地球の反対側からの想い
興奮する思い
中学の頃から僕は曲を書いてはレコーディングしていた。
中学でバンドをやりたいと思っていた時、どこからか兄がエレキギターを持ってきた。僕は彼が何も触らないので、
こ、これは。
と思って。勝手に借りて弾き始めた。 持ってきたときは「自分のだから」と言われて、触らせてくれなかったような気がする。
でも僕はひたすら触り続け。 触り続け。
いつの間にかピックを買って自分流に弾いていた。
だからJanis(レアなレンタルCD屋)で借りたものから、ミュージシャンがどうやって弾いているかを見て、音楽の耳コピなどしていた。
これも殆ど自分の世界に浸ってやっていた。
UKロックについて語ってくれる人なんて学校にもいなかった。
Janisで借りたビデオはすごく画像が荒くて何が写っているのかよくわかんないものが多かった。 撮ったものは違法で、そのころ手ぶれ補正もないカムコーダーみたいなもので撮られていた。いやイギリスでは違法ではなかったのかもしれないけど。
思いっきり撮ってるし。
すべてちゃんとしたマイクで撮っていないので、音は割れている。 良質なものかどうかは店員さんが丁寧に評価を手書きで書いてあった。好きなバンドのビデオは全て借りて、全てコピーした。 今はそんな苦労があったものの、残念なことに YouTube で殆ど見れてしまう。
ここにまたロマンスが死んでしまっている。
全てが手に入るというものは。
全ての女性男性と恋人になれるほどつまらない世界なのだ。
その時の苦労が無駄とはやはり思えない。
何度も何度も足を運んで、いい音楽を発掘するために、大好きなバンドの演奏をかじりつく様になってみていたのだ。
女性ともろくに話したことがなかったから、青春なんてものは僕の人生に無かったと思ったけど、
音楽に没頭することが僕にとって青春であった。
CDショップやJanisは僕にとって聖域だった。 人はそこにいたけどいないかった。 家族の渦から抜け出して、学校の憂鬱な空気から逃れて、灰色の魂の抜けた人込みをかき分けて、
やっとお店のドア、聖域の門をくぐり抜けた時に
はああ
と息が出て、
本当の自分に会えた。
聴いたことも無い音楽が流れてきて、見たことも無いCDジャケットの色と形が僕を興奮させた。
震えるようにしてぼくは一枚一枚CDを手に取って眺めた。
僕は友達も恋人もいなくてもそれで満足だった。
なんともいえない摩訶不思議な魔法の音。
そんな音がたくさんたくさんイギリスから、反対側の地球から僕に語りかけてくれた。
涙がどんどんでてくるような、じぶんの孤独を抱きしめてくれるような、美しい音。
Curve/Left of mother
https://youtu.be/eDPT_md4bzo?feature=shared
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写真 Curve
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