お前の生い立ちを聞かせろ」と言われ、飲みに行くことになった。若い部下らしく「肉が食べたいです!」と答えた10分後、私は、ランチですら入れな…

300
咲月
13日前
2

恐い夢をみた朝は「こわかった」と言いたい

「あっ、ああっ!」 …ハア、ハア、ハア… 宙を待った右手が布団に叩きつけられる。頬に涙が、首を冷や汗が伝っている。また、母が死ぬ夢をみた。4月に入ってからもう何回…

咲月
1か月前
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📌失敗した日に読み返す日記

仕事の都合で近頃、CEOにインタビューすることが多い。皆さんそれぞれ面白いが、特に、おととい伺ったお話がストンと落ちたので記録しておく。 価値観は良し悪しが測れな…

咲月
1か月前
12

親友の彼に会わせてもらった

今年に入って、恋人を紹介してもらう機会があまりに多い。先週末の彼で4人目だった。20代半ばって感じだね。 みんな「1回見て」ってノリで持ちかけておいて、本当に会わせ…

咲月
1か月前
52

スキップに一段飛ばしの人生

どうしても許せないことがあった。 しかし父の死を起点として、悲劇を喜劇に変える技術ばかり発達させてきてしまった私は、それを飲みの場で、笑い話として披露したらしい…

咲月
1か月前
9

ライフイズワーク is

勤め先は「長期休暇」が本当に長い。お盆も正月も10日前後ある。 子どもの頃はその3倍以上あっても足りなかったのに、今は10日ですら持て余してしまって、立派な社会人だな…

咲月
4か月前
9

2023、ラブリーたちのおかげ

毎年、母か祖母から聞く気がするセリフ「もう恵方巻のチラシ出てたわよ」。 思えば、指先が冷たいと初めて思う頃にはすでに肉まんが出ていて、マフラーを巻く前からおでん…

咲月
5か月前
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12月30日のクリスマス

12月28日に仕事を納め、昨日地元へ帰ってきた。 見慣れた、でも看板が変わっていたり新しいお店ができていたりする、風景に染み入る。あかい陽に照らされ撓んだ空、真ん中…

咲月
5か月前
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東京と、東京を好きな母と

乱立するビルのあいだからのぞく狭い空、冬の朝や、一駅歩くという行為。ふとした瞬間に「私、東京にいるんだ」と思う。越してきて2回目の冬なのに。 幼い頃、母が弟妹を…

咲月
6か月前
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こんな時代でも、音楽の世界ではただしく季節がめぐっている

ひさしぶりにイヤフォンを買った、有線のやつ。 1つ前はもらいもののワイヤレスを使っていたのだけど、耳の穴が小さいのかたびたびこぼれるので、いつもヒヤヒヤしていた…

咲月
6か月前
9

あなたのユートピアも、きっとまもられますように(文フリ感想)

ガールフレンドと遊んだ。最近行きたくて仕方なかった焼肉に付き合ってもらい、満足感はそのまま、銭湯で臭いだけ落としてきた。 帰りのコンビニで買った、137円のインスタ…

咲月
6か月前
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元日に破局してから、今日までのこと(お知らせあります)

暑中お見舞い申し上げます 溶けちゃいそうなほど暑いまいにちですが、お元気ですか。 卒業したバイト先みたいに、気に留めつつも足が遠のいてしまっていたnote。久しぶり…

咲月
9か月前
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父さんとの、たわいない思い出

「これで足りてますよ」 一瞬理解できずフリーズしてしまってから、QUOカードの右上に「1000」と書かれていることに気づいた。 「ああ、すみません」 500円だと思ってまし…

咲月
1年前
13
固定された記事

東京百景、はじまっている

又吉直樹さんの書く文章が好きだ。彼の“東京百景”というエッセイ集に、こんな一節がある。 私もまさにそんな感覚で、梅雨をすっ飛ばして訪れたせっかちな今夏に、背を押されるようにして実家を出た。 7月からひとり暮らしをしている。 起きてすぐ音楽をかける、顔を洗う。トーストと卵を焼きながら、コーヒーを淹れる。アイスコーヒーは、水出しより冷やしたものより、ギチギチの氷で急冷するのがいちばん美味しいって、最近知った。 牛乳買って帰らなきゃ、今夜こそ洗濯機を回そう。 出勤前から退勤

