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吸血鬼と猫 ― はじめて大人の女性と二人きり

UKロックおたくの女性の部屋に入る

アパートに入ると生活感を感じる。 奥の部屋に入ると、周りをキョロキョロ見ながら、ちょこんと床に座る。 そしてすすっと猫ちゃんが登場する。 猫はそのとき好きでなかったので、現れても特に感想は無しだった。
 
まさか、いきなり訪問したひとの女性の部屋に入るなんてことを考えてもいなかったから、ドギマギした。
 
彼女の眼は丸く、体は細く、髪の毛は黒くて長い。 この頃女性がどういう生き物かも理解していなかったためにただ宇宙人を見る様にしかみれなかった。
 
おとなしいとか、言葉がきついとか、比較対象もいないので「これが女性」と勝手に思っていた。
 
 
彼女は昔の音楽が詳しかった。 僕が好きな音楽の話をしても、
 
「あんなのただのOOの真似でしょ」
とか言ってけなされた。 結構口が悪かった。 (別の女性と比較はできないが、こういうことはわかった) 
 
音楽が好きだから、こういうのも読めるよ、とイギリスの音楽雑誌をぽんっと頬り投げて見せてくれた。
 
なんでも感動してしまう若い僕は
 
へー、 英語が読めるんだ!と感心して驚いた。
 
イギリスにも時々Liveを見に行くらしい。
 
(ライブを見に行くだけでイギリスまで行くのか...すごいな...)と信じられなかった。
 
そこで急に!
 
「先生!弟子にして下さい」
 
とはいってないけど、あまりにも上から目線で話をされ、いろいろとロックに詳しかったので、
 
「へい。 そうですね。 へい。 おっしゃるとおりで」という感じで話を聞いた。
 
猫がベランダにすすっと出かける、ベランダと言うか物干しがある狭い場所。
彼女が僕に背を向け、四つん這いになって、猫に部屋に入る様によびかける。
 
女性とこんな近距離でお目にかかったことがなかったため、恥ずかしくて僕は目をそらした。
 
猫はシュシュっと家にもどりその弾みで女性の上腕にひっかき傷をつける。
 
血がすぅっとにじみ出る。
 
「いた!」 といって彼女はその血を口を開けて吸い始める。
 
僕は「大丈夫ですか」もいわず、どうしたらいいかわからず、ただ痛そうーという顔をして見つめ、そのどうしようもない気持ちを埋めようと別の話題をふった。
 
彼女は自分の血を吸いながら、こちらをみて「ん?」というような表情をする。
 
80年代の音楽の話になり、David Bowieについてなにもわかってない僕は、
「Fameを聴いた時、なんだこの曲とか思いました」
と言ってしまう。
彼女は無言で訴える。
 
Fame.いまとても好きです...
 
そしてDavid Bowie会いたかったです。

David Bowie- Fame

https://youtu.be/Ypgq0qdgVZA?feature=shared

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