平均台が得意じゃなかった

毎晩アヒージョ、毎朝aiko。食べ物も音楽も、一度気に入ったら病的にリピートし続けて、ある日ぱったり興味をなくす。その後5年は戻ってこない。 0か100か、白か黒か、好きか無関心か。私は、激烈と非情を思い切りぶつけてできたような人間だ。 そういえば、子どもの頃から曖昧を好まなかったように思う。 まず、平均台が得意じゃなかった。バランス感覚が悪いというより、落ちるか落ちないかの状況が耐えられなくて、わざと早々に落ちていた。 大人になった今も結論を急いだり、どっちつかずな状況に

好きでもない男と会う意味

久々の恋がダメだった。 好きでもない人から好かれて、好きな人には好かれない。恋とはそういうものだ。始まる瞬間はすっかり忘れていて、ひとつ結論が出る時に思い出す真理。 そうだったと手を叩いてもうやめたいと願うのに、ちょうど忘れた頃に舞い込んでくる。恋とはあまりに厄介だし、私もたいがい頭が悪い。 振られた途端、好いてくれた男性たちが恋しくなるけれど、もう恋しいだけで寄りかかれるような年齢ではない。

有料
300

説教の記録「主人公がモブやんな」

経緯は省くが、部長から「お前の生い立ちを聞かせろ」と言われ、飲みに行くことになった。若い部下らしく「肉が食べたいです!」と答えた10分後、私は、ランチですら入れないような高級焼肉店の個室にいた。

有料
300

恐い夢をみた朝は「こわかった」と言いたい

「あっ、ああっ!」 …ハア、ハア、ハア… 宙を待った右手が布団に叩きつけられる。頬に涙が、首を冷や汗が伝っている。また、母が死ぬ夢をみた。4月に入ってからもう何回目かわからない。 部屋がほの明るい。ベッドのすぐ傍にかかっているカーテンが、すこし光を含んでいる。 iPhoneに表示された「5:03」を見て、私は深く息を吐いた。今日も22時過ぎまで働くことになるだろう、今動き始めたら夜までもたない。でも、二度寝するのも恐い。 考えたくもないが、現実問題、父さんとは死別してい

📌失敗した日に読み返す日記

仕事の都合で近頃、CEOにインタビューすることが多い。皆さんそれぞれ面白いが、特に、おととい伺ったお話がストンと落ちたので記録しておく。 価値観は良し悪しが測れない。選択の積み重ねで築かれていくもので、誰にも否定される筋合いはない。ただ、成功する人の価値観には共通点があるから、成功したいならその点は習得した方がいい。成功者が限られるのはそれが難しいから。習得が難しいのは、社会人としての価値観と人としての価値観が別物だからだ。前者を得ようとするとき、後者を否定されたり疑ったり

親友の彼に会わせてもらった

今年に入って、恋人を紹介してもらう機会があまりに多い。先週末の彼で4人目だった。20代半ばって感じだね。 みんな「1回見て」ってノリで持ちかけておいて、本当に会わせてくれるのが面白い。 ちなみに私は、友人とその恋人が一緒にいるところを見るのが、異常に好きだ。 「いつから付き合っているんだっけ」に始まり「どっちが先に好きになったの」「どのくらいの頻度で会ってるの」と、既知の話題から攻めていく。 そんなことは彼女から散々聞いて耳タコなんだけど、本当に聞きたいわけではないので良

スキップに一段飛ばしの人生

どうしても許せないことがあった。 しかし父の死を起点として、悲劇を喜劇に変える技術ばかり発達させてきてしまった私は、それを飲みの場で、笑い話として披露したらしい。エピソードトークのもととなった出来事は本当に笑えないことで、だからこそ余計にヘラヘラ話したのだろうと想像がつく。 推量ばかりなのは覚えていないからだ。さほど弱くないはずなのに、該当の話をしていた時の記憶がすっぽり抜けている。恐ろしいことよ。 翌日上司からみっちり搾られたが、有難い説教だったのでここに留めておく。

ライフイズワーク is

勤め先は「長期休暇」が本当に長い。お盆も正月も10日前後ある。 子どもの頃はその3倍以上あっても足りなかったのに、今は10日ですら持て余してしまって、立派な社会人だなと思った。 今年は1月9日が仕事始めだが、元日から在宅でなにかしらタスクをこなしている。 年末に納まらなかったわけではない。ただ東京に帰ってきてしまえば考えるのは仕事のことばかりだし、手を動かしていないと自己肯定感が下がる。働いていた方がよっぽど幸福度が高いのだ。 昨日は上司と食事をして、そこで出た話を今朝資

2023、ラブリーたちのおかげ

毎年、母か祖母から聞く気がするセリフ「もう恵方巻のチラシ出てたわよ」。 思えば、指先が冷たいと初めて思う頃にはすでに肉まんが出ていて、マフラーを巻く前からおでんが並び、クリスマスケーキやおせちの広告も随分早くからローンチされている。 季節の先頭を走っているのは間違いなく、コンビニだろう。 生活に最も密着したコンビニが1番のせっかちで、イルミネーションやデパートが追い越そうと必死になるから、世間はいつも忙しないのだ。 カレンダーだけがいつも地に足をつけて、私と並走してくれて

12月30日のクリスマス

12月28日に仕事を納め、昨日地元へ帰ってきた。 見慣れた、でも看板が変わっていたり新しいお店ができていたりする、風景に染み入る。あかい陽に照らされ撓んだ空、真ん中がもうすぐ海についてしまいそう。 各駅停車でも2時間で帰ってこられるくらいの距離だけど、やっぱり“地元”というのは特別だ。生まれてからずっと同じ町で育ててくれた両親に、感謝している。 うっかり東京の鍵をさしてしまい、ああ間違えたとさし直した。 「ただいまー」 「おかえり」 言うことも言われることもすっかり減っ

東京と、東京を好きな母と

乱立するビルのあいだからのぞく狭い空、冬の朝や、一駅歩くという行為。ふとした瞬間に「私、東京にいるんだ」と思う。越してきて2回目の冬なのに。 幼い頃、母が弟妹を実家に預けて私とふたりきりで出かけてくれる日が、年に一度だけあった。その日は決まって東京に行った。 「ここは浅草って言うの、母さん若い頃ここで神輿かついでたのよ」 「わぁずいぶん変わったわね、あのお店がなくなってる」 母に手を引かれ、パタパタ歩く。 その街その街の思い出話を聞いたけれど、細かいことは覚えられず、た

こんな時代でも、音楽の世界ではただしく季節がめぐっている

ひさしぶりにイヤフォンを買った、有線のやつ。 1つ前はもらいもののワイヤレスを使っていたのだけど、耳の穴が小さいのかたびたびこぼれるので、いつもヒヤヒヤしていた。 電車とホームの隙間とか、便器とか、ポロッと落ちないようにって。 ある時ついに片耳失くしてしまい、それきり外では聴かなくなった。 最初は手持ち無沙汰でも、代わりはいくらでも出てくる。 通勤中は、メールを返したり調べ物をしたりするようになった。もう1年くらい続けていた。 それが今さら改めてイヤフォンを買ったのは、

あなたのユートピアも、きっとまもられますように(文フリ感想)

ガールフレンドと遊んだ。最近行きたくて仕方なかった焼肉に付き合ってもらい、満足感はそのまま、銭湯で臭いだけ落としてきた。 帰りのコンビニで買った、137円のインスタントラーメンを啜りながら書いている。23歳最後の夜。 先週末はじめて「文学フリマ」に参加した。 終了後は泥のように眠ってしまい、週明けは本職があまりに忙しく、感想を出せていなかったので、軽く残そうと思う。 noteやインスタを見ていただければわかるとおり、私は文フリに並々ならぬ思いがあった。冷静になって振り返れ

元日に破局してから、今日までのこと(お知らせあります)

暑中お見舞い申し上げます 溶けちゃいそうなほど暑いまいにちですが、お元気ですか。 卒業したバイト先みたいに、気に留めつつも足が遠のいてしまっていたnote。久しぶりの更新です。 noteと離れてからの半年強、Instagramに拠点を移して書いていました。 ここに置いていたような2,000字超のものではなく、原稿用紙1枚分いくかいかないかくらいの短いエッセイですが、ほぼ毎日アップしています。今170投稿くらいかな。(Instagramはこちら) 久々にログインしたら、n

父さんとの、たわいない思い出

「これで足りてますよ」 一瞬理解できずフリーズしてしまってから、QUOカードの右上に「1000」と書かれていることに気づいた。 「ああ、すみません」 500円だと思ってましたと笑った、私なんて見えないみたいに、店員さんは無表情でレシートとカードを突き出した。 ニコッとくらいしてくれてもよくない?別にいいけど。 500円だと思い込んでいたQUOカードが1000円分だった。 仕事帰りは、こんなささやかなラッキーがしみる。ハッピーは頭を悩ませてくるのに対して、ラッキーは気兼ねな